2019年5月1日、日本の元号は平成から令和に改められた。
数十年に一度の改元で、日本としては大きな出来事となり、システム対応もまたそれに伴い発生した。
令和への改元は事前に日にち・元号を予告されていたこともあり(元号は4月1日に発表、菅官房長官が「令和」と掲げている画が印象に残る)、システム対応もある程度の余裕を持って実施することが出来た。
しかし前回の改元は1989年だったため、当時のナレッジがあったという人は少なく、あったとしても役に立ったかは微妙といったところではないだろうか。
次回がいつになるかは不明だが、今回実施した内容を書き記しておけば、何十年後かに古文書として発掘してくれるSEがいる……かもしれない。(そんな未来に役に立つかと言えば微妙かも?笑)
というわけで元号変更の際にSAPで対応すべき事項を解説する。
SAPにおける元号変更対応
テーブル更新(LDERA)
LDERA(ローカル日付:元号)というテーブルがある。
小さなテーブルで、項目は言語キー、開始日付、元号、略称、のみ。
元号はここに格納されている。
標準で明治(開始日付:18680908)、大正(開始日付:19120730)、昭和(開始日付:19261225)、平成(19890108)が入っているようだ。
テーブルレコードに令和(開始日付:20190501)を追加することとなる。
Note適用
今回の対応では、改元に関するNoteが発行され、各種案内が記載された。
・SAP Note:2600012 – SAP システムでの新しい元号の採用に関する情報
主には、LDERAテーブル更新とカーネルの更新が指示された。
カーネルの更新は、下記のような組み文字への対応が目的だったようだ。
・㍽
・㍼
・㍻
・㋿
「うちは組み文字を使ってないからカーネルの更新は不要なのでは?」という意見も多かったようで、よくある質問欄にも記載され、「それでも日本の日付書式が使われている可能性があるなら、カーネル更新は必要です」という回答だった。
いずれも使っていない確信があるので「カーネル更新不要」と判断した現場もあるようだ。(それで良かったかどうかは不明……とりあえず何か問題があったという話は聞かない)
SAP FIにおける対応
FIモジュールを導入しているところは、以下二つの対応をしているというところが多かったようだ。
・入出金明細(全銀協フォーマット)
・償却資産税申告書
他にも色々なケースがあったと聞くが、だいたいは出力帳票などに「平成」とハードコーディングをしてしまっていたので改修した、というものだった。
入出金明細(全銀協フォーマット)
入出金明細というのは、銀行口座の入出金実績の明細のことで、銀行から電子データとして配信されているのを受け取ることができる。
入出金明細のデータレイアウトとして、日本国内の銀行の共通フォーマットである「全銀協フォーマット」というものがある。
このなかで和暦が使われており、システム対応が必要となった。
全銀協フォーマット上の和暦
全銀協フォーマットでは、2桁項目(和暦)によって年を表現している。
平成31年ならば、「31」の2桁で表される。
2019年5月1日における入出金明細
5月1日からは令和元年なのだが、前日は平成だ。
5月1日に受信する入出金明細(口座の入出金履歴)には前日のデータも含まれるわけなので、和暦の項目に「31」「01」が混在することになる。
これをシステムが柔軟に読み替えてくれるなら良いのだが……次にSAP側の仕様を見てみよう。
SAPの電子銀行報告書インポート機能
入出金明細はSAPにインポートして会計伝票伝票計上することができる。(電子銀行報告書)
全銀協フォーマットの入出金明細をインポートするプログラムは「RFEBJP00」だ。
プログラムを開いて頂けると分かるが、画面上に「和暦」という一桁項目がある。
これは昭和ならS、平成ならHを入力する。
つまりここで入出金明細の2桁の和暦がどの元号なのかを判断するというわけだ。
混在すると困る
「平成31年」「令和01年」が混在するファイルを受信してしまうと、和暦で「H」を指定したならば、プログラムは「平成31年」を2019年に変換するし、「令和01年」は「平成01年」つまり1989年と読んでしまう。
読み取った日付は転記日付として使われるが、そんな昔の日付で転記されては困る(実際は会計期間外のためエラーとなるが)。
逆もしかりで、画面でRを指定すれば「令和31年」となってしまう。
どう対応したか
これは各現場で対応方針が分かれたようだ。(顧客の入出金明細に対するセキュリティ要件の度合で、やるべきことが変わる)
基本的には、セキュリティ的な担保をしたいのであればインポート時の追加プログラムを組んで、特定年の読み替えを入れるというのが妥当な対応だと思う。
償却資産税申告書
償却資産というのは固定資産のうち、土地家屋以外の資産(機械や工具、備品など)を指す。
償却資産税申告書というのは、そうした固定資産税のうち課税対象となるものを役所に報告・提出するためのものだ。
固定資産モジュールを使っているところであれば、システムから自動出力できるようにしていると思われる。
申告書中に、報告年度や取得年度の記載があり、和暦での表記となっている。
LDERAから取得する仕様になっていなければ、該当箇所を改修する必要があった。