【SAP MM】自動勘定設定(Tr:OBYC)の仕組みをわかりやすく解説

SAP MM

今回は自動勘定設定(Tr:OBYC)の概要について解説する。

自動勘定設定(Tr:OBYC)とは、ロジスティクス系のトランザクションのバックグラウンドで会計伝票を転記する際、計上すべき勘定を自動的に決定するためのカスタマイズだ。

例えば、SAP MM(購買)の基本プロセスとして、発注 ⇒入庫 ⇒請求書照合という流れがある。

MM概要については以下参照。

【SAP MM基礎】購買(MM)の機能概要(SAPコンサルタントによる入門解説)
SAP ERPのMMモジュール(購買機能)にかかわる基本的な知識を解説。 企業の購買プロセスにかかわる管理機能全般を備えるのがSAPのMMモジュール。 具体的には、仕入先企業に対する発注を処理し、物品が届いたら入庫および債務を計上するといった処理がSAP MMではカバーされている。

入庫をすると在庫が増えるので、「資産を増やす」という経理上の処理が必要となる。
同じく、請求書照合を行うと、債務(購入した相手先に支払いをする義務)を認識するので、「負債を増やす」という会計処理が必要となる。

SAPでは、入庫や請求書照合を行うと同時に、バックグラウンドで「会計伝票」を登録することでそうした処理を行っている。

この会計伝票は勝手に起票されるわけではなく、自動仕訳(Tr:OBYC)にてどのような条件でどのような勘定コードを計上するのか、といった指定を予め行っておく必要がある

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自動勘定設定(Tr:OBYC)の解説(自動仕訳)

はじめに:自動仕訳の必要性

SAP上では製品・中間品・原材料・商品といった様々な品目が管理されており、それぞれが日々入庫・出庫されている。
冒頭でも触れたとおり、こうした棚卸資産は、増減のたびに帳簿に記帳し、会計上の管理を行う必要があり、入出庫伝票が登録されるバックグラウンドでは会計伝票も同時に登録されている。

このとき、たとえば入庫する資産が原材料なのか商品なのかで、勘定コードを分ける必要がある

これを実現するのが自動仕訳(Tr:OBYC)の設定であり、プラントや品目、移動タイプなどから導かれる条件キーにより、計上する勘定を分岐させる。

自動仕訳のパラメータ

ところで、Tr:MIGOにて入庫処理を実行した際、このようなエラーメッセージを目にしたことはないだろうか。

エントリ AXXX BSX 000X ___ 3000 に対して勘定設定ができません」(Msg番号:M8 147)

これは会計伝票を起票する際に、勘定コードが決定できなかったために起きるエラーで、自動仕訳(Tr:OBYC)の設定不足ということとなる。(あるいは意図的にその仕訳を起こさない設定としている)

メッセージ中にいくつかのパラメータ(AXXX BSX 000X ___ 3000)が並んでいるが、これらは左から【勘定コード表】【内部処理キー】【評価グループ】【勘定修正キー】【評価クラス】を表している。

これらのパラメータこそが自動仕訳(Tr:OBYC)を構成するパラメータであり、これらを条件として勘定コードを決定する設定を行う。

Tr:OBYCに入るとまず多数の【内部処理キー】が並ぶ画面が出てくる。
内部処理キーとは、転記イベントごとに割り当てられているパラメータであり、「こういう転記処理をしたときはこのキーが働く」という配置が決まっている。

たとえばオーソドックスな入庫を行った場合、内部処理キーBSX(在庫転記)やGBB(在庫転記用相手勘定コード)が働き、この内部処理キーに対して紐づけている勘定コードが転記勘定として採用され、会計伝票の勘定として採用されるという仕組みだ。

自動仕訳を設定する際に、内部処理キーごとに「ルール」として以下4つのパラメータのフラグを設定する。

【借方/貸方】
【評価グループ】
【勘定修正キー】
【評価クラス】

これらが各【内部処理キー】の中で勘定を決定する際の条件キーとなる。
条件キーとして使用したいパラメータは、フラグをオンにする。
逆に、これらを使用しない場合(=どんなときでも一律の勘定を採用する場合)は、一つもフラグを入れないということも出来る。

上記で触れた各パラメータの関係を図示すると、下図のような形となる。
勘定を決定するための条件テーブルを構成すると考えてもらえればいい。

各パラメータの解説

【勘定コード表】
勘定コード表は一つの勘定体系をあらわし、全ての勘定コードは勘定コード表の下に登録する。
一つの会社コードは、一つの勘定コード表を持つ。言い換えると、会社単位で一つの勘定体系に基づいて会計処理を行う。
勘定体系を管理する最上位のパラメータという捉え方で良い。

【内部処理キー】
前段でも触れたとおり、転記イベントごとに割り当てられているパラメータ。
記事後半に例示するので、具体的にはそちらを見てもらった方が分かりやすい。

【借方/貸方】
仕訳の貸借のこと。
借方側に計上される場合と貸方側に計上される場合で、勘定コードを分けておきたい場合は、このパラメータのフラグをオンにして、条件テーブルの中のキーに加えておく。

【評価グループ】
評価グループとは、プラントに紐づくパラメータ。プラントごとに勘定を分けたい場合には、条件キーとして採用する。

【勘定修正キー】
一般修正キーとも呼ばれる。移動タイプまたは勘定設定カテゴリに対して勘定修正キーを設定し、勘定コードの計上パターンを分岐させることが出来る。

【評価クラス】
評価クラスは、品目マスタの「会計1ビュー」で指定するパラメータ。会計上の評価を表す。
主な評価クラスは以下の通り。

評価クラスの例
・3000 原材料
・3100 商品
・3200 サービス品
・7900 半製品
・7920 製品

自動仕訳の例

例1 棚卸増による入庫

プラント1000(評価グループ1000)にて原材料品目(評価クラス:3000)を、移動タイプ701(棚卸増)で入庫するケースを考える。
この時、会計上の要件として以下のような仕訳を起こしたい。

原材料在庫(A00000001) / 原材料棚卸損益(A10000001)

※カッコ内は勘定コード
※原材料が増え、相手勘定として棚卸益を計上する仕訳

入庫の際には内部処理キーBSX(在庫転記)から品目の在庫転記時の勘定コードが読み込まれる。
したがって、BSXには評価グループ:1000、評価クラス:3000の組み合わせで原材料在庫勘定:A00000001を登録しておく。

一方、在庫転記の相手勘定も決定する必要がある。
移動タイプ701の標準設定(Tr:OMJJ)では、特殊在庫によらない通常の入庫は、内部処理キー(TEKey):GBB(在庫転記用相手勘定コード)、勘定修正キー:INVが設定されている。
このことから在庫転記の相手勘定は内部処理キーGBBに紐づく勘定が採用される。
棚卸増には、収益/費用勘定として「原材料棚卸損益」等の勘定を設定するのが適当となる。
したがって、GBBには評価グループ:1000、勘定修正キー:INV、評価クラス:3000の組み合わせで原材料棚卸損益:A10000001を登録しておく。

こうすることで借方側に原材料の資産勘定、貸方側に棚卸増による収益勘定が読み込まれる。

例2 サービス品の購入

プラント1000(評価グループ1000)にてサービス品目(評価クラス:3200)を、購買発注にて購入し、発注明細の勘定設定カテゴリをK(原価センタ)として、入庫時に原価センタに対するサービス費用計上を行うケースを考える。

この時、会計上の要件として以下のような仕訳を起こしたい。

サービス費用(D10000001) / 入庫請求仮勘定(X00000001)

※カッコ内は勘定コード

勘定設定カテゴリKの勘定修正キーに「VBR」が設定されていたとする。
GBBには評価グループ:1000、勘定修正キー:VBR、評価クラス:3200の組み合わせでサービス費用:D10000001が設定されていたとする。
購買発注上の勘定設定タブにて、自動仕訳(Tr:OBYC)で設定してある勘定(サービス費用:D10000001)が読み込まれ、それが借方勘定として採用される。

一方、貸方勘定については、購買発注の入庫時は内部処理キーWRX(入庫請求仮勘定)により決定する。自動仕訳におけるWRXには入庫請求仮勘定:X00000001を設定しておく。(その他キー無しとする)

この状態で入庫を行うと、上記仕訳を計上する会計伝票が登録される。
さらに、後続の請求書照合(Tr:MIRO)では、借方側に入庫請求仮勘定を、貸方側に仕入先勘定を計上する会計伝票が登録される。

自動仕訳のテーブル

テーブルT030(標準勘定テーブル)に設定値が格納されているので、一括でエクセルに落としたい場合にはここから取得できる。

よく使用される内部処理キー

内部処理キーは多数存在するので、プロジェクトによっては中身を設定せず、使っていないものも多い。
ここでは、既出のBSX、GBB、WRXを含め、使用頻度が高いと思われる内部処理キーをまとめる。

・在庫転記(BSX)
評価グループ(プラント)と評価クラス(品目)の組み合わせで、品目ごとの入出庫時に仕訳される勘定を決定する。
商品なら商品、製品なら製品、原材料なら原材料の勘定といった具合。
・在庫転記用相手勘定(GBB)
在庫品を原価センタ出庫した場合や、棚卸増減の場合など費用勘定による処理をした場合、移動タイプのカスタマイズ(Tr:OMJJ)で設定した勘定修正キーの組み合わせで相手勘定を決定するための内部処理キー。あるいは、購買発注の勘定設定カテゴリを設定して入庫の際に費用勘定を計上する場合もこの内部処理キーが考慮され、勘定設定カテゴリのカスタマイズ(Tr:OME9)の勘定修正キーによって相手勘定を決定する。
・入庫/請求仮勘定(WRX)
購買発注入庫および請求書照合の際に仕訳する入庫請求仮勘定の勘定コードを指定する。
・再評価による損益(UMB)
期中に在庫再評価(標準原価変更)を行った場合、在庫勘定の残高が変動する。
その際に評価差損益を計上する。評価グループ、評価クラスごとに異なる勘定を設定しておく。
・購入価格差異(PRD)
標準原価と購入価格の差異を計上するための勘定を設定しておく。
・在庫転送による差損益(AUM)
プラント毎に品目の標準原価が異なるとき、プラント間の在庫転送を行うと、評価差損益が発生する。

(参考)会計伝票タイプはどのように決まるか?

自動仕訳における勘定コード決定は上記の通り解説したが、では会計伝票タイプはどのように決まるだろうか?
これは在庫移動あるいは請求書照合の種別ごとに伝票タイプを設定できる。

・Tr:OMBA 伝票タイプ:在庫管理/実地棚卸
入庫/出庫別に、トランザクション毎の伝票タイプを指定することが出来るほか、自動入出庫(生産に関わる確認処理(Tr:CO15やCO11N)など)に伴う伝票タイプ、棚卸にともなう伝票タイプも指定できる。

・Tr:OMW9 請求書/評価における会計伝票タイプの割当
請求書照合(Tr:MIRO)や品目評価変更(Tr:MR21)といったトランザクション毎に、会計伝票タイプを指定できる。

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