【SAP MM基礎】購買(MM)の機能概要(SAPコンサルタントによる入門解説)

SAP MM

SAP MM基礎の解説 -はじめに-

SAP ERPのMMモジュール(購買機能)にかかわる基本的な知識を解説します。

【こんな方に読んで頂きたい】
SAPに関する基礎知識がなく、日本語での情報も少ないためとっかかりに困っている方。
・SIerの新入社員でSAP案件にアサインされた
・SAPシステムのユーザヘルプデスク業務に参画した
・担当モジュールと別モジュールの知識が欲しい

SAP全体の概要についてはこちらを参照

【SAP基礎知識】SAPとは何か?基礎と概要の解説(SAPコンサルタントによる入門解説)
SAPについて知りたいけどよくわからないという方へ。 ERPとは経営資源計画(Enterprise Resource Plannning)の略です。 販売・生産・購買・会計・人事といった企業活動全般を支援管理し、経営資源(ヒト・モノ・カネ)を効率的に計画し運用するためのソフトです。

SAP ERPはERPパッケージソフトです。ERPとは経営資源計画(Enterprise Resource Planning)のことで、販売・生産・購買・会計・人事といった企業活動を支援管理するためのソフトがSAPです。
SAPを勉強するのであれば、システムの理解も大事ですが、同時にビジネスや経営、会計に関する理解をすることも非常に大事です。それらを両立できる場合、SAPコンサルタントとして、SAP導入の際に上流工程を担当できます。

この記事を読むことにより、少なくとも「SAP MMについて全然わからない、五里霧中の状態」からは脱することが出来ます。主観ですが、3か月分程度の業務経験を通して学ぶ手間はすっ飛ばせると思います。

【解説対象】
・SAP R/3
・SAP ERP(ECC6.0)
・S/4 HANA
会社業務に詳しくなるなら中小企業診断士がおススメ!
豊富な通信講座が揃っている『スタディング』は、時間とお金を節約したい社会人に最適。
難関国家資格の中小企業診断士の講座も、見やすく分かりやすいので受講者が急増中。
会計販売生産購買法務といったあらゆる企業活動を網羅する知識が身に付く。

【ワンランク上の社会人】になる勉強を始める(PR)

SAP MM(購買)モジュールとは

企業の購買プロセスにかかわる管理機能全般を備えるのがSAPのMMモジュール。
具体的には、仕入先企業に対する発注を処理し、物品が届いたら入庫および債務を計上するといった処理がSAP MMではカバーされている。

SAPの理解においては、技術的側面よりもまずビジネスシナリオを理解することが重要となる。SAP MMの基本的なビジネスシナリオについて紹介する。

SAP MMの基本的なビジネスシナリオ

企業における各部門は、業務を遂行する上で必要な財を購入する必要がある。
総務部門であれば、ステーショナリー(印刷用紙であったり、ボールペンであったり、クリップであったり)といったものは業務上必須の財となるので、定期的に購入を行う必要がある。
経営企画部門であれば、経営コンサルタントや弁護士に顧問料を支払う必要があるが、これは物理的な財ではなくサービスを購入している。
生産部門であれば、生産を行うための製造機械の購入や、生産に供する原材料の仕入れが必要となる。

各部門に購買行為をほぼ委任している会社もあるが、規模の大きい会社では、購買行為をとりまとめ管理するための専門部署(購買調達部門)が存在し、適正な調達価格を維持したり、調達先・仕入先・外注先との関係性維持、適正な支払いの管理などといった業務を遂行している。

企業における各部門は、まず部内で必要な財・サービスを購入するにあたり、購買部門に対する依頼を出す。(購買依頼
購買部門は、依頼が適正なものと認められれば、依頼に基づき発注伝票を作成する。(購買発注
発注伝票は、EDIを通し電子データとして送付されたり、あるいは紙印刷により郵送するあるいはFAXするなどして、各仕入先に対して送付され、発注の事実を伝える。
仕入先は、発注元企業に対し必要な財を納品する。企業はその納品物を確認し、検収することで自社の財とする。(入庫処理
納品と同時かあるいは後日、仕入れ先は発注元企業に対して請求書を送付する。仕入先からの請求書と、企業が出した発注の内容が一致しているか照合する。照合の結果、内容に不一致が無いようであれば、仕入れ先に対して債務を計上する。(請求書照合

SAP MM機能概要

MMに関連する組織設定

購買組織

購買組織は、企業内の購買の責任部門をあらわす。
購買部門が一つしかなく、あらゆる財を単一のプロセスで購入している場合は、購買組織は一つ設定しておくだけで構わない。
一方、例えば購買部門の中で二つの課が分かれており、それぞれが購入する品目が異なる(直接材と間接材で購入組織が異なる)という場合、お互いの調達行為を切り分けたり、干渉しないように区別したり、互いの発注を参照しないようにする目的で、購買組織を二つあるいは複数設定する場合がある。

購買グループ

購買組織の下にさらに細分化したグループを作ることが出来るのが購買グループ。
購買の担当者レベルであったり、複数担当者のグループを表す単位として作成する。

プラント

企業の拠点をあらわす。その名の通り、生産工場ごとにプラントコードを割り振る場合がある。原価の管理単位でもあり、品目の標準原価はプラントごとに決定される。
財を購入する場合、それの納入先がどこであるかを指定する必要があるが、発注伝票上でプラント指定することで、そのプラントの住所に財が納入されることとなる。

保管場所

主にはプラント内の倉庫や資材の置き場を表す。
購入したものや生産したものをどこに保管しておくかという、在庫の管理場所を表すパラメータ。

MMに関連するマスタ

仕入先マスタ(Tr:MK01,Tr:XK01)

まず仕入先がなければ購入することも出来ないので、MMの大前提となるのが仕入先マスタとなる。
仕入先の名称、住所、仕入先担当者名、振込先銀行、インコタームズなどといった様々な情報を保持する。
国際アドレスバージョンを用いて、外国名称・住所を登録することも可能。
さらには「ワンタイム仕入先」といって、一度きりの取引と思われる取引先で、仕入先マスタを作成するまでもない取引先は、ワンタイム仕入先コード一つで処理することがある。

Tr:MK01:仕入先マスタ登録
Tr:MK02:仕入先マスタ変更
Tr:MK03:仕入先マスタ照会

仕入先マスタについては以下で詳しく解説。

【SAP知識】仕入先マスタについて解説
SAPにおける仕入先マスタとは、資材やサービス等の調達先として取引をしている相手(仕入先や外注先)の属性情報を記録しておくためのマスタであり、仕入先の名称や住所をはじめ、取引条件や支払いに関する取り決め、納入日程にかかわるパラメータなど様々な情報を保持する。

品目マスタ(Tr:MM01)

品目の属性情報をあらかじめシステム上に登録しておくのが品目マスタ。マスタ登録をしておくことで、発注時、品目の属性や名称をいちいち入力せずとも、品目コードを指定するだけで事足りる。
品目の名称や基本数量単位、品目グループ、販売・購買・生産(MRP)に関わる情報、需要予測、単位換算(追加データ)、会計関連データ、標準原価などの情報を保持する。
ただし、MMにはテキスト発注という機能もあり、品目を指定しなくとも発注できる設定もある。

Tr:MM01:品目マスタ登録
Tr:MM02:品目マスタ変更
Tr:MM03:品目マスタ参照

購買情報マスタ(Tr:ME11)

仕入先・品目ごとに、数量当たりの単価情報などを保持するマスタ。

供給元一覧(Tr:ME01)

品目が供給されるべき元(仕入先あるいはプラント)を定義するマスタ。

MMのトランザクションデータ

購買依頼(Tr:ME51N)

企業内の各部門から購買部門へ購入依頼を行う際の依頼伝票(Purchase Request)。
項目など見た目は発注伝票と類似しているが、発注よりも簡素化されているイメージ。

購買発注(Tr:ME21N)

購買依頼を変換するか、発注登録(Tr:ME21N)により起票する発注伝票(Purchase Order)。
発注の入力は、まず画面最上部にある発注タイプと仕入先コードを指定するところから始まる。
画面構成としては上部がヘッダ、中部が明細、下部が詳細タブ(明細のさらに詳細情報)というレイアウトとなっている。
ここではMMの代表的な項目やタブを説明する。

画面上部にある項目(ヘッダ項目)
発注タイプ

発注タイプは、購買プロセスごとに定義する。
購買プロセスとは、例えば、単価が決まっており継続的に発注する固定単価購買、スポットでワンタイムな臨時購買、リースによって調達するリース購買、物理的な財ではなくサービスを購入するサービス購買など、購買する対象などによって様々に分岐する、調達の業務上の手順のこと。
たとえば単価が決まっている購買だったら承認段階は多少省いて良いかもしれない。臨時の購買であれば、おかしなものが購入されないように承認段階を多くするかもしれない。リース購買であれば、契約した期間ごとに支払いが発生するので、MMの支払い計画機能を利用して、自動で債務が毎月上がるようにするのが第一手段となる。このように、対象とする購入物によって、購入プロセスは異なってくる。
発注タイプを予めわけて定義しておくことで、伝票の形態をプロセスに最適な形で制御することが出来る
また、あとから伝票を見た時に、それが何の購買プロセスに属するか、発注タイプを見ればすぐに判別できるという、判別機能も持ち合わせる。
ちなみに、購買依頼を変換して作成する場合は、購買依頼タイプから購買発注タイプへの変換マッピングをあらかじめカスタマイズしておく。

仕入先

財をどの取引先から購入するかを決定する。

条件

支払条件が表示される。
支払条件は支払いの形態(例えば、購入後の何日後に支払いを行うか、現金払いか手形かなど)を制御するパラメータ。

住所

仕入先マスタから自動的に引っ張ってきて表示される。
ただしワンタイム仕入先用の仕入先コードを選んだ場合、住所は都度入力となる。

承認方針

発注伝票に承認フローの設定をしてある場合、このタブに承認状況(どこまで承認が進んでいるか。上長承認、部門長承認など)が表示される。

カスタマデータ

追加項目を設定できるタブ。
標準に無い項目で、導入会社の業務にどうしても必要な項目がある場合、ここを拡張すれば良い。

画面中部にある項目(明細項目)
明細カテゴリ

発注明細の種類を決定する項目。
空白なら標準明細。Tを選ぶとテキスト発注(品目コードを指定しない発注)、Lを選ぶと外注明細になり、入力や画面制御が異なる。

勘定設定カテゴリ

発注の勘定設定、つまり会計処理へのつなぎかたを決定することが出来る。

発注した品物が納品された場合、入庫処理を行うが、入庫処理を行うということは、発注した企業の財産が増えるということなので、「企業の財産が増えた」という会計処理を行う必要がある。
この際、例えば原材料を買ったのであれば、原料在庫が増えることになる。在庫の増加は棚卸資産の増加になるので、貸借対照表の資産の部が増加する。(よくわからない場合、こちらを参照【職場でドヤれる会計知識】貸借対照表と経営指標

通常は購入したら資産が増えるのだが、購入しても資産が増えないパターンもある。
たとえばサービスの購入の場合、会社の資産は増えず、資産の増加ではなく費用を計上する必要がある。
あるいは在庫管理をしないもの(一山いくらでざっくりと買い、残数の管理をしないもの)も費用処理をする。こうした時に勘定設定カテゴリを使う。

発注明細の項目「勘定設定カテゴリ」を入力すると、発注画面の下部に「勘定設定」タブが出現する。
ここでは、入庫をする際の勘定に何を使うか、どのようなコストオブジェクト(原価センタ、内部指図、WBSなど)を指定するかを決定できる。
これを指定しておくことで、入庫を行った際の会計処理(仕分けする勘定および、費用紐づけ先のコストオブジェクト)を制御することが出来る。
勘定設定カテゴリに設定した勘定は、同様に請求書照合時の仕訳にも反映させることが出来る。

プラント、保管場所

納品物をどこに納品するかを指定する。

品目

何を購入するかを指定する。

数量

どれだけ購入するかを指定する。

数量単位

品目ごとに測る単位は異なる。基本数量単位は品目マスタで決定される。
液体であれば「リッター」や「キログラム」、指差し数えられるものなら「個」「包」「パック」などの単位となる。換算設定を行っておけば、基本単位とは別の単位を入力することも出来る。(1KG⇔5個など)

正味価格

品目の単価。購買情報マスタを設定しておけば、マスタから単価を設定してくれる。

画面下部にある項目(明細詳細)
納入日程表タブ

例えば発注明細の数量が10個あったとして、日を分けて5個ずつ納入される可能性もある。
そのような場合は「納入日程」を用いて管理する。

納入管理タブ

入庫非評価フラグをオンにしておくことで、入庫処理時に会計仕訳を起こさなくすることができる。
納入完了区分フラグは、入庫数量が明細数量を上回ると完了されるが、未達でも手動でオンにすることが出来る。

請求書タブ

税コードを指定する項目や、支払計画がある場合は支払計画ボタンが表示される。
「ERS」というフラグ項目もある。ERSとは、請求書照合をバッチ処理にて自動的に実行する機能である。のちに詳述する。

勘定設定タブ

詳しくは画面中部の勘定設定カテゴリを参照されたし。
原価センタなどのコストオブジェクト、勘定を複数行指定でき、さらに数量指定、比率指定もできる。指定された数量や比率に応じて、発注明細の金額が分割され、指定されたコストオブジェクトや勘定に按分計上される。

購買発注履歴タブ

当該の発注に紐づいて入力されている入庫伝票や請求書照合を一覧で見れるタブ。
「いま発注がどこまで処理されているか分からない」場合はまずここを参照。
ダブルクリックで入庫伝票や請求書照合伝票に飛べるし、一度入庫したけど取り消したと言った場合の履歴なども、このタブでは一目瞭然となる。

テキスト

明細ごとの自由記述欄(テキスト)を記入できる。

納入先住所

納品物を納入する先の住所が表示される。

入庫(Tr:MIGO)

発注した品目が仕入先から届いた場合、入庫処理(Goods Recieve)を行う。
トランザクションMIGOでは、あらゆる在庫移動の入力を行うことが出来る。
今回はMM機能の説明なので、MIGOでの発注入庫について解説。
画面上部から、「入庫」「購買発注入庫」を選択すると、購買発注の番号を入力する欄が表れる。
発注番号を入力すると、画面中程の明細欄に、発注した品目・数量が自動的に表示される。

移動タイプという概念

SAPでは、品目の移動の種類を「移動タイプ」というパラメータで表現する。
移動タイプ101が購買発注入庫を表す。発注入庫取消の移動タイプは102。
保管場所間で在庫を転送するときは310だし、生産した結果として製品が出来あがり倉庫に入れる場合は131を使う。
この移動タイプによって、在庫がどのようにして入ってきたか、あるいは払い出されたかがわかる

入庫伝票について

品目、数量、入庫する場所、購買発注入庫(移動タイプ101)を指定して、入庫伝票を転記する。
すると、指定した入庫場所に、指定した品目が、指定した数量分だけ増える。

購買発注伝票に紐づいた入庫が行われる。
入庫により、購買発注伝票側には、以下のような変化が起こる。
・発注伝票明細の「購買発注履歴」に入庫伝票番号が表れる。
・発注伝票明細の「納入完了フラグ」がオンになる。(発注量を上回った場合)

余談だが、入庫伝票には画面最下部に「OKフラグ」という項目があり、このフラグを付けた場合のみ入庫ができる。入庫を本当に行っていいか確認する用途の項目だが、下の方にあって見えづらいので、SAP保守現場ではよく「入庫ができない」という問い合わせが来たりする。

入庫の会計仕訳(入庫請求仮勘定とは)

入庫により在庫が増える際は、同時に会計処理も実行され会計伝票(仕訳)が起票される。購買発注入庫の場合、下記の通り。

在庫    / 入庫請求仮勘定

在庫が増えず費用処理をする場合は下記の通り。

費用    / 入庫請求仮勘定

入庫請求仮勘定は経過勘定といって、一時的に計上するもののすぐに消し込まれる勘定のこと。
あくまで一時的な勘定であり、決算時に残っていてはいけない。
「一時的な計上」の意味については、後述の請求書照合の仕訳を参照されたし。

入庫処理を行う場合でも、品目が非評価在庫として設定されている場合は、仕訳は起きない。非評価在庫とは、在庫残高は管理するが、会計上は評価されない(金額がつかない)在庫のこと。

請求書照合(Tr:MIRO)

仕入先からの請求書と、企業が出した発注の内容が一致しているか照合する。照合の結果、内容に不一致が無いようであれば、仕入れ先に対して債務を計上する。これをSAP上では請求書照合(Invoice Verification)と呼ぶ。
発注伝票番号を指定することで、どの発注に対する照合を行うかを指定する。
仕入先から届いた請求書の金額を画面上に入力する。発注額と一致していれば、ステータスがグリーンになり、請求書照合が完了する。(差異の許容幅のカスタマイズもあり、常に完全一致が必須というわけではない)

ERS(Tr:MRRL)

入庫基準自動請求書照合といって、請求書照合を自動で行うことが出来る。
入庫処理が行われた場合、その事実(納品された)を以て債務も自動的に計上するというもの。
発注額と請求額が一致することが前提となる。製造業などで非常に多種のパーツを購入する場合などは、こうした自動処理が有効となる。

支払計画決済(Tr:MRIS)

これも債務計上機能の一種で、支払計画の機能を使用し、定期払いを一括処理できる。リースなど定期的な支払いを行うものについて有効な自動処理。

クレジットメモ

クレメモとよく呼ばれるもので、請求書照合の金額調整を行う際に使用する。
請求書照合を行うと、債務が計上される。債務が計上されると、後続処理として、会計(FI)モジュールで債務の支払いが実行され、債務は消し込まれる。
この状態となった後では単純な取消(Tr:MR8M)が出来なくなる。こういった場合にクレメモ処理を行う。

請求書照合の会計仕訳(入庫請求仮勘定の消込)

さきほど入庫の際には、入庫請求仮勘定という一時的な経過勘定が計上されることを説明した。
請求書照合においては一般的に下記が仕訳される。

入庫請求仮勘定 / 債務

入庫の際の仕訳と並べてみると、入庫請求仮勘定の役割が分かりやすい。

在庫    / 入庫請求仮勘定
入庫請求仮勘定 / 債務

このように、貸借両方に入庫請求仮勘定が計上されていることがわかる。
つまり、入庫と請求書照合でワンセットの仕訳となっている。
経過勘定を消し込むと、結局下記のようにまとまる。

在庫     / 債務

MMの様々な機能

承認について(ワークフロー)

購買依頼、購買発注や請求書照合は、ワークフロー機能を設定することが出来る。
各伝票を保存後、ワークフローをスタートさせ、承認者のSAPユーザIDを指定する。
承認者には承認の依頼が来た旨が、SAPビジネスワークプレイス(メールボックスみたいなもの。別途詳述)にて通知される。
承認者はビジネスワークプレイスの受信ボックスを開き、依頼をダブルクリックして承認画面に遷移する。そこから承認を押すことで、伝票が承認される。あるいは、多段階承認の場合は次の承認者を指定し、ワークフロー通知がその承認者に飛ぶ。

棚卸入力

企業は在庫把握のために定期的に棚卸を行う。
帳簿上の在庫残高とは、盗難、紛失、記帳漏れなどで少しずつずれていくため、正確な残高把握のために欠かせない活動となる。

SAP MMでも棚卸の機能がカバーされている。

・棚卸伝票登録(Tr:MI01)
棚卸伝票を登録する。
・棚卸検数入力(Tr:MI04)
実地棚卸を実行し数量をカウントした結果を入力する。(検数入力)
・棚卸差異転記(Tr:MI07)
検数入力の結果を確定させ、差異がある場合は在庫数量を増減させる。棚増、棚減と言われる。ここで実際にシステム上で在庫移動が転記される。
・実地棚卸一覧(Tr:MI24)
棚卸伝票の一覧とステータスを確認できる。

余談ながら、棚卸は実数を入力するものなので、物理的にあり得ない「マイナス数量」は入力できない。
ただし、SAP上の在庫数量自体はマイナス値を取りうる。
納品と出荷の時間差のため、一時的に理論値としてマイナス在庫を取るケースがある。
このような業務上のケースが存在しうる場合は、プラント・保管場所のカスタマイズ(Tr:OMJ1)および品目マスタ(Tr:MM01)にてマイナス在庫許可を設定しておく必要がある。

MRP(Tr:MD01)

MRPは所要に対して不足している在庫数量を計算し、必要な調達を行うための機能で、Material Resource Planningの略。
例えば得意先からある製品Aを3個欲しいという引き合いがあったとする。倉庫に在庫がなければ新規生産する必要がある。MRPはここで生産のための計画手配を自動で生成し、SAPのユーザは計画手配に基づいて製造の判断をすることができる。
新規で製品を生産するにあたって、十分な原材料がなければ生産が出来ない。現在の原材料在庫が足りているか、製品のBOM(部品構成表)から必要な数量を計算して、不足分については調達所要を立て、MM機能を通じて購入する。このとき、購買依頼を自動でMRPにより立てることが出来る。単純な数量不足のほか、発注点や安全在庫を下回ったら購買依頼などの調達伝票を自動作成する、なども可能である。
このように販売・生産・購買をつなげるためにMRPは欠かせない機能であり、ロジスティクスの要と言える。

ちなみに、いくつかの実行モードがあり、NETCH(全期間の正味変更)では前回のMRP実行からMRPに関連する変更(新規所要が発生したなど)があった場合にその品目だけを対象にMRPを実行する。NETPL(計画期間の正味変更)ではNETCHをベースにさらに計画期間を使用して制限を加えることが出来る。NEUPL(再生方式)では、前回からの変更有無を無視して全品目にMRPを実行する。
MRPは重い処理なので、通常はNETCHを指定して処理軽減を行う。NEUPLを指定する場合、処理時間は長時間化する。しかし、「設定をすべて行っているのになぜかこの品目でMRPが実行されない」といった時は、NEUPLを試してみると有効な場合もある。(次回からNETCHでも回るようになる)

※特定のカスタマイズ下においては当てはまらない機能・動作の記述があります。ご留意ください。

MMモジュールの主要なテーブル

購買依頼

EBAN 購買依頼

購買発注

EKKO 購買発注伝票ヘッダ
EKPO 購買発注伝票明細
EKKN 購買伝票勘定設定
EKPA 購買管理における取引先機能
EKBE 購買伝票別の履歴 ※入出庫、請求書照合の実績が登録されるテーブル

請求書照合

RSEG 伝票明細:請求書受領

購買情報マスタ

EINA 購買情報:一般データ
EINE 購買情報:購買組織データ
A017 品目購買情報(プラント別)
A018 品目購買情報

供給元一覧

EORD 購買元一覧

より詳しく学びたい人へ(参考書・専門書紹介)

・図解入門 よくわかる最新SAPの導入と運用

どちらかというと初学者向けの参考書がこちら。SAPの各モジュールを広く学習したい時にはおススメ。

 

・Materials Management With SAP ERP: Functionality and Technical Configuration

日本語の専門書は残念ながら無いのが現状だが、英語媒体であればこちらのようにいくつか選択肢がある。
技術者として海外の専門書と格闘するのはある意味よくあることなので、研究のためならば一冊購入するのも視野に入れていいと思われる。

・ロジスティクス工学(経営科学のニューフロンティア)


SAPの参考書ではないのだが、ロジスティクスにおける工学的な最適化理論に基づくモデル(経済的発注量、動的ロットサイズ決定、配送計画、運搬スケジューリングなど)がまとめられている。かなり学術的な内容だが、「ロジスティクス分野を熟知したSE/コンサル」を志す場合は、こうした知見があると(少なくともすぐ参照できるように手元に置いておくと)顧客要件定義をする際などに、いずれ役に立つ時が来る。
SAPコンサルは、SAPそのものよりも業務観点の知識を求められる。こうした書籍により知見を広げ、また、手元に置いておくことで必要なときに参照できるようにしておくことが重要だ。

RareTECH公式HPはこちら
SAPに加えて、もう1スキル
これからのプロジェクト活躍できるエンジニアになりたい人へ
SAP以外の技術も習得し、一歩先の希少価値を手に入れましょう
AI・データサイエンス/Amazon Web Services/プログラミング(Python/Javascript)/
ネットワーク/データベース(Mysql/PostgreSQL)/サイバーセキュリティ

IT未経験からの指導も充実。月12回以上のzoom授業、過去授業動画も視聴できる。
RareTECHで希少型エンジニアになる!
☆体験授業への参加はこちら☆   公式LINE@で情報を受け取る

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

タイトルとURLをコピーしました