【SAP MM基礎】入庫請求仮勘定とは?(GR/IR)経過勘定について解説

SAP MM

入庫請求仮勘定とは

入庫請求仮勘定とは、SAP MMにおける入庫と請求書照合の処理間において、仕訳の橋渡しをするための経過勘定のこと。本来は「在庫/債務」として一つの仕訳で処理される仕入取引だが、SAPでは入庫処理と請求書照合の2つのステップにて処理を行うので、それらの仕訳の間に橋渡しをするための仮勘定が必要となる。
※経過勘定とは、一時的に通過させるための勘定で、すぐ消し込まれるもの。

そもそも勘定ってなんだ?という人のために(勘定と仕訳の解説)

ここでいう勘定とは勘定科目のことで、会計用語。
資本や負債、収益や費用が発生した時、「仕訳」というものを行って、その取引を漏れなく記録しておく必要がある。

勘定科目とは、仕訳の時に、何が増えて何が減ったのかを示すためのもの。
仕訳の具体的な記述は下記の通り。

 商品 100 / 債務 100

100円の品物を仕入先から買って、商品が100円増えた。
一方、買ったからには支払いの義務(債務)が生じたので、債務が100円増えた。
という取引状態を表す。

ここでいう「商品」や「債務」が勘定科目にあたる。

SAP MMの入庫と請求書照合

まず、前提知識としてSAP MM(購買機能)の流れをおさえておく必要がある。
SAPの購買機能においては、以下の流れで処理が進む。

購買発注(Tr:ME21N) ⇒入庫(Tr:MIGO) ⇒請求書照合(Tr:MIRO)

まず必要なものを買うために発注を出し、物が届いたら入庫を行い、仕入先から請求書が届いたら債務を計上する。
請求書照合(Invoice Verification)とは、仕入れ先から届いた請求書(Invoice)の内容や金額が取引内容と一致するか確認(Verification)することで、確認が出来たら債務を認識する。

資産や負債、収益や費用の増減の際は、仕訳は必ず記帳される必要があるので、入庫や請求書照合の際にも裏で仕訳が起こっている。
入出庫伝票や請求書照合の転記と同時に、裏で会計伝票が自動起票される。その会計伝票上に仕訳が記載されている。

入庫請求仮勘定の必要性

先述のように、簿記における取引では、物品を購入した場合は下記のように単一の仕訳で表現する。(商品勘定を使用する場合)

 商品 100 / 債務 100

この仕訳は、資産(商品)の増加と仕入債務の増加を同時に表している。

一方、SAPの処理においては、資産増加のプロセス(入庫処理)と債務認識のプロセス(請求書照合)が分かれている
これはいくつか理由がある。実際の企業活動においては、納品書と請求書が同時に届かない場合があることや、入出庫管理を行う部門(倉庫管理部)と債務管理を行う部門(経理部)が異なるのが一般的だ。

処理トランザクションが分かれている以上、仕訳も2段階で記述する必要がある。
よって、「入庫請求仮勘定」という一時的に両者をつなぐ(経過)させるための勘定を作り、入庫と請求書照合を橋渡しする

・入庫
商品 100 / 入庫請求仮勘定 100
・請求書照合
入庫請求仮勘定 100 / 債務 100

こうすることで結局、入庫請求仮勘定は貸借で打ち消しあうので、もともと簿記で記述するような仕訳と同じになる。

 商品 100 / 債務 100

入庫請求仮勘定を仕訳するための自動仕訳(Tr:OMWB)

自動仕訳(Tr:OMWB)は、会計伝票を自動で起票する際に仕訳される勘定を設定しておく。
どういった条件の時に、どのような勘定を起票するのかを事細かに設定しておく。
この自動仕訳に無いパターンで入庫や請求書照合などを実行するとエラーになる。

大きくは仕訳の取引の種類別に、「内部処理キー」が用意されている。
入庫請求仮勘定の勘定コードは、以下の内部処理キーに設定しておく。
・入庫請求仮勘定(WRX)

内部処理キーは他にも多数あるため、その一部を紹介する。

・在庫転記(BSX)
評価グループ(プラント)と評価クラス(品目)の組み合わせで、品目ごとの入出庫時に仕訳される勘定を決定する。
商品なら商品、製品なら製品、原材料なら原材料の勘定といった具合。
・在庫転記用相手勘定(GBB)
在庫品を原価センタ出庫した場合や、棚卸増減の場合など費用勘定による処理をした場合、移動タイプのカスタマイズ(Tr:OMJJ)で設定した勘定修正キーの組み合わせで相手勘定を決定するための内部処理キー。あるいは、購買発注の勘定設定カテゴリを設定して入庫の際に費用勘定を計上する場合もこの内部処理キーが考慮され、勘定設定カテゴリのカスタマイズ(Tr:OME9)の勘定修正キーによって相手勘定を決定する。
・再評価による損益(UMB)
期中に在庫再評価(標準原価変更)を行った場合、在庫勘定の残高が変動する。
その際に評価差損益を計上する。評価グループ、評価クラスごとに異なる勘定を設定しておく。

入庫請求仮勘定の経理処理は?

先述したように、経過勘定とは、一時的に通過させるための勘定で、すぐ消し込まれるものなので、入庫請求仮勘定は期末(決算時)には残高がゼロであるはずだ。

ただし、実際のシステム運用上、「入庫」と「請求書照合」のトランザクションがわかれている以上、どうしても消し込まれずに残ってしまうものもある。(請求書照合が未入力)
これはなにもユーザが入力を怠ったとかではなく、取引先から請求書がまだ届いておらず、債務を計上する根拠となる証憑が無いので入力できない、といった諸事情によるものだ。

しかし、経過勘定を財務諸表上に乗せるわけにはいかない。したがって、経理処理として、上記のようなケースでは翌月振り戻す前提の「見込みによる計上」により債務入力を行う。ただし、未消込残高の原因と理由は、ユーザ入力締切(決算開始前)までに明らかにしておく必要がある。

ちなみに勘定コードごとの残高は、Tr:FS10Nで調べることが出来る。

入庫請求仮勘定の英語名称(GR/IR)

英語ではGR/IR(Goods receipt/ Invoice receipt)と呼ぶ。
これに従うと日本語でも正確には入庫/請求仮勘定と記載すべきか。

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