【SAP SD業務知識】輸出入業務で登場する貿易書類まとめ

SAP SD

経営に重要な『ヒト・モノ・カネ』という有名なフレーズを聞いたことがある人も多いかと思うが、貿易取引にも似たような重要とされる標語があり、それが『モノ・カネ・カミ(書類)』だ。

貿易取引では「カミ(書類)」の重要性が高い。
モノ・カネと比肩されていることからわかるように、貿易におけるカミ(書類)は、モノ・カネとの交換価値(つまりそれらと同じ価値)を持つものとして扱われ、微細な記載ミスがダイレクトにモノ・カネの損害につながりかねない。

今回はSAPコンサルとして把握しておくべき貿易書類について解説する。

なお、SAPコンサルとしては一般的にSAPから出力することとなる貿易帳票(=つまりSD観点で輸出者が発行すべき書類)のみにフォーカスすれば十分とも言える。
ただし、業務ヒアリングの中では多種多様な貿易書類の名前が飛び交うため、頭が混乱しないよう、輸出者責任で発行する書類以外もざっと把握しておくと良い

輸出入業務で登場する貿易書類

貿易取引には数々の書類が登場するが、貿易フローの中でどこで登場するのかを踏まえて学習することで、その役割が覚えやすくなる

下図フローは信用状(L/C)取引をベースとしており、各書類に番号を振ってある。この番号ごとに解説していく。

※信用状取引とは、貿易取引において貨物の引き渡しと支払いにタイムラグがあることから、そのリスクを回避するための決済条件・方法のこと。信用状を用いない決済条件もある。

貿易フローに沿った各書類解説

①L/C:Letter of Credit(信用状)

L/Cとは輸入者の取引銀行(信用状発行銀行)が発行するもので、貿易取引の際のリスク(輸出者の代金回収リスク、輸入者の商品受取リスク等)を回避するためのもの。
登場人物が多いので初見だと複雑に見えるが、一つ一つ整理すれば理解は難しくない。
また、信用状取引の流れを把握することで、ほかの貿易書類の役割も理解しやすくなる。

・登場人物
信用状取引では主に以下の登場人物が関係する。
【輸出者】
【輸入者】
【輸出者の取引銀行(買取銀行)】
【輸入者の取引銀行(信用状発行銀行)】
【通知銀行】

・信用状取引の流れ
【輸入者の取引銀行】が、【輸入者】の依頼を受けて発行し、【輸出者】に送付する
【輸出者】に対し、【輸入者の取引銀行】が支払いを保証するもの。

輸入者の取引銀行は「信用状発行銀行(Opening Bank)」という立場となる。
L/C(信用状)が発行されると、輸出地にある「通知銀行(Advising Bank)」を通じ、輸出者にL/Cが渡る。

輸出者がL/Cによってどのように支払いの保証を受けるかというと、輸出者は船積を終えた後、【輸出者の取引銀行(買取銀行)】にL/Cを添えた「⑧荷為替手形(後述)」の買取を依頼する。
荷為替手形については詳しく後述(⑧)するが、これは「支払いの請求」と「貨物との引換証」等の性質を持つものなので、書類と引き換えにして買取ることができる。
つまり、輸出者は出荷後(船積後)すぐのタイミングで代金を得るので、代金回収リスクが回避できるというわけだ。

この際、L/Cに指定された条件を満たす書類が全て揃っている必要がある。
少しでも相違があれば、【輸出者の取引銀行】は買い取ってくれない。なぜならば【輸入者の取引銀行(信用状発行銀行)】から支払いを受けることができなくなるため。
【輸出者の取引銀行】はそれら書類を精査し、買取って問題ないと判断すれば、輸出した貨物分の金額を【輸出者】に支払う。

さらに【輸出者の取引銀行】は【輸入者の取引銀行(信用状発行銀行)】から買取代金を回収し、船積書類を引き渡す。
(2銀行間には、あらかじめ為替取引や信用状の決済について定めた「コルレス契約」が結ばれている)

【輸入者】は【輸入者の取引銀行(信用状発行銀行)】に代金を支払うことで、船積書類を得る。
この船積書類があって初めて、輸入者は貨物を受け取れるようになる。

・ポイントまとめ
⇒L/Cを発行するのは【輸入者の取引銀行(信用状発行銀行)】
⇒支払いの保証を受けるのは【輸出者】
⇒【輸出者】はL/Cを添えた荷為替手形(為替手形・船積書類)を【輸出者の取引銀行(買取銀行)】による買取で代金回収
⇒【輸出者の取引銀行(買取銀行)】は【輸入者の取引銀行(信用状発行銀行)】から買取代金を回収
⇒【輸入者】は【輸入者の取引銀行(信用状発行銀行)】に代金を支払う

②S/I:Shipping Instruction(船積依頼書)

【輸出者】が【海貨業者】に船積を依頼する際に必要となる依頼書。
貨物の内容と作業の内容を記載し、海貨業者に引き渡す。海貨業者はこれに基づき、船への積み込み作業を行う。

S/Iの記載内容は、【船会社】が発行するB/L(船荷証券)作成のベース情報となるので、正確な記載が要求される。

③B/L:Bill of Lading(船荷証券)

【船会社】が貨物を船積したら発行し【輸出者】に渡す証券。

船荷証券はいくつかの性質を持つ。
・貨物の引換証
・貨物を船積した証明となる受取証
・貨物の引渡を請求できる有価証券

つまりはB/Lは貨物と引き換えることのできる(=貨物と同じ価値を持つ)書類となり、非常に重要な書類と言える。

・L/C(信用状)取引との関係
上記①L/Cに関連して、信用状取引において【輸出者】が買取銀行から支払いを受けるためには、船会社から発行を受けたB/Lを必ず荷為替手形に添えなければならない。
逆に言うと、B/Lが貨物と同じ価値(交換価値)を持つ有価証券であるから、買取銀行は荷為替手形を買い取ることができるということだ。
B/Lは信用状発行銀行を通じて輸入者に引き渡す。

④Invoice(商業送り状)

【輸出者】から【輸入者】宛てに作成する請求書であり、貨物の明細(数量・価格等)、契約条件(インコタームズ)、仕向地等を記載した書類。
商業インボイス(輸入者宛て)と通関インボイス(通関手続に使用)がある。(通関用インボイスについては後述する。)
輸出者が発行する書類であり、SAPから出力する書類としては代表的ともいえる。

・L/C(信用状)取引との関係
上記①L/Cに関連して、信用状取引において【輸出者】が買取銀行から支払いを受けるためには、荷為替手形にインボイスを添える必要がある。
インボイスに記載されている貨物明細とL/Cの内容は必ず一致していなければならない。
インボイスは信用状発行銀行を通じて輸入者に引き渡す。

⑤Insurance Policy(保険証券)

【輸出者】が保険料を負担する場合に、保険の申し込みを行い、【保険会社】から発行を受ける。
貨物が船上で破損する等の何らかの問題があった場合に、保険会社から補填を受けるために必要な書類。

・L/C(信用状)取引との関係
上記①L/Cに関連して、信用状取引において【輸出者】が買取銀行から支払いを受けるためには、取引条件によっては保険証券を添える必要がある。
保険証券は信用状発行銀行を通じて輸入者に引き渡す。

⇒なお③④⑤で「3大船積書類」と呼ばれることもある。

⑥Packing List(梱包明細書)

【輸出者】が作成する、どの梱包の中に何が入っているのかを明細化した書類
この書類では梱包/品目ごとの数量、正味重量(Net Weight)、総重量(Gross Weight)、容積、およびそれらの合計数値の記載が重要となる。
総重量とは梱包後の重量のこと。

海貨業者へ渡したり、L/C取引で買取銀行に引き渡したり、場合によって通関にも使用する。

これもSAPから出力する場合が多い。

⑦Certificate of Origin(原産地証明書)

【輸出者】が原産地証明書を作成し、商工会議所がその内容を承認する
原産地証明書は、輸入者の要求に応じ作成する。

商品の原産地を証明する役割を持ち、以下のような目的で発行する。
・輸入国で禁じられている原産地ではないことの保証
・販売する際の原産地表示
・EPA(経済連携協定)税率の適用

⑧荷為替手形

船積書類(B/L(船荷証券)等)を為替手形(Bill of Exchange)に添付したもの

船積書類とは、貨物を出荷・船積みしたことを示す書類のこと。(ここではB/L(船荷証券)の役割が大きい)
為替手形とは、振出人(輸出者)が支払人(輸入者)に対し、指定受取人への支払いを請求する手形のこと。

つまり「出荷(船積)しました、支払ってください」という意味のものと解釈すれば良い。

添付される船積書類とは主に以下が該当する。
③B/L(船荷証券)
④インボイス
⑤保険証券
⑥パッキングリスト
⑦原産地証明書

これにL/Cを添えて、【輸出者の買取銀行】に【輸出者】が買取を依頼する。
貨物の引き渡しを請求することのできる証券であるB/L(船荷証券)が含まれているのがポイントで、これがあるために買取銀行は買取を行うことができる。

⑨D/O:Delivery Order(荷渡指図書)

【輸入者】がB/Lを輸入地の船会社に引き渡すことで、【船会社】から発行する。
輸入者が輸入地にて、D/Oを貨物を積んだ船舶に提出することで、貨物の受取をすることができる。

補足 S/A:Shipping Advise(船積通知)

【輸出者】が船積を完了したら、【輸入者】に対して送付する書類
品目、数量、船名、出港予定日(ETD:Estimated time of Departure)、入港予定日(ETA:Estimated Time of Arrival)などが記載されている。

補足:Arrival Notice(貨物到着案内)

輸入地の【船会社】が、船が仕向港に到着する数日前に【輸入者】に対して送付する書類。
船舶の入港予定日(ETA:Estimated time of Arrival)が記載されているので、その日を目途に輸入を行う準備を輸入者が整える。

通関書類について

輸出通関書類

輸出通関を行うためには、税関への輸出申告を行う必要があり、以下のような通関書類を提出する。
(場合によっては他にも複数の書類が要求される)

・輸出申告書
【通関業者】は【輸出者】の依頼に基づき、通関手続きを行う
このときに通関業者が作成するのが輸出申告書で、インボイスやパッキングリストをもとに作成する。
輸出申告書は、税関(通関士)によって審査を受ける。
輸出通関の手続きが終わるまでは、貨物は「保税地域」に搬入され保管される。

・通関用インボイス
【輸出者】が通関のために発行する
内容は商用インボイス(上記④)とほぼ同じで構わない。
輸出通関上のインボイスでは、貨物の金額を実際の契約条件(インコタームズ)上の価格の他に、FOB価格にも換算して記載する。
これは関税法にてFOB価格で輸出統計を取ることとなっているため。

・通関用パッキングリスト
【輸出者】が通関のために発行する
インボイスとともに、貨物の内容を説明する書類。

・商品内容が分かる資料
輸出しようとしている商品がどのようなものであるかを説明する資料で、カタログや図面などを提出する。

・許可証等
輸出に際して行政府が発行する許可証等が必要な貨物については、通関の際にその許可証を示す必要がある。

輸入通関書類

輸出と同様、輸入の際にも、通関の手続きを行う上でいくつかの必要書類が存在する。

・輸入申告書
【通関業者】は【輸入者】の依頼に基づき、通関手続きを行う
このときに通関業者が作成するのが輸入申告書で、インボイスやパッキングリスト等をもとに作成する。
輸入申告書はCIF価格で記載する。
輸出時と同様、通関手続きが終わるまでは貨物は保税地域に搬入されて保管される。
関税・消費税を納付すると輸入許可が出る。

・通関用インボイス
輸出時と同様にインボイスが必要。

・通関用パッキングリスト
輸出時と同様にパッキングリストが必要。

・運賃明細書、保険料明細書
先述の通り、輸入申告書はCIF価格(=運賃・保険料込み条件)で申告する。
関税の計算に必要なため、運賃明細書・保険料明細書も提出する。

・原産地証明書
上記⑦でも触れたとおり、関税の決定に影響する。

・許可証等
輸出の場合と同様、特別に許可証が必要なものは通関の際に示す必要がある。

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