【SAP SD業務知識】「インコタームズ」とは?貿易取引条件まとめ

SAP SD

SAPのロジコンサル(主にSD/MM)が知識として押さえておくと役に立つ「インコタームズ」について解説。

インコタームズとは、ICC(国際商業会議所)が輸出入の際の貿易条件について定めたルールのこと。

SAPでは輸出入の領域を扱う際(主にSD、MM)、とくに要件定義や業務ヒアリングを行う際に必須となる知識だ。(「FOB」「CIF」といった英字3文字の並びを見たことがある人も多いかと思われるが、それらがインコタームズと呼ばれるもの)

今回はインコタームズの基本事項と、SAPコンサルとして押さえておくべきポイントを中心に解説する。

インコタームズの概要を解説

International Commercial Terms(国際取引条件)」を略してインコタームズと呼ぶ。
ICC(国際商業会議所)が定型的な貿易条件について定めたルールのこと。
上図の通り【2分類11条件】が存在する。

あくまでICCが伝統的な商慣習を整理したもの、という位置づけであり、法令や条約とは異なるものという点も留意する必要がある。しかし、インコタームズに則ったルールを採用することで、国際取引上のトラブルを防止できるため広く採用されている。

定期的に改正されるもので、直近では2020年に定められた「インコタームズ2020」が最新となっている。

インコタームズは具体的に何を定めるものなのか

インコタームズは国際売買を行う企業間において、以下2点を定めたものと言える。

①「リスクをどこまで負担するか(貨物の受渡)」
②「費用をどこまで負担するのか」

【2分類11条件】で定められた各条件は、貨物のリスクの移転のタイミング、および費用負担の範囲のバリエーションだと捉えて良い。

ちなみに、よく勘違いされるのだが、インコタームズは収益認識や所有権移転に関して規定しているものではない。(それらは売買契約や法令によって規定するもの)
インコタームズの話をしているときに、FI観点からそれらの話を挙げてしまうと、場がややこしくなるので留意すること。

インコタームズの【2分類11条件】とは

ICCは定型的な貿易条件について、2つの分類と11個の条件として整理している。

2つの分類とは

第一分類と第二分類があり、それぞれ以下のようになっている。

・第一分類「すべての単数・複数輸送手段に適合する規則」
長い名称だが、第一分類は、いくつかの輸送手段を複合した場合でも使用できる貿易条件であることを表す。
輸送手段とは陸路、空路、海路を指し、「単数・複数」とは輸送手段の一つまたはいくつかを組み合わせたものという意味だ。
EXW,FCA,CPT,CIP,DAP,DPU,DDPの7条件が該当する。

・第二分類「海上及び内陸水路輸送のための規則」
船舶による輸送に限定した分類。
FAS,FOB,CFR,CIFの4条件が該当する。

2分類11条件の詳細

【第一分類「すべての単数・複数輸送手段に適合する規則」】

①EXW(Ex Works:工場渡)
売主の工場・倉庫で荷物を引き渡す。
引き渡し時点で貨物のリスクや費用の負担は買主に移転する。

②FCA(Free Carrier:運送人渡)
輸出地の指定場所にて、買主の指定運送人に引き渡す。
引き渡し時点で貨物のリスクや費用の負担は買主に移転する。

③CPT(Carriage Paid To:輸送費込)
輸出地の指定場所にて、買主の指定運送人に引き渡す。
引き渡し時点で貨物のリスクは買主に移転する。
引き渡し後も、輸入地までの輸送費を売主が負担する。

④CIP(Carriage and Insurance Paid To:輸送費・保険料込)
輸出地の指定場所にて、買主の指定運送人に引き渡す。
引き渡し時点で貨物のリスクは買主に移転する。
引き渡し後も、輸入地までの輸送費/保険料を売主が負担する。

⑤DAP(Delivered at Place:仕向地持込渡)
買主の指定仕向地で輸送手段上で引き渡し、買主が荷下ろしする。
引き渡し時点で貨物のリスク・費用は買主に移転する。

⑥DPU(Delivered at Place Unloaded:荷卸込持込渡)
買主の指定仕向地で荷下ろしした後に買主に引き渡す。
引き渡し時点で貨物のリスクや費用の負担は買主に移転する。

⑦DDP(Delivered Duty Paid:関税込持込渡)
買主の指定仕向地で輸送手段上で引き渡し、買主が荷下ろしする。
引き渡し時点で貨物のリスク・費用は買主に移転する。
DAPとの違いは、売主が輸入通関や輸入税納付を行う事。

【第二分類「海上及び内陸水路輸送のための規則」】

⑧FAS(Free Alongside Ship:船側渡)
輸出地から輸入地に向かう船に、貨物が横付けされた時点で引き渡す。(買主が船に積み込む)
引き渡し時点で貨物のリスクや費用の負担は買主に移転する。

⑨FOB(Free On Board:本船渡)
輸入地向けの買主が指定した船上に積んだ時点で引き渡す。
引き渡し時点で貨物のリスクや費用の負担は買主に移転する。

⑩CFR(Cost and Freight:運賃込)
輸入地向けの売主が指定した船上に積んだ時点で引き渡す。
引き渡し時点で貨物のリスクは買主に移転する。
船積費用、海上運賃は売主が負担する。

⑪CIF(Cost, Insurance and Freight:運賃保険料込)
輸入地向けの売主が指定した船上に積んだ時点で引き渡す。
引き渡し時点で貨物のリスクは買主に移転する。
船積費用、海上運賃、海上保険は売主が負担する。

・補足

補足として、インコタームズ2010までは「DAT」が存在したが、インコタームズ2020で廃止され代わりにDPUが加わった。
ちなみにDAT(Delivered At Terminal:ターミナル持込渡条件)は売主が輸入国のターミナルで荷下ろしを行う条件を指す。

貿易実務者でもない限りインコタームズの条件をすべて暗記しておく必要は無いが、11個のみで数は多くないので、覚えておけば業務ユーザーとの会話がスムーズになる。

インコタームズが規定する費用負担

輸出諸掛には色々な費用があるが、インコタームズでは輸出諸掛のうち主に以下の費用負担について規定している。(売主、買主どちらの負担となるか)

・運賃/輸送費
・保険料
・船積費用
・通関費用

SAPにおけるインコタームズ

カスタマイズ

インコタームズは以下からカスタマイズ可能だが、初期状態で既にICCの定める11条件は登録済み。

SPRO >販売管理 >マスタデータ >ビジネスパートナ >インコタームズ >定義:インコタームズ

ちなみに「インコタームズバージョン」という設定も存在する。
これはその名の通りインコタームズのバージョンを表し、現在は「インコタームズ2020」が最新だが、2020年の改定前のバージョンは「インコタームズ2010」だった。

得意先マスタ

インコタームズの設定項目は以下に存在する。

得意先マスタ(Tr:VD03)>販売管理 >請求タブ >出荷/支払条件

得意先別に標準的に採用されるインコタームズを指定しておくことができる。
また、付近に「インコタームズ場所1、インコタームズ場所2」という項目も確認できるはずだ。
これは貿易関連帳票において、インコタームズに続ける形で指定引き渡し場所や指定仕向け先を記載するルールがあり、そのための入力項目となっている。(場所の名前や住所を入力)

伝票項目

受注伝票上の受注管理タブなどにインコタームズを指定する項目がある。
ここでもインコタームズに続き、場所名を指定する項目が存在する。

価格条件

インコタームズは価格設定の条件キーに入る。
条件マスタを設定する際、価格条件キーにインコタームズを含めることができる。

インコタームズはリスク負担と費用負担を規定したものなので、その負担度合いに応じて輸出価格を調整するために使用される。

最も基本的な輸出価格は、売主の拠点でリスク・費用負担を移転するEXW(工場渡)がベースとなる。(EXWは売主のリスク・費用負担が最も少ない)

帳票出力要件

インコタームズは売買契約書(Sales Contract)や商業送り状(Invoice)に記載される。
インコタームズに続けて指定の引渡地/仕向地/船積港を記載するルールとなっているので、輸出関連帳票を出力する際には「インコタームズ」「インコタームズ場所」を続けて出力する。

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