全銀フォーマットとは、全銀協(全国銀行協会)が定める、銀行と企業間で振込依頼や口座振替の
電子データ送受信(全銀プロトコル)を行うためのフォーマットのこと。
SAPでは支払や電子銀行報告書といったFI領域の機能を扱う際に、日本国内の銀行と連携する場合に必要となる知識のため、SAPのFIコンサルが知識として押さえておくと役に立つ。
全銀フォーマットについて解説
全銀フォーマットとは
企業と銀行間において、振込の依頼や口座振替の依頼、入出金の明細といった情報を、電子的に送受信することで、仕入先への支払業務や得意先からの入金管理業務の効率化を図ることができる。
電子的な送受信が可能となれば、経理担当者が都度銀行の窓口に赴き入出金の手続きを行う必要がなくなる。
このように、ネットワークを通じて企業と銀行間で振込依頼や入出金情報のやり取りを行うことができるサービスをFB(ファームバンキング)と言う。各銀行でこうした仕組みを実現するためのサービスを提供している。
そして、企業と銀行間で情報を正確かつ確実に連携するためには、統一フォーマットが必要となる。
日本国内の銀行においては、全国銀行協会が定める「全銀協フォーマット」が採用されており、企業からのデータ送信あるいは銀行からのデータ受信においては、このフォーマットの定めに則りデータを出力あるいは読み取ることとなっている。
全銀フォーマットのイメージ
全銀フォーマットとして出力したファイルを開くと、以下イメージのような文字列が表示される。
※あくまでイメージ。全銀ファイルとして一部正確でない部分あり。
こんな感じのデータを銀行に送ったり、銀行から受信したりする、とまずはざっくり捉えると良い。
しかし、このままではいったい何の情報が書かれているのか、目視では全く分からない。
実はこれは固定長ファイルであり、何桁目から何桁目までは何を意味する、というのがきっちり決められている。
このデータ構造がどのようなものであるかは、次節で詳しく解説する。
全銀フォーマットの構造
ここでは全銀フォーマットの構造について詳しく解説する。
全銀フォーマットには、総合振込や給与賞与振込、口座振替、地方税納入、入出金明細など、取引内容に応じたいくつかの形式があるものの、基本構造さえ知っておけば問題ない。
(今回は振込依頼を例に説明する)
レコード長
全銀フォーマットは複数行のレコードからなる固定長の形式をとっており、一行のレコードの長さは120バイトと決まっている。
レコードの種類と並び
全銀フォーマットは「ヘッダ・レコード」「データ・レコード」「トレーラ・レコード」「エンド・レコード」の4種類のレコードで構成される。それぞれ開始文字および用途が決まっており、開始文字を用いて該当レコードが何のレコードなのかを識別することができる。
①ヘッダ・レコード
まず「ヘッダ・レコード」には自社の銀行口座の情報が格納されている。
レコードの開始文字は「1」。
②データ・レコード
続いて「データ・レコード」には、「相手先の口座にいくら振り込む」という依頼情報が含まれている。一つのファイル内に複数の振込を指定できるため、「データ・レコード」は複数行出力される。
レコードの開始文字は「2」。サンプルとして挙げた全銀形式イメージ図でも、「2」で始まる行が複数あることが確認できる。
③トレーラ・レコード
「トレーラ・レコード」には、振込の合計件数と合計金額の情報が格納されている。
レコードの開始文字は「8」。
④エンド・レコード
データレコードの終了をあらわす。
レコードの開始文字は「9」。
レコードの項目配置
先述のように、全銀フォーマットにおいては何桁目から何桁目が何を表す、といったことが決まっている。
各銀行でFBサービスを提供していることから、各銀行は利用企業向けの案内として以下のような資料を提供している。
https://www.oitabank.co.jp/business/businessdirect/pdf/zengin_format.pdf
(「全銀フォーマット」で検索した際トップに表示される、大分銀行ビジネスダイレクトのページにあるPDFを引用)
その他の補足知識
補足①:IB(インターネットバンキング)とのちがい
これまでFB(ファームバンキング)について触れてきたが、一般的に耳なじみのある似た言葉として「IB(インターネットバンキング)」というものがある。
IBは、PCやスマホなどのブラウザやアプリから、自分の銀行口座の管理を行うことができる仕組みを指す。一例として、スマホにダウンロードできる楽天銀行のアプリで口座管理を行うことなどがそれにあたる。
さらに、FBやIBを含めた電子的な銀行関連の情報連携をまとめて、EB(エレクトロニックバンキング)という。
補足②:海外の銀行ファイル規格は?
海外にもSWIFT形式やBAI形式、SEPA形式といったように、国や地域ごとの標準形式とされるものがある。これは国や地域によって必要とされる情報が異なり、それぞれ独自に規格を定め今日まで運用・更新してきた結果と言える。
グローバルな案件などでは全銀フォーマット以外の形式を扱うことになるので、それぞれを別途押さえておく必要がある。