【SAP固定資産機能 FI-AA】固定資産マスタの解説

SAP FI

SAPの固定資産機能(FI-AA)においては、固定資産をマスタとしてデータ登録し、その組入れ(資産計上)から減価償却、除却・売却などといった一連の固定資産会計処理を行うための機能群が備わっている。

この記事では固定資産マスタの登録、および固定資産にかかわる各種処理について解説する。

なお、固定資産のカスタマイズ設定(償却領域、勘定設定)および各種の会計処理については以下記事で解説している。

【SAP固定資産機能 FI-AA】償却領域と勘定設定の概説
SAPには固定資産管理の会計機能が備わっており、固定資産マスタの管理、固定資産の各取引に応じた会計処理をSAP上で行うことが可能となっている。まず前提として固定資産の会計処理、SAPの固定資産機能の概説と、勘定設定・償却領域といった会計処理の前提となる設定の成り立ちについて説明する。

固定資産マスタの解説

固定資産マスタ管理

固定資産マスタ登録(Tr:AS01)

一般的に、企業規模が大きくなるほど多数の固定資産を保有するようになり、土地や建物、車輌、工作機械といった有形固定資産、特許やソフトウェアなどの無形固定資産を対象として固定資産管理を行う必要がある
SAPではこうした対象を固定資産マスタとしてTr:AS01から登録し、固定資産コードを振ることで管理する。

以下にTr:AS01を実行した際の資産マスタ登録画面について解説する。

第一画面
資産クラス、会社コードを指定する。

第二画面
資産番号(コード)を指定する。

・一般タブ
資産の名称を表すテキストや、数量管理を行う場合は数量を指定する。
「転記情報」欄の資本化日付を指定する。

・時間依存タブ
原価センタ、責任原価センタ、利益センタを指定する。
休止資産とする場合は資産休止のフラグを付ける。

・原産地タブ
仕入先や製造者、原産国、振替元資産などを入力できる。

・固定資産税
資産分類キーを指定し、資産の種類が判別可能なようにしておく。

・リースタブ
登録する資産がリース資産である場合場合、必要な情報(リース契約に基づく契約番号、契約日、リース開始日等)を入力する。
とくに、以下の項目はリース資産の現在価値(PV)を決定するのに必要なパラメータとなるので重要な項目だ。

PV計算に関与するパラメータ
・リース期間
・リース支払回数
・支払周期
・リース支払金額
・年利

現在価値の金額は都度計算されて表示される項目のため、DBテーブル上に存在する項目ではないため注意。
現在価値の算出に関しては以下記事で解説している。

【SAP FI-AA知識】リース固定資産の現在価値の算出方法(エクセルPV関数を使用)
現在価値はマスタ画面上の項目なので、一見するとテーブルから抽出できるように思えてしまう。 しかしながら、これは都度計算して表示している項目に過ぎないので、実はDBテーブル上に保持していない。 だが、抽出後にエクセル上でPV関数を使うことで、簡単に現在価値を求めることが出来る。

・償却領域タブ
このタブでは、第一画面で指定した資産クラスに応じて、該当資産クラスに割当てられている償却領域が表示される
償却キーにより、減価償却の方式を決定する。
耐用年数、期間を入力することで、減価償却期間が決定される。
通常償却開始日を指定すると、指定した開始日以降に該当資産が減価償却計算の対象となる。

・資産価額ボタン
償却エクスプローラ画面に飛ぶ。
各償却領域の年度ごとの記帳済み額、これから計上される予定の記帳予定額を確認することができる。

資産マスタの登録・変更・照会
Tr:AS01 資産マスタ登録
Tr:AS02 資産マスタ変更
Tr:AS03 資産マスタ参照

資産マスタのブロックと削除(Tr:AS05、Tr:AS06)

資産マスタの転記をそれ以上行わない、あるいはマスタを削除したい場合は以下の処理を実行する。

Tr:AS05から資産マスタのブロック処理を行う。(ブロックを選択して保存)
これにより、資産マスタの会計転記を防ぐことができる。

Tr:AS06より資産マスタの削除を行うことができる。

資産補助番号登録(Tr:AS11)

資産マスタコードに対する補助番号を発番し、資産マスタの親子関係を定義する。

固定資産の会計処理(取得、減価償却、振替、除却売却等)

資産取引入力:外部資産取得(Tr:AB01)

資産取引のトランザクションはいくつかあるが、資産取得の時に使用するものの一つがTr:AB01となる。
主には以下のような項目を指定し、転記を行う。(資産転記のトランザクションの基本操作は共通している部分が多い)

・取引タイプ
・資産番号の指定
・記帳額
・数量(資産マスタで棚卸管理にフラグを付けている場合)
・転記日付
・資産評価日付
・相手勘定コード

上記を指定した上で、転記する償却領域を確認し、シミュレーションを行うことで仕訳が表示される。
シミュレーションで問題なければ転記する。

仕入先からの固定資産購入は以下トランザクションも使用できる。
・仕入先からの取得(Tr:F-90)

資産取引入力:会社コード内の振替(Tr:ABUMN)

既に存在する固定資産マスタを、別の固定資産マスタに振替を行いたいときに、残存簿価とともに別資産に転記する際に使用する。
振替元と振替先の資産番号を指定して振替転記を行う。
振替先の固定資産マスタは予め登録しておく必要がある。

資産取引入力:過年度修正(Tr:ABNAN)

運用を開始した固定資産の記帳内容に修正が必要な場合、過年度修正(Tr:ABNAN)を用いて修正転記を行う。

資産取引入力:廃棄による資産除却(Tr:AVABN)

資産の除却を行う場合、Tr:AVABNを使用して処理することが可能。
主に以下の項目を入力する。

・資産番号
・転記日付
・除却額(ここではパーセントまたは数量で入力することもできる)
・取得年度(当年取得の場合はラジオボタンで当年度取得を、それでなければ前年度取得を指定)

伝票シミュレーションを実行することで仕訳が表示される。問題なければ保存を押す。

得意先への資産売却(Tr:F-92)

資産売却の場合はTr:F-92を使用できる。
借方に得意先コードを指定し転記する。

償却記帳実行(Tr:AFAB)

固定資産にかかわる会計締処理の一つとして、減価償却を毎期実行し、減価償却費を転記する必要がある。
償却エクスプローラで資産ごとの将来の償却記帳額が整合性が取れているかを管理し、償却記帳(Tr:AFAB)を実行する。
予め設定した償却キー等のパラメータに従って減価償却費が計算され転記される。

償却再計算(Tr:AFAR)

前回減価償却処理を実行した時点から、減価償却シミュレーションの結果に差異がある変更が発生した場合(償却開始日などを変更した場合が該当する)、償却再計算を行って変更をシミュレーションに反映させる必要がある。
再度、償却記帳実行で、差分が記帳される。

固定資産マスタ関連テーブル

Table:ANLA 資産マスタレコードセグメント
Table:ANLB 償却条件
Table:ANLC 資産価額項目
Table:ANLH 資産番号
Table:ANLZ 時間依存資産配分
Table:ANEK 資産転記の伝票ヘッダ
Table:ANEP 資産明細

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