【SAP FI知識】支払条件について分かりやすく解説

SAP FI

SAPにおける支払条件(Payment terms)とは、仕入先に対する支払い、または得意先からの支払いについて、支払いサイト(支払いまでの猶予期間)などの諸条件を定めるパラメータで、取引先ごと(あるいは取引ごと)に指定された支払条件に基づき支払処理を運用するためのもの。

今回はSAPにおける支払条件の目的、設定方法、運用を解説する。

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SAP支払条件について解説

支払条件の目的

企業間の取引は、その殆どが掛金(売掛、買掛)を用いて行われる。
取引のタイミングから一定の猶予期間(支払いサイト)を置いて請求・支払を行うこととなる(取引の都度、決済する場合は都度方式と呼ばれる)。

ここで必要となるのが、取引先ごとに、どれだけの期間の支払いサイトを持たせるかを取り決めることだ。
一般的に、自社から取引先への支払いは、猶予期間が長いほどキャッシュフロー上有利になる。
一方、逆の立場では取引先からの支払いは、猶予期間が長いほど自社はキャッシュフロー上不利になる。

基本的には、取引先との取引実績や信頼関係に基づいて支払いサイトを設定することとなる。
(ただし、下請法の制限を受ける取引関係の場合は60日以内に支払わなければならない)

支払条件のパターン

支払いサイトのパターン

一般的に、当月に発生した取引について月末に締め(集計)を行い、一定期間後に支払いを行う(締め方式)。

この一定期間とは、主に締日から30日後、45日後、60日後、75日後といった形で15日刻み(半月刻み)に設定することが多い
※1か月を30日として捉える。またさらに細かく5日刻みもあり得る。

仮に30日サイトであった場合、以下のように表現する。
「月末締め30日後払い」
「月末締め翌月末払い」

仮に45日サイトであった場合、以下のように表現する。
「月末締め45日後払い」
「月末締め翌々月15日払い」

補足として、SAPの支払処理の観点で注意すべきなのは、月末や月中で、カレンダー上の支払日が祝日(銀行休日)に重なっていて、支払処理を回したが間に合わなかったという場合があり得る。
祝日を考慮した支払業務が必要なことはもとより、システムとしてもジョブの祝日考慮が忘れていたなど(支払提案やFB送信が行われなかった)のケースが発生しないように注意する必要がある。

参考までに、SAPの自動支払処理については以下で解説している。

【SAP FI基礎】自動支払処理(Tr:F110)の仕組みを分かりやすく解説
自動支払処理(Tr:F110)とは、企業の支払業務に対応したSAP標準の機能であり、未消込の債務明細のうち、支払期日の到来したものに対して消込処理、銀行仮勘定の転記、そして銀行送信ファイルなどの形式での外部出力までを行う処理のこと。 今回は、この自動支払処理について、支払処理のプロセス、前提の設定を解説する。

支払方法のパターン

支払方法にはいくつかあり、どのような形で決済を行うのかを規定する。
具体的には、手形払い・小切手・自動引き落とし・国内銀行振込・海外銀行振込といったものがある。

これら支払方法は、先述の支払いサイトのパターンに加えて、以下例のように記述される。
「月末締め75日後払い(国内振込)」

SAP上は、基本的にはこのように支払いサイト+支払方法の組み合わせごとに支払条件のカスタマイズを構成する。
(ただし他にも分割払いや割引に関わるパラメータもあり、更に細分化する場合もある)
バリエーションが出るものなので、運用方法によってはカスタマイズ追加が発生しやすい。

支払条件のカスタマイズ(Tr:OBB8)

支払条件はTr:OBB8からカスタマイズを行う。
また、支払条件はテーブル:T052に格納されており、テーブルキーは「支払条件」「期限」の二項目。
支払条件と期限の組み合わせごとに支払いに関する諸条件の設定がある、といったように捉えておくと良い。

主なパラメータには以下のものがある。

支払条件(コード)

4桁の支払い条件のコードを指定する。

期限

支払条件が有効となる月中の日付を指定する。

同じ支払条件コードに対して複数の期限日を持つことができ、それぞれに異なる設定を指定可能。
(同じ支払条件にたいし、15日、31日といった形で期限日をそれぞれ持つことができる)
支払条件の期限日と、該当伝票が作成あるいは転記された日付により、下図のように適用される設定が異なってくる。

勘定タイプ

得意先、あるいは仕入先にチェックを入れる。
債権に対する支払条件(得意先からの支払い)なのか、債務に対する支払条件(仕入先への支払い)なのかを指定する。

支払保留/支払方法初期値

・支払保留
支払処理が行われないように(伝票明細を支払処理の対象としないように)一時的にブロックしておくためのパラメータで、ここではその初期値を設定する。
明細を支払い対象として良いと判断した場合に、伝票変更で支払保留を消すことで支払保留の対象とすることができる。

・支払方法
当該の支払条件の支払方法の初期値を指定する。

支払基準日計算

支払基準日としてどのような日付を採用するかの設定。
支払基準日とは、当該明細の支払期日(支払いが行われる予定の日付)を計算するための基準とする日付のこと。

設定例は以下の通りとなる。(0を入力した場合はスペースとなる)

・固定日「31」追加月「00」:支払基準日は当月31日
・固定日「01」追加月「01」:支払基準日は翌月初日
・固定日「15」追加月「01」:支払基準日は翌月15日

後述の「支払条件」欄で日数を指定しない場合は、支払基準日=支払期日となる。

支払基準日初期値

以下の4つの設定がある。
・初期値無し:ユーザが自分で支払基準日の初期値を入力する
・転記日付:転記日付を支払基準日の初期値とする
・伝票日付:伝票日付を支払基準日の初期値とする
・入力日付:システム日付を支払基準日の初期値とする

支払条件

ここは以下のパラメータから構成されている。

・分割支払い
チェック項目。支払を分割して行う場合にチェックを入れる。

・パーセント
割引率を指定する項目。

・日数
割引が有効となる日付を入力する。一例として15日が指定された場合、15日以内に支払いを行った場合に上記の割引率が有効となる。

・固定日
支払基準日に対して加算する日数を指定する。加算した結果の日付が支払期日となる。

・追加月数
支払基準日に対して加算する月数を指定する。加算した結果の日付が支払期日となる。

補足:支払基準日と支払期日の関係

支払条件には以下のように複数の日数指定の項目があり、分かりづらい。

・支払基準日計算の欄に「固定日」「追加月」
・支払条件の欄に「固定日」「追加月数」

支払基準日と支払期日の関係については下図のように整理できる。
基本的にはこれらのパラメータを使って支払いサイト(月末締めXX日後払い)をコントロールする。

支払条件の運用

マスタ設定

得意先、仕入先マスタでの指定する。
支払条件は会社コードレベル、購買組織(販売組織)レベルの両方で設定箇所がある。

同じ取引先でも、購買組織が違う場合は扱っている事業・商材が異なるなど、個別の支払条件が設定されることがある。

トランザクション上の運用

受注伝票、購買発注、会計伝票などで指定する。

債務明細上、支払期日が到来するものについては、支払処理の対象とする。
債権明細も同様で、支払期日が到来するものについては、得意先からの入金を確認して入金消込を行う。

「支払期日」の項目は計算上の項目のため、DB上は保持していない。
仕入先明細(Tr:FBL1N)や得意先明細(Tr:FBL5N)にて支払期日を表示した一覧などを用いて、支払い漏れや入金遅延が無いかを確認する。(こうした債権チェックのプロセスを「カスタマーエイジング」とも呼ぶ)

支払条件のテーブル

Table: T052 支払条件
Table: T052U 支払条件の独自説明
Table: TVZBT 支払条件テキスト

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