【SAPと英語】SAPコンサルにとって英語スキルは重要なのか?

SAP 業界知識

SAP導入は多額の費用が掛かるのは周知のとおりで、導入企業は自ずと大企業が中心となる。
そうした企業は殆どが国際的な商物流に基づく業務を行っているため、SAP導入プロジェクトも日本国内だけで完結することは少ない。
したがって、導入業務を行うSAPコンサルタントにも、基本的な海外の商習慣の知識が求められるし、なにより外国語のコミュニケーションによる現地社員との業務要件定義を行う力も求められる

今回は、日本のIT市場で活動するSAPコンサルタントにとって英語スキルを苦労して習得する意味はあるのかどうか、および英語力の伸ばし方について考えていく。

英語習得について非常に高い壁を感じておられる方も多いかと思うが、実はそんなに身構えなくとも良いという事や、学習の労力以上に人生を変えてくれるレベルのメリットがあることもお伝えしたい。

この記事で分かる事
・SAPコンサルにとっての英語スキルのメリット
・どうやってビジネスレベルの英語を習得すれば良いのか?
・「英語で仕事できます」と言って良いレベルは?

SAPコンサルの英語スキルの重要性

まず最初に結論から言うと、SAPコンサルタントにとって英語スキルは非常に重要だ。

もちろん日本語しか喋れない日本人SAPコンサルで、導入の最前線で活躍されている方も多い。(というか日本のSIer所属ならそういった人々が圧倒的多数)
しかし、日本のSIerで、SAPコンサルとして充分にハイスキルな部隊を抱えていながら、国際プロジェクトの受注競争に今一歩打ち勝つことが出来なかったり、顧客企業の海外進出に伴って多言語対応が出来る保守ベンダーに乗り換えられたり、といった事態も往々にして起こっている

英語スキルは、そうした市場獲得の視点と、個々人の人材スキルとしての視点など、多面的な重要性を持つことをまず意識する必要がある。

IT業界の海外売上比率

日系SIerの現状

まず、みずほ銀行産業調査部による報告資料で、国内の大手SIerの海外売上比率と外資系SIerとの格差が分かる資料があるので、ご覧いただきたい。

https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/bizinfo/industry/sangyou/pdf/1059_12.pdf

『【図表 1】 国内最大手 4 社の情報サービス事業の海外売上高比率』を見ると、そのまま国際人材の獲得状況を表していると言って、ほぼ差し支えないのではないだろうか。
図表中に記載のある企業のいくつか(日、米、インドいずれも)とはプロジェクトで関わったことがあるが、その限られた観測範囲をベースにした感覚値とも一致する。

日系SIerは海外売上比率が非常に低く、もっぱら日本の内需に支えられており、日本企業における国際競争力の悩み(≒英語人材獲得の悩み)がそのまま表れていると言える。これはIT業界全体でもSAP業界でも同じことが言えるはずだ。

比較的マシな人材環境にあると思われる米系SIerですら、日本国内プロジェクトでは英語人材が豊富にいるとは言い難い状況だろう。(そもそも「日本人で英語が出来る人」という母数自体が限られてしまうので)

インド系SIerに至っては、そもそも日本国内のプロジェクトであっても日本人メンバーがほぼおらず、インド人を中心とする多国籍編成でチームを構成している。
日系SIerにおける「国際人材」というと「日英バイリンガル」であることが前提となってしまうところだが、そもそも国際人材というなら英語だけできれば事足りるのだ。この時点で国際競争で後れをとる要因となっている。

日本のIT市場で英語が出来ると希少人材になれる

そんなわけで、日本国内のIT市場においては、日本語と英語が話せるというだけで希少人材になれてしまう状況がある。

国際競争力という意味では(言語の他に単価も含めてだが)インド系SIerはたしかに非常に強い。
しかし、「英語しかできない集団」と仕事を進めるのは、日本のSAPユーザ企業としては、それはそれでシンドイのだ。
「日本国内の打ち合わせは日本語でこなしてくれて、自社(SAPユーザ企業)の海外メンバーとは英語で話してくれる」というバイリンガルな対応をしてくれるのが、日本国内ユーザとしてもありがたい。
よって、この立ち位置で動ける人材というのが希少人材ということとなる。

SAPコンサルが英語習得をすることのメリット

ここではSAPコンサルが英語を習得することによって、具体的にどのようなメリットを享受することが出来るのかを整理する。

年次に関係なく頼られ重宝される

英語が話せると、若い年次の技術者であっても頼られ重宝される存在になることができる
「英語話者ではないSAPコンサル」にとって、海外顧客メンバーとの意思疎通の要となってくれるバイリンガル人材は非常に貴重なのだ。
(自分にできない役割を担ってくれる人は尊重される。)

年次が若くても、プロジェクト内で一定の役割を担い、経験豊富なシニアコンサルレベルからも頼られるという環境で仕事ができるのは、大いに自信がつく。
あるいは、職場環境によっては理不尽な思いをする技術者も多い中、ある程度の尊重を得られる環境はメンタルにも良い効果がある

SAPスキル自体が微妙でもチャンスを掴みやすい

通常、SAPスキルにおいて盤石な土台が無いコンサルは、ソリューションの質が求められるプロジェクトに入り込むのは難しい。
しかしながら、プロジェクトの遂行にはSAPスキル以外にもいろいろなスキルが求められる。
そうした中に、国際プロジェクトであれば「英語スキル枠」というべきものがあったりして、SAPコンサルとして多少微妙な点があっても、プロジェクトに入って仕事をすることができる。

年次が若かったりSAPコンサルとしては経験が少なかったりしても、英語話者というだけで抜擢されてそうしたプロジェクトに参加する権利が与えられる。これだけでチャンスの幅が段違いだと言える。
そうした人がプロジェクトを通してSAPコンサルとしても成長してくれれば言うことなしだ。

また、仮にSAPスキルが微妙なままでも「SAPの事をある程度分かる英語話者」というだけでも実は一定の需要がある。
よくあるケースで、国際会議だからといって通訳業者を雇ったりすることがあるのだが、SAPの事を知らない(というか一般的な業務用語さえ怪しい業者もちらほら見かけるが)と通訳がかなりしんどそうだったり、逐語的に訳すのでよくわからん造語が生まれたりする。
そうなるくらいなら内部人材でSAPをある程度知っている人が英語を話してくれるだけで、だいぶ助かったりするのだ。

SAPを広く習得でき、知見が広がる

何と言っても英語ができる人間の母数が少ない。

余程大きなプロジェクトでもない限り、英語話者がプロジェクトに一人ないしは二人程度しかいないという状況は結構ありがちなのだが、こうなると「各モジュール担当チームに一人ずつ」などという配置は望むべくもなく、英語話者はモジュールに関係なく海外との打ち合わせに出席させられることとなる

そうなると当然、海外顧客担当との打ち合わせに先立って、英語話者に議題およびその詳細を伝え、背景知識を含めて必要な事項を教えることとなる。これは各モジュールの経験豊富なSAPコンサルから個別指導をもらうに等しい。
(これに加えて、知識の裏付けのために自分でも実機を触って確かめる程度の勤勉さも持ち合わせていればなお良し)

さらにはそうしてインプットした知識を、会議を通して英語でアウトプットしていくので、非常に理想的な学習サイクルが完成するというわけだ。こうなると、短期間でもSAPコンサルとして非常に成長することとなる。

このように、国際プロジェクトで打ち合わせの矢面に立つということは、スキルの向上に役立つと言える。

単価にも当然反映される

希少な人材であれば当然、単価もそれに見合ったものとなる。
英語話者かつある程度SAPを知っているというだけでも、結構な単価が付くし、TOEICの点数で裏付けがあればなお単価交渉しやすい。

もし英語が出来てSAPもそこそこ知っているのに、会社が昇給を渋っているといった状況にある人は、転職やフリーランスになることを検討しても良いだろう。

ビジネスレベルの英語をどうやって習得すれば良いのか?

そもそも「ビジネスレベルの英語」とは?

英語が得意ではない、と思っている日本人は多い。
しかしながら、実は全く英語が出来ないというわけでもない。
社会人であれば(旧制度では中学校から英語を勉強し始めるので)少なくとも学校教育の中で6年以上の英語学習を積んでいる。

Google翻訳などの補助も受けることで、じつは結構な割合の社会人は「読み書き」の領域でメールや文書を通じた英語コミュニケーションをこなすことができてしまう
これも立派な英語スキルであるはずだが、なぜかそういった人々が「英語ができる人」として扱われる場面を見たことがない。

一方で、英語ができる人というのは、どこの会社でも専ら「音声コミュニケーションとして英語を駆使することができる人」を指して言われるのではないだろうか?
英語を用いて海外の打ち合わせでコミュニケーションを取れる人ばかりが「英語できる人」扱いをうけているのではないだろうか。あなたの職場ではどうか?それがビジネスレベルの英語の基準となっているのではないだろうか。

この状況を踏まえると「英語での打ち合わせをこなすことが出来るレベル」というのが日本のIT環境における「ビジネスレベルの英語」と定義づけることができる。

オーラルコミュニケーションができて初めて「得意」を名乗れるのであり、読み書きしかできないうちは英語は「不得意」扱いを受けてしまう。
日本の社会人が考える英語の得意/不得意の境界線は、話す/読み書きの間にある隔たりと重なっているようだ。

そこで、そもそもなぜ日本人が英語が不得意なのかという原因を整理する必要がある。

なぜ日本人は英語が不得意なのか

言語とは何よりも「音」であり、例えば子供の言語習得はまず音声としての言語を大量に浴び続けることで行われる。
殆どの人にとって、生まれてから数年間の原初的な言語体験は「音の連なり」そのものであり、そこから文字や単語、慣用的な言い回しといった言語習得の段階が高次元のものとなっていく。
と、このように言われてみれば、多くの人にとって(自身の幼児期における言語形成過程を振り返り)それは納得感のある言語形成のプロセスだと言える。

特に西欧の言語は「文字は音声言語に従属する」という発想がベースにある。西欧の言語は表音文字であるアルファベットを用い、「口から発せられた音がいかに記述されるか」という発想のもとに綴られる。
西欧の言語は歴史的に文字が音声に従属することを前提としてきたと言ってよく、言語学者であるソシュールは『一般言語学講義』の中で「書かれる語/話される語=言語学の対象として解釈されるのは誤りで、話される語=言語学の対象・書かれる語は記録である」との旨を説いた。

一方、日本人の言語感覚としては、こうした音声中心主義とでも言うべき従属関係には、無意識に納得しかねる部分が残る。日本語は表意文字である漢字により綴られ、アルファベットとは逆の「記述された文字はこう読まれる」という文字と音声の関係が築かれている。
(ひらがなカタカナは表音文字と言えるが、しかし日本語の文章記述の際に表音文字だけでは文章の体を成すことが出来ない)

おそらくこの「行き違い」とも言うべき言語感覚の齟齬が放置されたまま、日本の英語教育の制度設計がなされていることで、多数の英語「不得意者」を生み続けている。
日本の英語教育は文字と文法、文章など「書かれた言語」を教えるものの、発「音」や会話については悲しいほどに価値を置いていない。(帰国子女が授業でガチな発音をしてクスクス笑われる、というありがちなシーンを想像してみると良い)
まず「音の連なり」として捉えるのが最も自然である音声中心主義的な西欧の言語を、なぜか文字中心的な教育に押し込めてしまっているのは、日本の表意文字的発想が大いに働いた結果と言える。(これは15年前(2006年)のセンター試験からやっと申し訳程度のリスニングが導入されたものの、それ以来ほぼ進化が見られない事からも顕著だ。)

本来、最上位にあるべき「音」が最下層に押しやられたことにより、どのような不幸が起こっているかを具体的に考えていく。

英語を音声として捉える

幼児が大量の音声言語を浴びることで言語形成する過程を、人間として最も自然で「効率的」な言語学習形態だと仮定するのであれば、義務教育下での文字・文法・文章中心主義で展開される英語教育は、それに真っ向から反する「非効率的」なものと言える。

そうしたなかで音声としての言語習得は置き去りにされ、日本人はいつまでたってもカタカナ英語的な音声認識の中で生きることとなる。
カタカナ英語というのは例えば「フィッシュ」「キャット」「イート」という単語を並べてみた時に、本来すべて子音で終わるはずの単語語尾に余計な母音がくっつく発音のことを指す。

カタカナ英語で発話を行う限り、単語の後ろに[a,i,u,e,o]いずれかの余計な音が付随してくるのだが、これは後続の語を連結する接合部に入り込んだ異物のごとく英語の「音の連なり」の邪魔をし、喋るスピード感も損なう。(というか、自然な英語のスピードでは、もはや終わりの子音すら省略されたりもする)

AppleもMcDonald’sもComputerも、カタカナ英語と米国英語ではずいぶん響きが異なる。例えば流暢な英語話者が次々に言葉を繰り出すとき、カナカナ英語の音声認識と実際に聞こえる音の差異をイチイチ補正するような聞き取りを行っていては、到底話に付いていくことは不可能となる。

英語教師は記述式の文法のミスには過剰な目くじらを立てるが、発音の誤りについて厳しく指摘するシーンはついぞ目にかからなかった。
本来は逆であるべきなのだ。自然な音の流れは、自然と正しい文法を導く

日本人が英語を喋れない・聞き取れないというのは、単純にカタカナ英語の音声認識が邪魔をしており、自然な音声として認識することができていないためだ。
読み書きはできるが喋るのが苦手な人が多いのは、そういう教育を6年間以上も叩き込まれた結果に他ならない。本来の英語発音と、6年間積み上げた膨大な虚構の発音との間に、とてつもないギャップが生まれているのだ。

まず自然な音声としての英語を捉えなおす事が、英語習得の第一歩となる。

英語の音声や会話を習得できる教材は?

今は良い時代になったもので、Youtubeを見ればいくらでも無料で、日本語が流暢な英語話者がご親切に英語を教えてくれるし、ためになる情報発信もしてくていれる。
英語圏のYoutuberのチャンネルを直接観に行って、生の英語に触れることだって簡単にできてしまう。

英語をストレスなく習得できるYoutubeチャンネルを以下にまとめているので、参考にしていただきたい。

【TOEIC攻略】英語のリスニング力向上におススメなYoutubeチャンネル7選
リスニングはリーディングに比べ優しめの問題設定がされているので、得点を伸ばしやすいと言える。 では、リスニング力を伸ばしていくためには何をすればいいのか。 TOEIC930点を保持し、外資系企業へのITコンサルティングを行っている筆者が、リスニング力向上に有効だと思われるメソッドをご紹介する。

聞くだけでも有効だが、発音も真似すると尚良い。発音が身に付けば、そもそもリスニングの練習をせずとも、頭の中に正しい音の流れを再現できるためだ。

「ビジネス英語を習得した」と言える水準は?

日本の社会人の間では、TOEICの点数が事実上の英語力測定器として広く流通している。

しかし点数が高いからと言って実戦的に即使えるかと言うとそうでもない。
点数が860点を超えてくると「ネイティブと問題なくコミュニケーションができるレベル」と言われるが、実際はネイティブレベルにはまだまだ遠いためだ。
実際にビジネスレベルの英語を使うには、何よりも「会話をどれだけこなしたか」に依存する。
あまり会話の経験のない900点と、会話を沢山こなしているが800点とを比べれば、ビジネスの場で頼りになるのは後者だ。

もちろん点数の高さはポテンシャルの高さでもあるので、英語での打ち合わせの場数さえこなせば、TOEICの点数の高い人ほど、どんどん成長する。
要は、生の英語に対し聞く(インプット)と喋る(アプトプット)をどれだけ繰り返したかが重要なのだ
長年使い続けたカタカナ英語の発音はそう変わらないし、そもそも口内の筋肉の運動そのものが日本語と異なるためネイティブの発音を再現するのは非常に難しいが、少なくとも英語の音に耳を慣らして正しい音の流れを頭の中に再現できるようになることは、今からでも十分可能だ。

そのためにも、やはり海外展開プロジェクトを探すなり志願するなりして、まずは現在の英語力にかかわらず飛び込んでみるのが重要となる。
会話の経験が少ないうちは、TOEICの点数が高かろうが拙い会話しかできないが、場数をこなすことで成長し適応していく。そうして英語の打ち合わせに参加することに抵抗がなくなった頃には「ビジネス英語を習得した」と言えるようになる。

日本人がよく想像するのが、ビジネス英語というと欧米人と流暢な英語で対等にビジネスをこなすシーンなのだが、実際はそうではない。
そういう人も確かに存在するが全体の一握りでにすぎず、大部分の日本人の英語話者は、拙いながらも身振り手振りを頑張って交えながらも、なんとかビジネス英会話をこなしているのが実情だ。
英語を用いてビジネスを行うということのハードルは、一般的に抱かれるイメージよりも実は低い。

なにもシリコンバレーで高度なエレベーターピッチ(数十秒程度の短いビジネストークで投資家の興味を惹くこと)を仕掛けろと言っているのではないのだから、不恰好でシドロモドロでも、目的(意思伝達、ひいてはシステム導入の完遂)さえ達成できれば良いのだ。

「不格好な英語をしゃべっている自分」という恥を一時的に許容する必要があるが、その山を越えることでいずれビジネス英語が習得されると言える。

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