なぜSAPやABAPには参考書が少ないのか(おススメ参考書も紹介)

SAP 業界・キャリア情報

SAPやABAP初学者によく質問を受けるのが、
「SAPについてまとまった知識を学べる参考書は無いですか?」
というものだ。

話を聞くと、大きな書店に行っても、これといったものが無いとのこと。

あるにはあるが入門編すぎたり広すぎたり、自分の今やっている実務にピンポイントで悩み解決してくれるものがない。

まあ、その感覚は間違っていないと思う。

他分野の技術書コーナーの充実っぷりに比べたら、これだけ世界中で導入されているERPパッケージの参考書が「え?これだけ?」となるのも無理はない。

今回は、なぜSAPやABAPの参考書が少ないか、そして少ない中でもおススメなものはないか、という点について考察していきたい。

SAPの参考書が少ない理由

理由① そもそも読者の絶対数が少ない

SAPの参考書を出版したとして、どういった人が読むだろうか。
つまり、SAPに少しでもかかわりがある人はどういった人たちだろうか?

【SAPのユーザ】
・SAPを導入した企業の一般社員
・SAPを導入した企業の経営者【SAPに関わるサービス提供者】
・SAPコンサルタント
・非技術職(ヘルプデスクなど)

・SAPを導入した企業の一般社員の場合

一般社員にとってSAPというのは、伝票を入力したり、支払いが滞っていないかを一覧で確認するためのツールにすぎず、わざわざ「これを勉強しよう!」とは思わない。

一人一人のユーザにとっては、使う範囲も限定されているし、導入時にベンダーが作ったマニュアルもあるし、そもそも興味が無い。

たまにIT活用に目覚めて、情報を欲している人も居るかもしれないが、そういうレア中のレアケースに対して書籍という媒体を使うのは、マーケティングとして正しいと言えないだろう。

・SAPを導入した企業の経営者の場合

データ活用にSAPをどう使ったらいいのかを勉強したい、と考える経営者は多いだろう。

しかし、そういった経営者はまずコンサルティングファームに相談すべきだということを知っており、本屋に行って勉強するということはしない。

・SAPコンサルタントの場合

初学者であれば需要はありそうだが、SAPコンサルタント自体の人数が少なすぎて、その中でも初学者向けとなると数が限られる。

そんななかで、必要な知識というのはモジュールによってさらに細分化される。出版部数は相当小さくなりそうだ。

OJTや社内資料、実機での習得の方が、学習効率も高い。

・非技術職(ヘルプデスクなど)の場合

ヘルプデスクや、あるいはユーザ企業のIT部門員などもこの立場に近いかもしれない。

しかし構築済みSAPは浅い所から深い所までユーザ企業向けにカスタムされており、こういった人たちが直面する個別具体の課題や疑問に答えていくのは、書籍媒体では難しい。

理由② 分野が広く、詳細化が難しい

SAPというのはERPパッケージソフトであるので、会社経営の大半の活動をカバーしている。

つまり、凄まじく範囲の広い、そして設定項目が膨大であるソフトということだ。

会社業務というのは非常に範囲が広く、そして深い。簿記を勉強したことがある方なら、経理業務だけとっても実に果てしないことが理解できるはずだ。

それを論点ごとに詳細化しようとすると、本を何冊出版しても足りないだろう。

理由③ 会社業務との密接な関係

SAPは、会社業務との密接なかかわりをもとに、各機能が作られている。

SAPの機能は、常に会社業務とセットで理解されるべきものだ。

SAP単体のシステム理解をしても片手落ちとなるし、そもそもそういったことは不可能だ。SAPは先に業務理解ありき、その後にSAPでどう実現するかという各種パラメータ設定の知識が付いてくる。

業務理解 ⇒SAP理解 ⇒各個別企業への適用

純粋にABAP技術者であればこの限りではないかもしれない。

しかし、結局SAPを解説しようと思うと業務知識ありきであり、参考書で業務知識もカバーしつつSAPを説明しようとすると分厚くなりすぎる。

何度も言うようだが、会社業務というのは非常に奥深く、SAPもそれに合わせて作られている。

それでもおススメと思われる参考書

かくして、色々なモジュールをカバーしつつ概要を説明した入門参考書ばかりになるというのは、対象ユーザを考えれば必然となる。

熟練コンサルタントも唸るような内容にしたければ、「困難な顧客要件に対してこう実現した」みたいな内容の書籍になるだろうが、マニアックすぎる。

しかし、それでもある程度おススメできる参考書はある。

・図解入門 よくわかる最新SAPの導入と運用

まず第一に、初学者がなぜかみんな行き着いて買っているのがこれだ。モジュールを広くカバーしており、まずSAPの全体感を掴むという意味では有効だ。

 

・SAP FI FINANCIAL ACCOUNTING ERP ECC6, R/3 4.70 (English Edition)

SAPの参考書が少ないというのはあくまで日本国内に限った話だ。

英語媒体では、モジュールごとに特化した参考書が存在する。こういったものを買って少しずつ読み進めていくのは、SAPコンサルタントにとっての積み上げにもなる。
(英語も勉強できるし、SAP各オブジェクトやトランザクションの英語名称をおさえておくことで、国際案件の話が来たときに応えやすくなる。バイリンガルコンサルタントは普通のコンサルよりかなり高い単価を獲得できる)

 

・ABAP to the Future (3rd edition updated and expanded)

次世代のSAP動向を勉強したいのであれば、ABAP to the Future (3rd edition updated and expanded)もおススメできる。
これも英語だが、2025年問題(現2027年問題)以降のSAP業界を技術者として生きていくのであれば、押さえておくべき重要知識が詰まっている。
本としては高いので注意。

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