以前の記事、【2025年問題】SAPエンジニアの今後の稼ぎ方では、ERPパッケージソフトのSAPにおける2025年問題について紹介させて頂いた。
現行で広く使われているバージョンである【SAP ERP6.0】が2025年でサポート切れを迎えると言われており、それまでに最新のSAPバージョンへの切り替えが必要となっていることを【2025年問題】と呼称していた。
ITに詳しくないひとは、WindowsXPやWindows7のサポート切れを思い浮かべてもらえれば分かりやすいですね。
あのときも企業が一斉にパソコンの入れ替えを行っていました。
このサポート切れ問題だが、2027年に延びた。
したがって【2025年問題】は【2027年問題】になった。
あら、そうなんですか。
もともと以前の記事でも記載していたが、サポート切れが明言されていたというより、「2025年12月31日までは提供しますよ、あとは決まってません」ということが言われていたというのが正確なところだ。また、事実上の現行バージョンである【SAP ERP6.0】も2015年にはサポート終了と言われていたが、10年延長されて2025年になり、さらに今回2年延長され2027年となったということだ。
おおー。なるほど。
ちなみにさらに延びる可能性はあるんでしょうか?
それはユーザ企業が最新バージョンである【S/4 HANA】にどれだけ移行が進むかということも加味して決定されるだろう。
思ったよりも移行速度が鈍いのでしょうか。
SAP社の期待値がどれほどなのかは不明だから何とも言えない。
しかし、既に2025年を目指して移行を精力的に進め、それに向けた事業ロードマップを描いている企業も多い。
そうした企業は肩透かしを食らった気分なのではないでしょうか。
そう考えるIT担当者もいるだろうが、肩透かしを食らったと考えるのは少し違うというのが個人的意見だ。
まず、次世代システムへの乗り換えというのは、早く済ませれば済ませるほど競争力が高まる。
なるほど。「なんだよ、急いで損した」と思う必要はないわけですね。
そうだ。
最も移行が活発化すると考えられる2025年~2027年において、システム移行のために体力を割かねばならない他社と比較し、既に移行済みの企業はリソース的なアドバンテージを得ることになる。
システム移行のためには、各部門から優秀な人材を供出しシステムデザインフェーズのリソースに充てなければならない。システム移行というのは、金銭面以上に、そうした負担についても無視できない。
他がシステム移行でヒイヒイ言っている中、もう済ませている企業は悠々と本業に打ち込めますね。
もし今、ユーザ企業がまた計画策定段階にあるとしたら、2年の延長というのははっきりいってさほどのロスタイム延長とはならない。引き続き、ロードマップ策定努力を続けていかなければ、あっというまに過ぎ去ってしまう期間だ。
ユーザ企業は今後、どのように対応していったら良いんですかね。
すでに移行計画を立ち上げ始めている企業であれば、その手は緩めずに早めの移行を行うことをお勧めしたい。
一方、まだ見通しも立っていない企業については、2年延びたことは朗報になるにはなるが、油断できるような年数ではないので、早めに計画を立ち上げるべきだ。
すでに移行してしまった企業については、あまり関係ないですよね。
先ほども言った通り、もう移行を済ませてしまった企業にとっては、他社に先んじて次世代システムを活用し、事業のために活用の幅を拡張していくフェーズに入っている。先行者としてのアドバンテージを得ているわけだ。
他社が今回の事で移行の手を緩めるのであれば、それはすでに移行済みの企業にとっては追い風となる。
ところで、現行はSAPを使っていても、別のERPパッケージに乗り換えるというユーザ企業も出てくるのではないでしょうか。
皆が皆、【S/4 HANA】に移行するわけではないですよね。
もちろんそういうところもある。SAPを使うのをやめた、という企業だって多数ある。
自分の事業形態に合わせて、最適なツールを選ぶということは常に必要だ。しかし、SAPほどの規模と堅牢なシステムを持つERPパッケージというと、乗り換え先も限られてしまうというのもある。
なるほど。全く違うプラットフォームに移行すると、それまでのノウハウなんかも変わってしまうことにもなりますし、現行でSAPユーザなのであれば【S/4 HANA】に移行するのが自然かもしれません。
【S/4 HANA】は次世代を謳うだけあり、高速で強力なHANA DBを用いた大量データのリアルタイム処理や、ビジネスプロセスのシンプル化、Fioriによるマルチデバイス対応など、迅速な経営判断に有効となるメリットを多く打ち出している。
次世代への移行は、大規模なデータ処理を背景にした経営判断や、大規模データから学習を行い経営判断に活かすAIの導入などの布石ともなる。
移行を早めに済ませたところが、優位に立てるということですよね。
そうだ。SAPの移行自体は、ゴールではなく、次世代のIT活用のための布石でしかない。
AIがビジネスを支配する時代はすでに来ているので、システム投資により自社のプラットフォームをアップデートしていかないと、急激な時代の変化に乗り遅れてしまうことにもなりかねない。
古いシステムのままだと、選択肢が狭まってしまいますよね。
いまだに日次とか月次のデータ連携だと、その月の決算締めをするまで会社の業績がわからなかったり……。
次世代システムのデザインをよく吟味して、早めに移行するに越したことはないですね。
そういうわけだ。
ユーザ企業各社は、今後も移行に向けたIT投資を継続した方がよさそう、という見通しだな。
それでは、今回はここまでにしよう。