【2025年問題】SAPエンジニアの今後の稼ぎ方

SAP 業界・キャリア情報

今が売り時、SAPエンジニア

みる子
みる子

SAP技術者の単価がどんどん上がっており、人材争奪戦の様相を呈している。
知り合いがとあるユーザー企業のSAP保守プロジェクトのマネージャーをやっているのだが、上流工程の担当が欲しいと思って募集をかけても、何か月も見つからない。

残業ペンギン
残業ペンギン

人手不足なんでしょうか。

みる子
みる子

曰く、見つかっても以下の2パターンらしい。
①上流工程の一歩手前みたいな人材なので、領域を任せるのが心許ない。また、スキルに対し単価が高すぎる。
②スキル的には十分マッチするが、単価が200万を超えるので断念。

残業ペンギン
残業ペンギン

2パターンと言いつつ、どちらも単価が高いのは共通していますね。

みる子
みる子

その通り。今現在、相場が上がっており、この状況は今後もしばらく続くことになる。
上記のような人材はすぐどこかのプロジェクトが持って行ってしまい、抱え込まれてなかなか離さない。

残業ペンギン
残業ペンギン

お知り合いの保守プロジェクトのマネージャーさんも、他プロジェクトと同じく高い単価を出して雇うわけにはいかないのでしょうか。

みる子
みる子

保守プロジェクトというのはシステム維持フェーズに入っているので、ユーザ企業も多額の追加投資をする気はサラサラない。また、数年単位で単価を取り決めて契約をしているので、単価が高騰してきても保守ベンダーは限られた予算内でやりくりするしかない。よって、高い単価のエンジニアを雇うことが出来ない。

残業ペンギン
残業ペンギン

あー、そうですよね。保守フェーズに入っているシステムは、安定稼働していけば維持工数は下がっていくはずですから、顧客企業だって維持費が上がるの嫌がりますよ。

みる子
みる子

まあ、実際には保守フェーズだからと言って安定しているわけではなく、法対応や制度改定、社内プロセスの変更、商流変更などでゴリゴリとシステム変更が入るし、そういったなかで上流工程レベルの分析やコンサルティングを必要とするものもたくさんある。
しかし、そのあたりをユーザ企業のIT部(とくに上層部)があまり理解していないと、人材投入を渋ったり、なんなら「現場の保守要員で出来るでしょ?」みたいな事を言い始める。構築フェーズとは上流・下流の人材配置が異なることを理解していない

残業ペンギン
残業ペンギン

そういう乖離ってよくありますよね。

みる子
みる子

そうして巨大でブラックボックスな現行システムと、複雑でフワっとした要件を延々と擦り合わせる保守現場のマネージャーが生まれるわけだ。心を病んでリタイヤする人間が多いのも頷ける。

残業ペンギン
残業ペンギン

そのマネージャーが潰れたら一番困るのはユーザ企業だと思うんですけどねえ。「この人いなくなったら本当にこのシステム崩壊するぞ」っていうレベルの人、結構いますよ。

みる子
みる子

ユーザ企業にとってはシステムは動いて当たり前だし、ベンダーのマネージャーひとり潰れたところで「早く新しい奴を連れてこい」で終わりだ。

 

残業ペンギン
残業ペンギン

報われませんねー。

みる子
みる子

そんなわけで、潰れるくらいだったら、フリーランスになって別の働き方をすることをお勧めしたい。
SAPエンジニアで上流工程が担当できれば、今は引く手あまただからだ。

残業ペンギン
残業ペンギン

なんでそんなに人材争奪戦が過熱しているんでしょうか?
そんなに単価が上がっているのは、何か理由があるんですよね。

みる子
みる子

SAPエンジニアの単価を跳ね上げている原因、それは【2025年問題】だ。

残業ペンギン
残業ペンギン

2025年問題!?

2025年問題とは

みる子
みる子

2025年問題とは、簡単に言うとSAPの現行バージョンである【SAP ERP6.0】を含むいくつかの製品について、SAP社が2025年にサポート提供を終了すると言われており、SAPを導入している各企業は次世代SAPである【S/4 HANA】への移行を迫られているということだ。

残業ペンギン
残業ペンギン

おお、サポート終了となるとシステム更新を急がないとですね。でもあと5年しかないのに、間に合うんでしょうか。SAPってERPソフトの中では最大シェアですよね。導入している企業はめちゃくちゃ多いですよ。

みる子
みる子

まあ、実際にはサポート終了するというよりも、「2025年12月31日まで<>提供しますよ、あとは決まってません」ということらしい。実際、【SAP ERP6.0】も2015年にはサポート終了と言われていたが、10年延長された。

残業ペンギン
残業ペンギン

あら、そうなんですね。どうして延長したんでしょうか?

みる子
みる子

色々要因があると思うが、移行準備を整えることが出来る企業が僅かだったと推測される。また、次世代バージョンである【S/4 HANA】の最初のリリースは2015年に入ってからだったし、まずは会計領域のみのリリースだった。そこから5年かけて何度もバージョン更新をしており、機能拡充をしていっている。

残業ペンギン
残業ペンギン

なるほど、それでサポート期間が2025年までとなったことから、いま「2025年問題」としてホットな話題になっているわけですね。

みる子
みる子

その通り。2025年を迎える前に、日本国内においてもSAPシステム刷新プロジェクトが続々と動き始めている。そして、それには大量の人材が必要となるので、SAPエンジニアは引く手あまたとなる。そうして人材獲得競争が過熱し、単価も釣り上がっていくわけだ。

残業ペンギン
残業ペンギン

ユーザ企業もシステム刷新プロジェクトには前向きなんですね。

みる子
みる子

【S/4 HANA】は次世代を謳っているだけあって、高速で強力なHANA DBを用いた大量データのリアルタイム処理や、ビジネスプロセスのシンプル化、Fioriによるマルチデバイス対応など、迅速な経営判断に有効となるメリットを多く打ち出している。ITを活用した強い経営を目指す企業であれば、IT投資のモチベーションは自ずと高くなる。

残業ペンギン
残業ペンギン

なるほど。そんなわけで次世代システム導入プロジェクトに人を多く取られて、一方で保守プロジェクトなんかはなかなか人材が集まらないわけですね。

みる子
みる子

そういうことだ。IT投資のモチベーションが低い企業、または内部のIT人材の不足などを要因としてIT投資が上手くない企業は、いまだにメインフレームやSAP前世代の【SAP R/3】が現役でバリバリ稼働している。
もっとひどい所では、内部のIT人材の不足から、よくわからないインチキコンサルを雇い入れてしまい、そいつに乗せられるがまま「よくわからないけどとりあえずコスト削減!w」とやってナレッジも人材も失っていっている企業もある。

残業ペンギン
残業ペンギン

IT業界あるあるですね。
メインフレームがまだ元気にやっている企業は多いですよ。
ブラックボックス化しているうえに、いつポックリ逝くかわからないのに……。

みる子
みる子

まあ、かつて日本全体がIT革命に乗り遅れてしまったがゆえの「あるある」かもしれないが、今回の2025年問題をしっかり乗り越えて、企業体力に資するシステムとその運用体系を獲得してほしいものだ。
そして、その導入を支えるのがSAPエンジニアであり、社会的意義も非常に大きい

SAPエンジニアとしての今後の稼ぎ方

残業ペンギン
残業ペンギン

いまは各所で【S/4 HANA】への刷新プロジェクトが立ち上がっているのですよね。
いちはやくHANAの技術に適合したエンジニアだけがプロジェクトに参加できるのでしょうか。

みる子
みる子

いや、そうではない。【S/4 HANA】は次世代バージョンとはいえ、いままでのSAPの流れをくんでいるので、移行にあたっては既存技術を持つエンジニアも多く必要となる。現行バージョンのアドオンなどは、そのまま使えるわけではなく、HANA DBの特性に合わせた作り替えなども必要になる。つまり、現行の技術を知っており、SAPを使ったユーザ企業の業務について理解している技術者が必要になってくるわけだ。

残業ペンギン
残業ペンギン

なるほど、完全新規ではなく、今までの技術プラットフォームの延長でもあるわけですね。

みる子
みる子

【S/4 HANA】導入にあたって、単なるプラットフォーム移行にとどまらず、企業内プロセスを統合したり見直したりして、より効率的な経営とそれに適合したシステムを導入したいという要望も数多くある。SAPエンジニアで、いままで要件定義以上の上流工程をこなしてきた人材が多く必要になる理由がそこにある。よって、今まで上流工程をこなしてきた経験が、高い単価を以て売ることができるようになったというわけだ。

残業ペンギン
残業ペンギン

そんな業界動向になっていたとは……。
でも、新しい技術への適合も必要ですよね。次世代っていうくらいだから、いろいろな仕組みが変わってしまっていますよね。

みる子
みる子

その通り。既存技術を持つエンジニアは、【S/4 HANA】導入プロジェクトで新規技術を獲得していくことになるだろう。
ただし、永年SIer文化にどっぷりはまってしまっていた上流工程担当者は、技術のキャッチアップに疎い部分があり、ここで苦労することになるかもしれない。
とくにSAPを長く担当していた人にとっては、新しいツールや考え方、概念が多く登場し、これらを押さえておかないと今後は下流工程技術者に指示を出すのが難しくなったり、次世代プラットフォームに適合した効率的なシステム設計が出来なくなってしまうからだ。

残業ペンギン
残業ペンギン

SAPもそうですが、SIer業界というのは大規模かつ安定したシステムを導入する必要がありますから、枯れた技術を用いてシステムを構築することが多く、SIer系の技術者もそれほど頻繁に技術のキャッチアップを迫られることはありません。
この点は技術の流行り廃りが早く、常に勉強を求められるWeb系エンジニアと対比的です。

みる子
みる子

事実、【S/4 HANA】の初期リリースから5年が経っているが、用いられている技術はどんどん更新されていっている。
いまSAPエンジニアをやっている人、とくに上流工程を担当していた人は考え方の転換が求められるだろう。
逆に、いままでWeb系技術に触れてきた人であればナレッジベースがある領域が多く、適合しやすいと言える。

残業ペンギン
残業ペンギン

具体的にはどういったものにキャッチアップしていけば良いんでしょうか?

みる子
みる子

そうだな。個々の技術に触れているとそれぞれで一記事書けてしまうボリュームなので別途まとめるとして、コンセプト的な部分を説明しよう。今まで上流工程を担当していたSAPエンジニアが、今後も稼ぎを向上させていくためには押さえておくべきポイントだ。

SAPUI5

みる子
みる子

SAPUI5とは、「SAP UI Development Toolkit for HTML5」のことで、HTML5をベースとしたユーザインタフェースの開発フレームワークだ。HTML5を使って、モバイルを含むあらゆるデバイス上で動作するユーザインタフェースを実現することは、SAP社は「ユーザエクスペリエンスの向上」と表現しており、次世代SAPの基軸コンセプトの一つだ。

残業ペンギン
残業ペンギン

ユーザインタフェース、つまりユーザがSAPを利用する方法そのものとも言えますが、それを大きく変えるのは結構な転換ですね。

みる子
みる子

今までは、SAP GUIと言って、PC上で動作するフロントエンドを通してSAPアプリケーションの各機能を利用したりデータを参照・集計する仕組みで、デバイス依存だった。これはSAPユーザの利用シーンが、会社に出勤し、デスクに向き合い、パソコンを起動して仕事を始めるという想定だったからだ。
しかし、スマホやタブレットなどモバイルデバイスの普及により、仕事のスタイルやビジネスモデルそのものが速いスピードで変化していっており、それに対応したリアルタイム性の高いユーザインタフェースが求められるようになった。

残業ペンギン
残業ペンギン

営業先で会社のデータを見るのに、いちいちPC起動するのではなく、スマホからパッと見れる仕組みが欲しいですよね。

みる子
みる子

画面の使いやすさなども今後はシンプル化、直観性、操作性向上を目指して設計されるようになる。
SAP GUIは複雑化した様々なビジネス要件に対応できるように拡張を繰り返しており、トランザクション画面にはボタンやメニューがめちゃくちゃ多く、日本のユーザからは「画面に威圧感がある」と言われるほどだ。顧客単体で見れば、一度も押さないボタンの方が圧倒的に多い。ユーザインタフェースの刷新により、このような画面のシンプル化も図っていく。
今までは画面設計というのは、アドオンでは項目の並び程度しか意識することがなく優先度も低かったが、今後はユーザビリティを重視し、画面開発がまず先頭に立つようになる。

残業ペンギン
残業ペンギン

HTML5やJavaの技術的背景、そしてなによりSAPUI5という統合環境への適応が必要になってきそうですね。
いまはWebエンジニア向けのプログラミングスクールが人気を博していますが、SIer系の上流工程担当していた中堅層が、そういったスクールに通い始めることもあるかもしれませんね。

みる子
みる子

そうだな。画面技術としてHTML5、JavaScript、CSSなどのオープン系技術を採用し、従来のABAPで記述するビジネスロジックはバックエンドで動作するという切り分けについては、まず意識しておく必要がある。
しかし、ユーザインタフェースについては結構SAPエンジニアが軽視してきた部分でもあるので、その発想を引きずったまま仕事をし続けてしまう可能性がある。しかし、SAP社自らが次世代SAP戦略の基軸としているので、決して軽視できない部分であることは知っておこう。

 

残業ペンギン
残業ペンギン

っていうか知らないと肝心の設計が出来なさそうですね。

開発スタイルの変化

みる子
みる子

変化の速いビジネスに追いつくためには、今後は開発作業の一層の効率化と、小規模案件の持続的改修をアジャイル的に行っていく開発スタイルの変更を迫られる。

残業ペンギン
残業ペンギン

具体的にはどんな風に変わるのでしょうか。

みる子
みる子

例えば、今までは個々のユーザが画面を使いづらいと思っていても、SAP標準だからと言って対応優先度は低かった。しかし今後はユーザエクスペリエンスの向上に伴い、ユーザのビジネスに適合した流れるような操作性を実現することにも注力していかなければならない。ユーザのビジネスは変化するし、ビジネスシーンに応じた利便性や操作性を追求すると、細かい調整や修正が必要となり、一度決めた要件を変更できないウォーターフォールモデルを採用することの限界が出る。

残業ペンギン
残業ペンギン

ユーザフロントの部分は、SAPだけではなくて他の技術革新にも影響されて、機能追加要望が高まりそうですね。

みる子
みる子

ABAPで記述されるバックエンドのビジネスロジックと、フロントエンドをしっかり分離しておかないと、フロントエンドの変更に合わせてビジネスロジックも変更を強いられることになる。
また、フロントエンドだけではなく、従来のABAP開発に関しても変わっていく点が多い。

残業ペンギン
残業ペンギン

なるほど、ABAPでの開発自体も、従来の開発手法とは変わる部分が出てくると。

みる子
みる子

いままでABAPのソースコード記述はSAP GUI上のソースコード管理画面(Tr:SE38等)から実行していたが、今後はEclipse上で記述を行うこととなる。また、Gitを使ったソースコード管理を行うなど、いままではSAP GUIの中で完結していた諸手続きを外部のプラットフォーム上で実施することになる。手になじむSAP GUIから離れることになるが、結果的に開発効率を向上させるために必要なこととなる。

残業ペンギン
残業ペンギン

EclipseもSAPエンジニアは馴染みがない人が多そうですね。

SAPエンジニアの今後

みる子
みる子

2025年問題は、ユーザ企業だけでなく技術者自身の問題でもあることを認識し、勉強をしていく必要がある。
また、2025年問題に備えたSAP刷新プロジェクトに参加できるよう、異動希望などを出していくことも必要だ。

残業ペンギン
残業ペンギン

SAPエンジニアを長く続けている人ほど、今回は転換点になりそうですね。
あと、これからSAPエンジニアを始めようという人も、先入観なく始められるのでチャンスがあると。
人手不足なので、多少経験が浅くてもどこかのプロジェクトには入れそうです。

みる子
みる子

そういうことだな。ぜひこの波に乗って稼げるSAPエンジニアが輩出されることを願う。
それでは、今回はここまでにしよう。

残業ペンギン
残業ペンギン

ありがとうございました。

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現役SAPコンサルタントである筆者が、国内・海外のシステムベンダー、コンサルティングファーム、監査会社その他を含め、おそらく数百人単位でSAPコンサルタント・エンジニアを見てきた経験から、どのようにSAPエンジニア・コンサルタントになり、どのようにキャリアを積んだら良いのかを紹介する。

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