S/4 HANAでは得意先マスタ・仕入先マスタがBP(Business Partner)に統合された。
これに伴い、BPロールの考え方や従来と異なる画面制御などが導入され、ERP6.0に慣れているとBPになかなか馴染めないという技術者も多いのではないかと思われる。
今回は主にERP6.0で得意先・仕入先を扱っていたSAPコンサルタントの目線を踏まえつつ、BPの考え方や従来からの変更点、BPのカスタマイズ、およびBPにおける画面制御の概要について解説する。
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BPの概要
BPとは
BP(Business Partner)は読んで字のごとく取引先のことで、個人・組織・グループを表すマスタとして登録できる。
BPには「BPロール」を割り当てる。(デフォルトが「000000 ビジネスパートナ(一般)」)
BPロールは多様に定義されており、仕入先や得意先といった役割だけでなく、「代理店」「仲介業者」「保証人」といったロールも標準設定内に存在する。
一つのBPに対し、複数のBPロールを拡張することができる。
Tr:BPから登録・変更・照会のすべてを実行する。
従来の得意先・仕入先マスタはどのように統合されたか
S/4 HANAから得意先マスタ・仕入先マスタは「BPマスタ」として統合された。
これにより、得意先・仕入先を同一のBPオブジェクトとして扱うことが出来るようになった。
ひとつの取引先が得意先にも仕入先にもなり得る場合、それを単一のBPとして扱い、一つのBPコードに対して得意先・仕入先のBPロールの両方を拡張する、といった形で登録する。
一方、従来の考え方のように得意先・仕入先で別々にBPコードを採番し、別個のものとして扱うことも仕組み上は可能となっている。
得意先・仕入先のBPロール
BP画面から得意先・仕入先を登録する(=BPを得意先や仕入先として拡張する)場合、以下の標準のBPロールを選択することで、従来の得意先・仕入先と同等の働きをするオブジェクトを登録できる。
・FLCU00 得意先(財務会計)
⇒従来の得意先会社ビュー
・FLCU01 得意先
⇒従来の得意先 販売組織ビュー
・FLVN00 サプライヤ(財務会計)
⇒従来の仕入先 会社ビュー
・FLVN01 サプライヤ
⇒従来の仕入先 購買組織ビュー
・UKM000 SAP Credit Management
⇒従来の得意先与信管理
従来の得意先・仕入先トランザクションは廃止
以下のようなトランザクションはERP6.0では馴染み深いものだったが、S/4オンプレで実行すると「(該当トランザクション)が無効なためトランザクションBPにリダイレクト中」といったメッセージが表示される。
廃止されたトランザクションの例
・Tr:VD01 得意先登録
・Tr:XD01 得意先登録(会社コード)
・Tr:MK01 仕入先登録
・Tr:XK01 仕入先登録(会社コード)
得意先・仕入先のテーブルは健在
ERP6.0まででも馴染み深い以下のテーブルはBP統合後も健在で、引き続きこれらのテーブルに対し情報が更新される。
・得意先関連テーブル
KNA1、KNB1、KNVV、KNVP、KNVI等
・仕入先関連テーブル
LFA1、LFB1、LFM1、WYT3、LFBK等
BPマスタ自体のテーブルも存在し、一般データは「BUT000(BP:一般データ)」に、BPに対して拡張したロール情報は「BUT100(BP:役割)」にそれぞれ格納される。
BPに関わるカスタマイズ
BPの基本設定
BPロール
・定義:BPロール(SPRO)
基本的に得意先・仕入先マスタを運用するだけであれば、使用するBPロールは限られており、新規でBPロールを登録するような要件はあまり無いと思われる。
画面制御ごと変更したい等の要件があれば、新規設定を行う場合もあるかもしれない。
番号範囲とグルーピング
・定義:番号範囲(Tr:BUCF)
BPマスタの番号の取りうる範囲を定義する。
外部採番をする場合は外部採番にチェックを入れる。
・定義:グルーピング(SPRO)
グルーピングのIDを定義し、グルーピングに対して番号範囲を割り当てる。
グルーピングは、BPを登録する際に割り当てを行う。
BPの種別を分けたい(特に番号体系で分けたい)場合や、勘定グループを分けたい場合に使えるカスタマイズ。
勘定グループの割当
以下のカスタマイズにて、グルーピングに対して勘定グループの割り当てを行う。
【SPRO >クロスアプリケーションコンポーネント >マスタデータ同期 >得意先/仕入先統合 >ビジネスパートナ設定 >得意先統合設定 >得意先統合の項目割当 >キー割り当て >定義:番号割当:ビジネスパートナ->得意先】
【SPRO >クロスアプリケーションコンポーネント >マスタデータ同期 >得意先/仕入先統合 >ビジネスパートナ設定 >仕入先統合設定 >仕入先統合の項目割当 >キー割り当て >定義:番号割当:ビジネスパートナ->仕入先】
従来、得意先勘定グループや仕入先勘定グループは、得意先マスタ・仕入先マスタの登録時にそれぞれ割当を行うものだったが、S/4ではグルーピングを介してBPに割り当てるようなイメージ。
BPの画面制御
BPの画面のオブジェクト
BPの画面制御には主に以下のようなオブジェクトが関わっている。
これらの紐付きやオブジェクトごとの設定により、BP画面での項目表示などを制御している。
・画面
・セクション
・ビュー
・項目グループ
・項目
画面順序に画面を、画面にセクションをというようにオブジェクト同士を割り当てていく。
このオブジェクト間の関係を図示すると以下のような割当関係となる。
割当は以下トランザクションから実施する。
・Tr:BUSD (BPビューに画面順序カテゴリを割当てる)
・Tr:BUS6 (画面順序に画面を割当てる・画面順序カテゴリに画面順序を割当てる)
・Tr:BUS5 (画面にセクションを割当てる)
・Tr:BUS4 (セクションにビューを割当てる)
・Tr:BUS3 (ビューに項目グループを割当てる)
・Tr:BUS2 (項目グループに項目を割当てる)
割当関係を示す標準テーブルは以下の通り。
・Table:TBZ3N
・Table:TBZ3K
・Table:TBZ3I
・Table:TBZ3H
・Table:TBZ3S
・Table:TBZ3R
テーブル上でオブジェクト間の関係を見る時は、ここでのキー項目の一つ「Application Object」に”BUPA”(Business Partner)を主に指定して調べることとなる。
BPの画面上で、画面左上のコマンドボックスに”BDT_ANALYZER”と入力すると、「BDTアナライザー」というポップアップ画面が出る。
このポップアップでは、画面順序・画面・セクション・ビュー・項目グループ・項目のつながりをツリー形式で表示してくれる。
各項目がどの画面制御に紐づいているのかを確認するのに便利。
BP画面項目の表示/非表示
BP画面項目の項目ステータスの制御は、技術的背景がけっこう複雑なようで、一つの項目に対し複数の設定が効いている場合がある。一か所の設定を変えても反映されない、といった現象に遭遇した場合、前述の画面オブジェクト(主に項目グループ)や下記のカスタマイズ箇所をよく調べる必要がある。
表示・非表示の制御は主に以下のカスタマイズによって行う。
項目を指定する際に、正しい項目グループ下で設定を行っているかに注意する。
・V_TB102_2 クライアント – 項目グループ
・V_TB108 BPロール – 項目グループ
・V_TB105 アクティビティ – 項目グループ
・V_TB004_2 パートナータイプ – 項目グループ
このトランザクションでは、テーブル・項目IDを指定して、各カスタマイズで該当項目に対してどのような項目属性の制御(必須/表示/非表示/未定義)をかけているかを一覧表示してくれる。
捕捉:グルーピングの項目がBP画面(変更/照会時)で表示されない
BP登録時の第一画面にて、BPの「グルーピング」という項目をまず指定することになる。
この項目が、後から変更/照会画面で見ようと思っても項目が非表示となっており確認できないということがある。
この場合、【メニュー >補足 >登録/変更】と辿るとグルーピングを確認できる画面を表示できる。
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