SAPにおける国際アドレスバージョンとは、仕入先・得意先マスタといった住所を保持するマスタに対し、言語別の住所登録を可能とする機能だ。
国際的な取引が一般的となった昨今、海外の住所情報をシステム上に保持することは必須であり、エアメールなどを出す際にも、住所情報は相手国の公用語で書かなければ届かない。
今回はSAPの国際アドレスバージョンについて有効化方法やマスタ登録方法を解説する。
SAPの国際アドレスバージョンについて解説
SAPで保持している住所情報(Table:ADRC)
SAPの住所情報は「アドレス番号」という番号によって保持されており、仕入先や得意先を登録する際に、このアドレス番号が付番される。
例えば仕入先マスタであればテーブルLFA1上に項目「アドレス番号」を持っている。
アドレス番号は標準テーブルADRCの主キーであり、ADRCに住所情報の文字列が格納されている。
さて、テーブルADRCのキー項目は「アドレス番号」だけでなく、「開始日」「アドレスVersion(技術名称:NATION)」という項目も存在する。
「アドレスVersion」こそが国際アドレスバージョンで、一つのアドレス番号に対し、複数の言語のバリエーションによる住所登録を可能としている。
国際アドレスバージョンの有効化(Tr:SA09)
国際アドレスバージョンはTr:SA09から有効化する。
国際アドレスバージョンの種類は以下の通り。それぞれにチェックボックスがあり、有効化したい言語にチェックを入れることで有効化する。
A アラビア語
B ヘブライ語
C 中国語
G ギリシャ語
H ハングル文字
I 国際版
K 漢字
M 中国語
N カタカナ
R ロシア語
T タイ語
また、アドレス番号の採番のために、Tr:SA01から番号範囲オブジェクトも登録が必要。
仕入先、得意先の多言語住所登録
仕入先または得意先マスタの住所登録を行う時(変更画面からも可能)、「国際バージョン」のボタンをクリックする。
どの国際アドレスバージョンに対して登録するのかを選択し、追加住所登録の画面に遷移する。
該当の住所情報が、テーブルADRC上で、選択した「アドレスVersion」をキーとして登録される。
ちなみにデフォルトの住所はテーブルADRC上では「アドレスVersion」は空白で登録される。
アドレス取得の際の注意点
いったん国際アドレスバージョンが有効化されると、テーブルADRCから住所情報を取得する際は、アドレスVersionの値も指定しなければならなくなる。
アドオンなどでADRCから直接取得している場合で、キーの指定が無いのであれば該当箇所の修正が必要となる。