SAPの固定資産モジュール(FI-AA)において、資産マスタ(Tr:AS03 照会)のリースタブに「現在価値(PV)」という項目がある。
固定資産の対応をしていてよく要望を受けるのが、
「リース資産の一覧をエクセルに抽出した時に、現在価値も一緒に載せてほしい」
というものだ。
現在価値はマスタ画面上の項目なので、一見するとテーブルから抽出できるように思えてしまう。
しかしながら、これは都度計算して表示している項目に過ぎないので、実はDBテーブル上に保持していない。
したがって残念ながら単純抽出が出来ない。
(筆者が知る限り、テーブルANLA、ANLPなどには無い)
しかし、こういった際には、エクセル上でPV関数を使うことで、簡単に現在価値を求めることが出来る。
PV関数の使い方
エクセルレイアウト
まずPV関数を使うためのエクセルを用意する。
資産マスタ一覧を抽出した想定のエクセルとする。関数のための必要項目のみ列挙する。
SAPから少なくとも以下の項目を抽出しておく。
・A列 ANLA-ANLN1 資産番号
・B列 ANLA-ANLN2 資産補助番号
・C列 ANLA-LZINS 年利
・D列 ANLA-LRYTH 支払周期
・E列 ANLA-LEANZ リース支払回数
・F列 ANLA-LEGEB リース支払
PV関数の引数
PV関数の引数は【利率】【期間】【定期支払額】【*将来価値】【*支払期日】の4つとなっている。
【*将来価値】と【*支払期日】は入力しなくても問題ない。SAPの資産マスタ上の計算結果とも一致する。
次に、PV関数の各引数に対して当てはめていくべき値を説明する。
引数:利率
【引数:利率】には、SAP資産マスタ上のリースタブにおける「年利」を当てはめる。
年一回払いしか無いのであれば「年利」のセルをそのまま参照しても良い。
・支払周期に注意
ただし、月払いであれば一年に12回支払いがある。一月当たりの利率は【年利÷12】となるので注意が必要。
リース資産によってそれぞれ異なる支払周期を持つため、「年利」に「支払周期」の概念を加えた値を【引数:利率】に渡す必要がある。
「支払周期」は年払いなのか、半年払いなのか、四半期払いなのか、月払いなのかを表すパラメータだ。
支払周期06 ⇒06ヶ月に一回の支払い、つまり年間02回払い
支払周期01 ⇒01ヶ月に一回の支払い、つまり年間12回払い
・支払周期を加味した計算式
年に何回払いなのかによって、年率の割り方が決まる。年1回だったら1で割り、年2回だったら2で割り、年12回だったら12で割る。
つまり計算式としては以下のようになる。
年あたり支払回数は以下のように求めることが出来る。
以上をまとめるとこうなる。
・100分率にも注意
SAPの「年利」の項目は%表示のため、エクセルに渡す際は100で割ってやる必要がある。
よって最終的に【引数:利率】に渡すべき値は下記の計算式となる。
・エクセル上の計算式の記述
ちなみに列の絶対参照は付けても付けなくても、今回はどちらでもいい。
引数:期間
【引数:期間】はリース期間を引数として渡す項目となる。
SAP画面上では、「リース支払回数」がそれにあたる。
※SAP画面上の「リース期間」の方が該当しそうだが、これはSAP画面上の現在価値計算には考慮されていないようだ。
・エクセル上の記述
単純に$E2を参照するよう記述すれば良い。
引数:定期支払額
【引数:定期支払額】は一回当たりのリース料を引数として渡す項目となる。
SAP画面上では、「リース支払」がそれにあたる。
・エクセル上の記述
単純に$F2を参照するのだが、支払なので金額にマイナス符号を付ける必要がある。
よってエクセル上は「-$F2」とする。
まとめ
最終的には、エクセル上に以下の関数が入力されることになる。
これにより現在価値が求められる。あとはリスト全ての行にこの関数を適用すればいい。