【SAP CO知識】内部指図について分かりやすく解説

SAP CO

内部指図(Internal Order)とはSAPで使用するコストオブジェクトの一つで、費用項目の集計と決済処理に使用することができる。

今回は内部指図の用途、運用方法、カスタマイズ等について解説する。

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内部指図について分かりやすく解説

内部指図の用途

内部指図はコストオブジェクトの一つで、費用の計上先として使用できる。
内部指図を現実の何に見立てるかによって、その用途や管理方法は様々だ。

例えば以下のような使用方法がある。

内部指図の使用例
・内部指図一つ一つを生産工程を表すものとみなし、工程ごとの費用計上先として使用する。次の工程へ移る際は計上されたコストを決済し、振替を行う。
・内部指図を、何らかの業務上のプロセス(生産工程以外でも)を行う際の原価管理オブジェクトとして使用する。設備投資、販売活動にかかる費用、クレーム処理や製品修理にかかる費用といった、プロセスや案件に対応するものとして使用する。
・内部指図を一つの生産ロットとみなし、個別受注生産にかかる諸費用の計上先として使用する。該当受注の生産が完了し、製品を払い出す際には、指図の決済を行うことで売上原価を計上する。

生産工程や個別原価計算に対応させる使い方は、PPやSDを導入していれば必ずしも内部指図を使う必要はない。
ただ、「FI/COのみ導入しておりロジスティクスモジュールは使用していない」というユーザ企業も多く、原価を集積するオブジェクトとしてこういった使い方を採用しているケースもある。

また、原価センタなどと同じく、予実管理にも使用する。

内部指図のカスタマイズ

定義:指図タイプ(Tr:KOT2_OPA)

指図タイプとは、指図の種類を区分けするためのパラメータで、内部指図の用途(例えば設備投資用、プロモーション用、保全・修繕用、製造用、など)に応じて指図タイプを使い分ける

指図タイプに対しては、以下のようなパラメータを設定する。

指図タイプのカスタマイズ
・番号範囲
・各種プロファイル(決済プロファイルやステータスプロファイル等)
・指図ステータスの即時リリースを行うかどうか(登録と同時にステータスをRELにする)
・画面レイアウト
・分類フラグ:指図上で分類(特性入力)を有効にするかどうか
・未確定債務フラグ:発注、依頼などで、まだFIの債務として転記されていない状態でも、将来の債務発生として分析可能とする
・収益転記フラグ:収益勘定の転記を可能とする

※指図カテゴリについて
指図カテゴリは、どのモジュールにおける指図なのかを表す。

指図はCOのみならず様々なモジュールで使用されている。
内部指図は管理会計用だが、他にもPPの製造指図、PP-PIのプロセス指図、繰返生産などに使用できる製品原価コレクタ、といった指図がある。

内部指図は指図カテゴリ「”1″(内部指図(管理会計))」となっている。

定義:ステータスプロファイル(Tr:OK02)

指図に対して割り当てるステータスプロファイルを定義する。
任意のユーザステータスを設定することで、指図のステータスを利用した進捗の管理を行うことができる。

定義:指図レイアウト(Tr:SPRO)

以下カスタマイズより指図のレイアウトを定義する。
SPRO >管理会計 >内部指図 >指図マスタデータ >画面レイアウト >定義:指図レイアウト

指図の用途により、必要となる項目が異なる。

更新:決済プロファイル(Tr:SPRO)

決済プロファイルは、決済レシーバに対しどのような決済を行うのかを制御するパラメータ。

決済プロファイルは以下から更新し、指図タイプへ割り当てる。
SPRO >管理会計 >内部指図 >実績転記 >決済 >更新:決済プロファイル

決済レシーバの設定

まず決済レシーバとは何かについて説明する。
決済を行うということは、言い換えると、内部指図に計上されている費用をGL勘定や別のコストオブジェクトに振替(配賦)を行うということだ。

つまり「内部指図に対する決済の相手先」が決済レシーバと呼ばれている

どういったレシーバに対して決済が可能であるかを、決済プロファイル中でカスタマイズする。
指定可能なレシーバは以下のようなものがある。

決済レシーバの例
・勘定コード
・原価センタ
・指図
・WBS
・品目
・CO-PA

一つの決済プロファイルで、決済レシーバを複数指定することが出来る。

それぞれのレシーバに対し、決済不可決済任意決済必須のうち一つを設定する。
決済不可を設定した場合、後述の「決済規則(配賦規則)」の画面にて、該当する決済レシーバのレシーバタイプを選ぶことができないので、決済の相手先として指定することができなくなる。

決済プロファイル以外の決済関連パラメータ

決済パラメータでは、決済プロファイルの他に以下のような項目も重要な役割を果たす。

・配分構造
・PA決済構造
・元構造

配分構造、PA決済構造、元構造については別記事で解説。

決済プロファイルの伝票タイプ

決済プロファイルのカスタマイズの中に、伝票タイプを指定する項目がある。
決済を実行した際に転記する伝票の伝票タイプをここで指定する。

配賦規則最大数

指図の決済規則を登録する際の明細数を制御する。
決済規則の明細数だけ、決済の相手先を定義できる。

内部指図の運用

内部指図登録(Tr:KO01)

Tr:KO01から内部指図の登録を行うことができる。

第一画面及びヘッダ画面

・指図タイプ
第一画面では内部指図の用途に応じ、指図タイプを指定する。

・割当タブ
このタブでは会社コードやプラントといった組織の指定や、利益センタやWBSといった内部指図以外へのオブジェクトへの紐づけを行う。

・制御データタブ
指図ステータス等の確認を行うことができるタブ。

・決済規則ボタン
決済規則ボタンを押下すると、「配賦規則」と書かれた明細のグリッドがある画面が表示される。
この画面については以下「決済規則画面」で解説。

決済規則画面

決済規則ボタンを押すと表示される画面について解説する。

この画面では、センダーとなる内部指図から、費用の決済先となる原価要素やコストオブジェクト、決済のタイプ(期間決済か全額決済か等)、といった情報を、「配賦規則」欄の明細ごとに定義する

また、この画面を編集する前に、まず指図の決済プロファイルを指定しておく必要がある
(決済プロファイルによって、レシーバとして指定可能なコストオブジェクトが変わるため)

・レシーバカテゴリ
明細の最初の項目。
決済プロファイルのカスタマイズで指定したレシーバのレシーバカテゴリ(勘定コード、指図、原価センタ、CO-PA等)の中から、決済先として指定したいレシーバを選択する

・決済レシーバ
ここには勘定コードや原価センター、指図の番号など、決済の相手先となるオブジェクトを具体的に指定する。

・率(%)での決済
決済レシーバに対して、指図に計上された金額をどれだけ配分するかを決定する。
明細数の許す限り、複数の決済レシーバに対して決済ができるが、100%を超えて決済することはできない。

・決済タイプ
決済の範囲を決定する。

決済タイプの選択可能値
FUL 全額決済:指図の残高の全額を決済する。
PER 期間決済:月次処理などで期間ごとに決済する。期毎の決済なので、前期間の残高が残っていても今期のみの金額を決済する。

・開始/終了期間
明細の有効期間を表す。
たとえば決済先のレシーバを今月から変えたい、といった場合、終了期間を前月までとすれば該当明細を無効化できるので、改めて新規明細を登録してレシーバを変更する。

・決済レシーバの詳細設定
明細をダブルクリックすることで、詳細画面を表示する。
たとえばCO-PAを決済先に指定している場合は、決済先としたい収益性分析の特性値などをここで設定する。

ステータスリリース(Tr:KO02)

Tr:KO01で指図を保存した後、ステータスをリリースすることで内部指図を使用可能になる。
Tr:KO02(指図変更)で上部メニューバーの【編集 >リリース】を押下することで指図をリリースできる。(ステータスはRELとなる)

期中の運用(費用計上)

指図を登録・リリースしたら、指図としての運用を開始し、実際に内部指図に対してコスト計上を行っていく。

内部指図に対する費用計上の例
・FI伝票登録(Tr:FB01)より、費用勘定を計上する際に指図番号を指定することで、内部指図に費用計上を行う。
・原価のマニュアル再転記(Tr:KB11N)により入力する。
・原価センタからの配賦処理によって内部指図に費用を計上する。
・内部指図の決済により、内部指図から別の内部指図へ費用を賦課する。

原価分析(内部指図に計上された費用勘定の確認)

内部指図に対して計上された全ての費用明細は、Tr:KO03(内部指図参照)画面上部メニューの【補足 >原価分析】から確認することができる。

原価分析画面では、勘定コード毎にサマリされた金額の一覧が表示されており、それぞれの勘定をダブルクリックすると、さらに計上された伝票単位での照会も可能となっている。
ここでは計画原価と計画/実績差異の分析もできる。

貸借の合計も表示されており、合計がゼロとなっていない場合は指図に残高が残っていることを意味する。
残高が残っている指図は、決済処理を行って残高をゼロとするまで、削除フラグを立てたり完了ステータスにすることは出来ない

また、原価分析の画面は期間を限定して確認することもできる
上部メニューに「時間枠」というボタンがあるので、そこで表示期間を指定する。

決済(期末処理)

内部指図に計上したコストは、運用目的に応じたタイミングにて、決済処理を行う必要がある。

個別決済の方法(Tr:KO88)

Tr:KO88にて指図の決済処理を行う。
決済対象の指図、期間、決済タイプを指定する。
決済規則に指定されていない決済タイプでの決済はできない。

決済を行うことで、内部指図に計上されている費用が、決済規則で定義した決済レシーバに対して配賦される

決済の簡単な例を挙げると、例えば個別受注生産のコストを集積する目的として内部指図を使用するシナリオがあったとする。このシナリオでは、決済レシーバとしてG/L勘定「売上原価」を指定し、生産が完了し製品を得意先に払い出した段階で決済を行って、内部指図内のコストを売上原価勘定に振り替える、という使い方をする。

一括決済の方法(Tr:KO8G)

指図は基本的に多数登録することになるため、一つ一つ決済しては決算に時間がかかってしまう。
一括決済を用いることで、効率的な指図決済を行うことができる。

Tr:KO8G(一括指図決済)の画面は指図の個別決済(Tr:KO88)とほぼ変わらないが、選択バリアントの指定欄と、バックグラウンド処理に関わるパラメータ指定ができる。

・選択バリアント登録について(Tr:KOK2)
「選択バリアント」により、一括決済における対象指図の選択基準を予め設定しておく
Tr:KOK2から登録する。
選択プロファイルは、指図番号を複数、直接指定することも出来るし、特定の指図内のパラメータやステータスを選択条件に指定することも可能。

内部指図の完了

内部指図の目的が達成された場合(先述の受注生産のコスト集積に見立てて使うケースで製造が完了した場合や、業務プロセスや案件ごとに指図登録をしている場合)、内部指図は完了状態とし、指図が終了していることを明示し、以降の新規の費用計上はブロックする必要がある。

指図ステータスによって完了であるか否かの進捗管理をする
指図ステータスは上部メニューバーの【編集】より、任意のステータスを指定する。
以下は完了に関わるステータスについて説明する。

・TECO 技術的完了
TECOは決済前の指図に対し使うことが多い。
特定の業務プロセスや案件が完了した場合、「この内部指図はもう決済して良い」ということを示すために、ステータスをTECOにすることがある。
こうすることでTECOの指図を拾って自動で決済を行う、という処理を組むことも出来る

・CMPL 完了
決済が完了した指図は、このステータスにしておくのが一般的。
また、CMPLとなっている指図を対象に、定期的なアーカイブ処理を行うこともある

内部指図についての補足情報

実績指図と統計指図

実績指図とは、実際の費用の転記対象であり、一定のタイミングで決済を行う内部指図のこと。
上述の解説は、実績指図を前提として説明している。

一方、統計指図といって、統計(分析およびレポート)目的で使用するオプションも存在し、この場合は決済の対象とならない
統計指図は、実コストオブジェクトに紐づけておく必要がある。

内部指図の関連テーブル

AUFK 指図マスタデータ
COBRA 指図決済の決済規則
COBRB 配賦規則 決済規則 指図決済
COBK CO対象:伝票ヘッダ

内部指図関連トランザクションまとめ

KO01 内部指図 登録
KO02 内部指図 変更
KO03 内部指図 照会
KOK2 内部指図一括処理
KOK3 内部指図一括照会
KO88 実績決済:指図(個別処理)
KO8G 実績決済:指図(一括処理)
KOH1 指図グループ 登録
KOH2 指図グループ 変更
KOH3 指図グループ 照会
KKA1 指図に対する結果分析
KKSL 結果分析/WIP 計算のエラーログ一覧
S_ALR_87012993 指図:実績/計画/差異

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