今日は「ビジネス英語」について話そうと思う。
当然の話だが、ビジネス英語を使いこなせれば、案件や役割の幅が増えて、年収アップさせる要因となりメリットが非常に大きい。
うーん、メリットが大きいのはわかりますけど、英語って難しいです……。
今回お話しするのは、「ビジネス英語は難しいものであり俄かには手が届かないもの」という先入観を捨ましょうということだ。
先入観ですか。
一応、この記事がどういった立場から書かれているかだけ先に触れておこう。
この記事の筆者は、最近までIT技術者として外資系製造業の顧客を担当しており、マネージャー層はほぼ外国人で占められるため、会議の8割が英語にて行われているという現場で常駐していた。英語での資料準備、英語での打ち合わせや提案活動が求められる。こうした中で仕事をする中で知った「英語を使って仕事をすること」についての日本人がとらわれがちな先入観や呪縛を解き、英語を自分の武器とすることのキャリア上のメリットをご紹介するのが目的だ。
ビジネス英語は難しいもの、という先入観を壊す
ビジネス英語≠高度な英語
ビジネス英語って難しいものではないのですか?
「英語を使ってビジネスをするのだから、当然そこで使われている英語は高度なはずだ!」
と思ってしまう日本人は多く、かなり強固な先入観にとらわれている人も多い。
しかし、一般的な日本人が思う「ビジネス英語」と現場で使われている英語はレベル感に乖離がある。
ビジネスレベル>>>>>>日常会話レベル
・本当の「ビジネス英語」の難易度
日常会話レベル>>>>>>ビジネスレベル
えー?そうなんですか?
日常会話と違って、ビジネスはお金が動いているわけですから、中途半端な言語力は許されないのでは……?
実はそうじゃないんだ。
よくよく考えてほしいんだが、日常会話っていうのは非常に高度なのだ。
たとえば、ペンちゃんは今日を振り返って、どんな日常会話をしたかな?
えーと、今日は同僚とコロナウィルスの話とか、ゲームの話とか、ガンダムの話とかしましたね。
動画配信サービスで最近、Vガンダムを一気見したので、リーンホースJr.が捨て身の突撃をしていくシーンについて小一時間語り合いました。
偏った日常会話だなー。引くわ。コロナじゃなくてエンジェル・コールに感染してしまえよ。
そこまで言う?ひどくない?っていうかみる子さんもクロスボーン・ガンダム読んでるよねそれ。
さておき、仮にその会話の輪の中に、日本文化をあまり知らない外国人が居たらどうなるだろうか。
えーと、全然会話に参加できないでしょうね。
その通りで、その人が多少日本語を喋れたとしても会話への参加は不可能だ。
逆もしかりだ。英語で日常会話をするというのは、流行りのテレビ番組、映画、最近のニュース、話題の芸能人やYoutuber、海外の伝統や文化、政情、人種問題といった情報が前提にありつつ、スラングや省略も
交えた会話になるので、とんでもなく難易度が高い。
まあ、日本人の知る海外の文化って、テレビで誰かが紹介したものくらいですから、前提知識からして共有できていないですね。
では、ビジネス英語というのはどうだろうか。
最近の流行も、政情も、スラングも、全て排した上で業務にかかわる情報を純粋にやり取りするので、多少の雑談はあったとしても、その業務に関連する前提知識さえあれば目的は達成することが出来る。ビジネス上の会話というのは、純粋にその場の目的を達成するための意思疎通が目的であるからだ。
な……なるほど……。
ペンちゃんは、何気なくガンダムの話をしていたと思うが、数々の文化的背景が共有されていないと成り立たないため、ある意味豊かであり高度な言語の応酬ともいえる。
一方、ビジネスの場での会話というのは、余計なものを排して純粋に情報のやり取りをするのに特化するわけだから、自ずとシンプルであることが求められる。
あー、なんとなくわかった気がします。
仕事で使う言葉って「なるべくシンプルに」「誤解が無いように」書くことが求められますよね。
資料とかも、ごちゃごちゃ書くよりすっきり要点がまとまったものが好まれて、難解な小説みたいな文章を書いてたらレビューで弾かれます。
設計書とかのレビューでも、二重否定は書くなとか言われることもあったりするな。
仕事の場で流通する言葉っていうのは、案外シンプルかもしれませんね。
その通り。ビジネスの現場では、ロジカルで要点を押さえた明瞭な言葉が好まれるので、自ずとシンプルになるものだ。
そして、それはどの言語であろうと変わらない。
ビジネス英語というのは、ロジカルで、要点を押さえた、明瞭でシンプルな言葉であれば良いのであって、高度で流麗な言葉である必要はないのだ。
ビジネス英語≠タフな交渉
とはいえ、なんとなくですけど、海外の映画とかのイメージが先行しちゃいますね。
例えば、『The Wolf of Wall Street』とかのイメージかな?
うーん、まあ、近いかもですね。ディカプリオ主演の。
口八丁で相手を説得したり成り上がっていく?みたいな。
これは映画なので、当然ながらエンターテイメントとしての会話が展開されている。
当たり前の話だがこんな感じで会議や交渉をしている人など見たことがない。
まあ、お芝居ですもんね。
そもそもだ。
そういった虚実入り混じった、腹を探り合うようなタフな交渉を、日本語だとしても出来るのか?
……できないですね。
そういうのが日本語の打合せで求められたことはあるか?
……無いですね。
そういうわけで、ビジネス英語と聞いたら即座にタフな交渉をイメージしてしまう人は、アメリカ映画の見過ぎなので気を付けよう。
ビジネス英語≠流暢である必要がある
筆者がシステム導入プロジェクトで常駐していた外資系企業では、マネジメント層は外国人であり、公用語は英語であった。一方、日本人も結構多く、7割が日本人、他は多国籍な外国人という構成だった。
外資系ってことは日本人もみんな英語ペラペラなのでは?
そんなイメージが先行しているが、実はそうでもないんだ。
その企業の日本人社員の大半は普通の世間一般の会社員と変わらないレベルの英語力だった。
ちょっと意外ですね。
まあ外資系といっても色々あるからもちろん一概に言うつもりはないが……。
この話は外資系かどうかはあまり関係がないのだが、ある日のプロジェクト進捗会議で、各領域の担当者が大会議室に集められた時の話だ。
プロジェクトマネージャーは部長クラスの外国人で、結構ツッコミが激しいタイプの人だった。
そういう人相手に進捗報告するのはめんどくさいなあ。
日本語でも嫌ですね……。
会議室に集められたのは、その企業の各部門の業務担当者および導入ベンダーの技術者などだ。進捗報告は業務担当者が行い、必要に応じてベンダーがサポートする形だ。
先ほども言ったように、社員の大半は普通の英語力しか持たない。
彼らはゆっくり簡単な言葉で、詰まりながら、身振り手振りを交えながら、発音も気にせず、文法も間違いだらけの片言の英語を、なんとか発言して一生懸命意思疎通をしようとしていた。
なるほど。報告を受ける側は、わかりづらい英語にイライラしないんですか?
それが、部長は英語能力の高低について気にする素振りは全くなかった。
むしろ、そちらも一生懸命、報告者に傾聴しており、しっかり理解した上で内容について激しいツッコミを入れていた。
おおー。ツッコミはともかく、ちゃんと聞いてくれるんですね。
具体的なシーンや雰囲気がわかりにくければ、この動画なども参考になるかもしれない。
カルロス・ゴーンとホリエモンの対談動画だ。ホリエモンも別に流暢な英語ではないのだが、流暢かどうかなど全く重要でないという風に振舞っているし、カルロス・ゴーンもしっかりと相手に傾聴している。
普通、こんな外国人の大物相手にするなら、さぞかし完璧な英語じゃないといけないんだろうなって思っちゃいますけど、そういうのって全部凡人の無駄な思い込みと言わんばかりなのが流石ですね。
この光景は、日本人にとって「外国人に全然言葉が通じなくて変な空気になったり馬鹿にされたらどうしよう……」という過度な心配を打ち消してくれる光景になりうると思う。
たしかに日本人って、完ぺきに近いレベルに仕上げないと会話するのが恥ずかしいって思っている部分ありますよね。
プロジェクト進捗会議の話に戻るが、ビジネス英語の飛び交う場は、多国籍な場であることが多い。
先述の部長はドイツ人だし、技術者にはちらほらインド人や中国人もいるし、業務の担当者にベトナム人も居た気がする。皆そこにいた日本人よりは確かに英語力が高いのだが、発音が独特であったりもして、多種多様な英語が飛び交っていた。
流暢でなくとも、日本人の発する英語も、その中の一部に過ぎないという感じだった。
日本人って、英語といったらアメリカ人、みたいな先入観があるかもしれないですね。
また、日本人としても、衆人環視の中でたどたどしい英語を披露するのは、一般的には恥ずかしいことだという思い込みがある。しかし、先ほどの例で話したプロジェクト進捗会議に居た日本人は、いい意味で開き直っており、流暢にしゃべれないのは仕方ないのでなんとか知ってる単語をつなぎ合わせて四苦八苦していた。そこには、気恥ずかしくて押し黙ってしまうような素振りは全くなかった。
実はこのマインドを持つことが、ビジネス英語を習得する上でとにかく大事なのだ。
完璧じゃなくてもバンバン発信するんですね。
そうだ。言葉は使っているうちに単語も覚えて自然に出てくるようになり、洗練されていく。
気恥ずかしさで押し黙っているうちは、絶対にしゃべれるようにはならない。
結局、自分で勝手に「しゃべれる」と言えるレベルを高く設定しすぎているせいで、日本人はビジネス英語から遠ざかってしまっていると。
しかし、そこの外資系企業みたいに、もうしゃべらなきゃ仕方ないような場所では、どんどん発信していくようになるんですね。
そうだな。事実、プロジェクトの後半では、皆だんだん報告も手慣れた感じになってきた。言い回しや単語を数パターン覚えれば、あとは組み合わせや並べ替えだけで「ロジカルで、明瞭で、シンプル」な表現を達成できるからだ。
なるほどですね。
「恥をかけない」感覚というのは、テストなどで失点が許されない、絶対に失敗できないことが前提となっている日本の教育制度のなかで醸成された強固な先入観であり、日本人を国際化から遠ざけている深刻な呪縛と言える。
英語に関しては、間違っても良いのでとにかく数を打たせるという教育方式に変えた方が良い。
失敗しないように駅前留学でしっかり勉強してから、なんてやっていると永遠に出来るようにならないかもですね……。
駅前留学はあくまで補助教材として使うから有効なのであって、実践に勝るものはない。
下に並べた2つを比べてみれば、学習スピードが圧倒的に違うことは明らかだ。
②駅前留学でふわっとした状況設定の会話例文をなぞる
ビジネス英語=平易な単語と短い文章で良い
というわけで、ビジネスの場に求められるのは、「ロジカルで、明瞭で、シンプル」な言葉だ。
それは日本語でも英語でも同じだ。
シンプルな言葉で済むのであれば、平易な単語と短い文章で表現しても、要点が抑えられているのであればそれで伝わる。ビジネス英語を不必要なまでに難しいものと捉えるべきではない。
なるほど。捻った言い回しなんかは、別に要らないわけですね。
平易な単語と短い文章であればあるほど、扱いやすくなるものだ。
しかし、もともとの論理的言語能力が低いと、頭の中の整理が出来ず、平易で短い文章にするのは難しくなる。
もともとの国語力も鍛えましょうってことですね。
IT技術者は英語を使えるようになるとメリットが大きい
一般的なサラリーマンもそうだが、IT技術者も、英語は出来るようになっておいた方が圧倒的に有利だ。
今回はどういうメリットがあるか紹介しよう。
一例として、ERPパッケージソフトである『SAP』の情報収集について説明する。
SAPは世界的に広く導入されているが、日本語で記載されたSAPに関するサイトはかなり少なく、日本語の枠内で情報収集しようとすると、なかなか厳しい
しかし、SAPには技術者同士で情報共有(スレッド型のQA)サイトである『SCN』というものがあり、ある技術者が直面した問題を、別の詳しい技術者が解決方法について回答する。
実はSAP標準機能に関しては大半のトラブルシューティングやハウツーをここで拾うことが出来るので、明るくない機能領域であっても、ほとんど苦労なく知りたい情報をピンポイントで知ることが出来る。
もちろんQAなので公式回答ではなく、ドンピシャの回答がない場合もある。しかし、ここは世界中のSAP技術者達の知見が蓄積された場所であり、少なくとも解決の糸口を拾うには最適で、自分で一から頑張るよりも遥かに効率が良い。
ちょっとした英語を覚えることで、こうした知見の蓄積にアクセスできるようになる。
英語で打合せが出来るようになれば案件の幅が広がり、ちょっとくらい技術的に微妙でもいい案件を獲得できる。さらに、技術力も言語能力も両方高ければ、シナジー効果が生まれてより高収益案件が獲得できる。
これから正社員リストラ時代がまたやってくると言われている中、自分の現在持っている技術を、何と組み合わせてシナジーを発揮していくかが重要となる。
ビジネスが国際化する昨今、上記でも触れたSAP技術者は、英語能力とのシナジーが高いと言える。
うーむ、SAPに限らず、ITって総じて舶来品ですから、「外国語との親和性が高い」のではなくて発祥がそもそも海外ベースなんですよね。
そうだな。しかし、とりあえずシリコンバレーで働ける英語レベルを最初から目指す必要はなくて、まずは「ロジカルで、明瞭で、シンプル」な発信や読み書きが出来れば、それだけでも日本国内を拠点に働くうえでは効果を発揮してくれる。
選択肢の一つですね。とりあえず、何かの拍子で外資系の案件などが舞い込んで来たら、尻込みせずに引き受けてしまうのも手かもしれません。
そういうことだ。それでは、今日はここまでにしよう。
ありがとうございました。