【SAP PP】保管場所設計とプル一覧

SAP PP・MRP

導入プロジェクトで重要な議題の一つとなるのが、工場における実体の倉庫とシステム上の「保管場所」をどう紐づけるかという話だ。

工場には通常、多数の倉庫が設けられている。そのすべてに保管場所コードをカスタマイズするのも一つの手段だし、あるいは管理上煩雑になってしまうのを懸念して一定区画内の隣接する倉庫などはひとまとめにしてしまおう、という手段もある。

顧客がどう管理したいか、現在どのような単位で在庫把握をしているのか、そしてERPにどこまでの管理を求めているかが、要件定義時の保管場所設計のカギとなるだろう。

今回は生産管理の要件定義において挙がるであろう、原材料保管場所と生産保管場所の関係及び、それらの間の原材料供給をシステム上で効率的に行うためのトランザクション、またはその設定について解説する。

保管場所設計とプル一覧

原材料保管場所と生産保管場所

生産BOMに登録する構成品明細には、保管場所を指定することができる。
製造指図において、通常その品目の引き落とし元となる保管場所の指定だ。

このBOM明細の保管場所は基本的に「生産保管場所」を指定する。
生産現場において一時的に生産に供する原材料を仮置きし、製造を始める時にすぐにその原材料を投入できるようにしておくための場所が生産保管場所だ

この生産保管場所とは別に、原材料の倉庫(原材料保管場所)が存在する。
原材料の倉庫には、多量の部品を置いておく。とくに重要な製品の構成部品ともなれば、仕入先の倒産、災害による損壊、国際情勢不安による空輸/海運のストップ等が起きても数週間~数か月は生産が継続できるように、ストックしておく。

原材料倉庫は通常であれば大容積の倉庫となっており、生産に必要になるたびに必要量をピッキングし、生産保管場所に移す
このような形で、プラントの保管場所は原材料倉庫と生産保管場所といった形で定義し、在庫転送により生産現場に原材料を供給するようなモデルを採用するはずだ。

もちろん大容量タンクと生産現場が直結しているような場合もあり、原材料倉庫=大容量タンク=生産保管場所のような関係になっている場合もあるが、組み立て生産であれば概ね原材料保管場所と生産保管場所は分けてカスタマイズするはずだ。

プル一覧(Tr:MF60 計画手配に対する品目供給)

複雑な製品であれば、その構成部品は数十、数百万に及ぶ場合もある。
そういった場合、所要に対して一つ一つTr:MIGOで在庫転送を手打ちできるかというと、そんなことはやっていられない。

そんなとき、プル一覧(Tr:MF60)を使えば、計画手配や製造指図を指定し(範囲指定も可、手配や指図の他に受注伝票や紐づき所要量、保管場所別の検索も可)、その手配や指図においてBOMから読み込まれた構成部品の出庫予定保管場所に対し、一括で原材料在庫の供給が出来る

プル一覧の操作

まず構成品を持つ製品の計画手配を登録する。
プル一覧(Tr:MF60)を実行し、第一画面で計画手配番号を入力し、実行ボタンを押す。

出庫予定の構成品のリストが出る。このリストは各明細の保管場所に対してどれだけ補充するかを指定するためのリストだ。
いま生産保管場所に存在する在庫数量が「利用可能在庫」の項目に表示され、その横に供給数量を入力可能な項目がある。
補充数量を手入力しても良いが、「補充提案」ボタンがあるのでそれを押すと必要数量を満たすように自動入力してくれる。
生産保管場所側に既に原材料が存在する場合は、その在庫残高を差し引いて足りない数量が入る。

補充数量を入力したら「補充要素」ボタンを押す。
すると画面下部にもう一つリストが表示されるので、ここでは「どこから供給するのか」を指定する。
このリストには「RepLoc」という項目がある。(長テキスト:プル一覧の補充在庫保管場所
「RepLoc」に指定するべきは、この原材料を貯蔵している原材料保管場所となる。

プル一覧の補充在庫保管場所

プル一覧で補充提案を実行して「補充要素」ボタンを押すと、画面下部にどこからどのように構成品を供給するかを指定するリストが現れる。
このうち、RepLoc(補充在庫保管場所)という項目が、デフォルトでは空欄となっているはずだ。
しかし、供給場所としての原材料保管場所が固定で決まっているのならば、この項目はいちいち手入力せず自動更新したい

よって、以下の設定によりRepLocを自動更新する。

1.カスタマイズ
Tr:OSPX(定義:在庫決定方針)を実行する。
・「在庫決定グループ」にて、プラント及び在庫決定グループを定義する。
・「在庫決定規則」を定義する。
・「在庫決定ヘッダテーブル」にて、プラント・在庫決定グループ・在庫決定規則の組み合わせを登録する。
・登録した組み合わせをダブルクリックすると、詳細の設定が現れる。
・「ソート」にて明細テーブルの優先度を1とする。「他の設定」はWM処理:3(在庫決定優先)、在庫決定(オンライン)にチェックする。
・最後に「在庫決定明細テーブル」では、F(利用可能自社在庫)と保管場所コードを設定しておく。
2.マスタ設定
原材料の品目マスタを開く。(Tr:MM02)
MRPビュー2で在庫決定規則を設定する。
3.Tr:MF60の「共通設定」
第一画面の画面上部にある「共通設定」ボタンにおいて、「ダイアログ管理タブ」の中の「補充提案作成」および「ロット決定/在庫決定実行」の項目を【D 自動】として設定しておく。

以上の設定を実施した上で、第一画面から実行ボタンを押すと、次のリスト画面では既に補充提案が行われ補充要素のリストが表示済み、かつRepLoc(補充在庫保管場所)の項目も自動更新されている、という状態となっているはず。
在庫決定方針の設定方法についてはあくまで一例。保管場所の設計にもよるが、もう少し凝ったこともできると思われる。

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