システムエンジニアにおススメの漫画・小説10選

ビジネス本・漫画紹介

未来技術のSF作品は巷にあふれている一方、現代のIT業界を題材にした作品は思いのほか少ない。

しかし、そんななかでも、SE(システムエンジニア)あるいはSIer業界に勤めていると共感度合いが深い作品に巡り合うこともある。

今回は筆者がおススメしたいSE漫画・小説を10作品ご紹介したい。

SEにおススメな漫画・小説10選+α

え、社内システム全てワンオペしている私を解雇ですか?

作者:下城米雪 イラスト:icchi
PASH! ブックス

なかなかぶっ飛んだ表紙絵のため驚く人もいそうだが、それで敬遠したら勿体ない傑作

コスプレ好きシステムエンジニアの佐藤愛は、社内の業務の八割方を自動化した驚くべき基幹システム「オルラビシステム」の開発者であり、ワンオペ保守を担当していた。
佐藤愛の凄まじく高い技術水準によって支えられていた会社業務だが、新たに就任した社長は社内のコスト削減を断行し、あろうことか「一人で回る仕事など必要ない」などと言ってスーパーSE佐藤愛を解雇してしまうのだった。

佐藤愛は幼馴染の起こしたスタートアップ企業に転職を果たし、そこで運営される「真のプログラマ塾」なる事業で大活躍(?)することになるのだった。

一方、佐藤愛を解雇した新社長は、運用がまわらなくなった「オルラビシステム」に多数の技術者を投入するも復旧することなく、会社業務は次々に崩壊していく。しかし、それでも新社長は自らの過ちを認識できず、「エンジニアは一言目には「不可能」と言うが、それは仕事から逃れるための嘘だ」などとエンジニアを見下し続けるのだった。
そして次第に、自らの改革の大失敗の原因が佐藤愛にあると逆恨みし、彼女を「潰す」ための計画を発動するのだった

なろう系出身の小説であり、しっかりとセオリーを踏みつつ、エンジニアライフを現在のトレンドも交えて面白く描き切った作品。
2巻目も出ており、軽快な文章でサクサクと一気に読むのに向いている。

なれる!SE

作者:夏海公司
角川電撃文庫

すべてのシステムエンジニアにおススメしたい!SIer業界を忠実に、おもしろおかしく、かつ残酷に描き切った傑作ラノベだ。

システムを題材にした作品の中では、かなり飛びぬけたクオリティだと思う。

ネットワークエンジニアが主な題材だが、SEとして働いていればどのような領域の担当であっても「分かりみが深い」描写ばかりだと言える。

「なれる!SE」は主人公である桜坂工兵が新卒でスルガシステムという中小SIerに就職するところから始まる。しかし、スルガシステムは現場無茶振り、丸投げ、デスマ、暴力(?)の横行する超絶ブラック企業だった……。

そんな中で桜坂工兵のOJT担当になったのは、どう見ても子供にしか見えないが美人のスーパーSEである室見立華。哀れな桜坂はこの可愛らしくも残酷なOJT担当の理不尽な暴言暴力に耐えながらも、超絶ブラックなSIer現場の荒波を、勇気と機転と室見の技術力で乗り切ったり乗り切れなかったりする物語だ。

システムエンジニアであれば、このラノベに書かれている題材はほぼ必ず経験していると言えるほど、業界ネタを忠実に描写している。

作中に出てくる言葉で印象に残っているものがある。

工数とゴマの油は絞れば絞るほど出てくる」(『なれる!SE』11巻14p)

……このラノベは恐ろしすぎる。


※電子書籍のまとめ買いがおススメ。

王様のヴァイキング

作者:さだやす(ストーリ協力:深見真)
小学館

エンジェル投資家である坂井は、とあるきっかけにより18歳の天才ハッカー/クラッカー、是枝一希の才能を見出す。

他人との会話が苦手でアルバイトもまともにこなせなかった是枝だが、坂井との出会いにより「生きててもいい理由」を取り戻し、彼とともにサイバー空間の世界征服に乗り出していく。

サイバーものによくある天才ハッカーを題材にした作品だが、極度に人生のバランスを欠いた天才人間の生き辛さの描写が生々しい。天才キャラは周囲との人間関係に難があろうと、それを普段は意に介しない泰然としたキャラ描かれることも多いが(先述の「なれる!SE」の室見しかり)、是枝は登場時から悲惨だ。

しかし、その並外れた才能がどう見出され、エンジェル投資家である坂井の野心とともに歩んでいくのか、そのストーリーは必見と言える。

SE神谷翔のサイバー事件簿

作者:七瀬昌
幻冬舎

SIerであるエールシステム社のソリューション部門に、風変わりで気弱そうな新米SEが配属された。

彼の名前は神谷翔。慢性的人材不足のSIerにとって、東大理工学部院卒で開発経験もあるという期待の新人だったのだが、彼のOJT担当となった先輩の夏木理沙は、神谷の指導に頭を悩ませていた。

指示待ちどころか、指示してもマトモに動かない。定時で帰るのは当たり前、文章を書かせればめちゃくちゃ、周囲とのコミュニケーションも取ろうとしない。
一見したところ、仕事ができない典型的ダメ社員

しかしある日、エールシステム社で起きたウイルス感染騒ぎの原因を、神谷はあっという間に突き止めてしまう。彼の正体はなんと、警視庁サイバー犯罪対策チームに協力している凄腕ハッカーなのだった……というストーリー。

いわゆるハッカーものの常道で、天才凄腕ハッカーが事件を解決していく小説なのだが、システムエンジニアであれば「ああ、あるある」と言いたくなるようなSIerの職場の描写やシステム知識が散りばめられており、読んでいて身近に感じられるシーンも多いのではないだろうか。

ITを題材にした作品であり専門的な話も頻出するにもかかわらず、かなり読みやすく工夫されており、作中に出てくるシステム用語も丁寧な脚注がついている。

現職SEであれば一度は読んでおいて損はないクオリティの作品だ。

ハルロック

作者:西餅
モーニングKC


電子工作に人生を捧げているちょっと変わった女子大生、向坂はる。

秋葉原で調達したマニアックな電子部品とプログラミングを組み合わせながら、様々な役立ち(?)デバイスをゆるく開発していくギャグマンガだ。

組込み系エンジニアであれば、あるあるなネタや電子部品、わかりみの深い話が多く登場する。

そんな電子工作女子系ギャグマンガ。
※天然系太眉女子が好きな男性にもおススメ

アルキメデスの大戦

作者:三田紀房
講談社

「戦艦大和の建造阻止」ーー。

時代は太平洋戦争突入から遡ること8年の1933年、帝国大学の数学科の天才櫂直(かい・ただし)は、海軍少将の山本五十六の要請を受け、国家財政をまさに逼迫させんとしている大和建造計画を阻止するべく海軍省主計課に入省する。

大和建造計画の偽装にまみれた建造費見積もりに対し、数学を用いてその不正を暴いていく、というストーリー。

パソコンも電卓もない時代ながら、徹底した数字・数学・論理を駆使して計画の闇を打破していく様子は非常にスリリングで、現代に生きるIT技術者としてもその姿勢は見習うべきものがあると言えるので、IT業界モノではないがあえて選出した。

ミリタリー系が好きな人の間では、かつて日本が有した世界最大にして最強の攻撃力を誇る戦艦大和は、ある種のロマンと憧れの対象として認識されている。作中の大和建造推進派の登場人物も、戦艦大和をロマンとともに語る姿勢が目立つ。

そうした中であえて「反・大和」を掲げるこの作品は、しかし櫂直の天才的な先見の明により、戦艦大和の代替としてさらなる次世代兵器の建造へと物語が遷移していく……のだが、ここから先は是非ご自分の目で見届けて頂きたい。

SEのフシギな生態:失敗談から学ぶ成功のための30カ条

作者:きたみりゅうじ
幻冬舎文庫


4コマ漫画+業界ネタエッセイという体裁の本だが、システムエンジニアの悲哀をしっかりと盛り込んだ一冊となっている。

タイトルにある通り、システムエンジニアとして成功するための指針も提示してくれており、就職や転職にも参考になる。

SIer業界に入ろうとしている人は、一度は手に取って読んでみると参考になるはず。
出版当時は結構話題になった本だ。

内容も笑いと涙を誘う4コマばかりで、顧客や職場の都合に振り回されるシステムエンジニアとしての生態を面白く描いている。

無能の鷹

作者:はんざき朝未
講談社

ITソリューション提案を行う中小コンサルティング会社に入社した主人公の鶸田は、めちゃめちゃ仕事のデキそうで理知的な見た目の美人に出会う。

その女性の名は鷹野。しかし彼女は、その凛とした見た目に反して、壊滅的に仕事ができない、いや、もはやどうやって生きているのかさえ不思議なほどのアホな社内ニートだった。

そんな中、弱気で地味な鶸田は、彼女と組んで顧客先に提案活動をしに行くのだった。

提案会議では当初うまく話が進んでいくが、鷹が発言すればするほどだんだんおかしな方向に……。
お客さんも鷹の「できそうな雰囲気」に飲まれており、鶸田の必死の軌道修正も空しく勘違いがどんどん加速していく。

これ自体はコメディとして読めるのだが、よくよく考えてみると、IT提案の現場で「その人が発言し始めるとだんだん会議がおかしな方向に行く」というビジネスシーンを経験したこともあるSEも多いのではないだろうか。

作中では勘違いをこじらせたまま、なんだかんだで提案自体は上手くまとまってしまうので、鷹野と鶸田は結構良いコンビだったりする。
そして鶸田も、カオスな状況の中から提案活動において重要な気付きを得ていき、システムエンジニアであれば鶸田のモノローグには結構共感できるところが多い。

いきのこれ!社畜ちゃん

作者:ビタワン(原作)/結うき。(作画)
KADOKAWA

深夜残業、休日出勤、やりがい搾取、SE vs 営業……。
システムエンジニアである社畜ちゃんの生き残りをかけた、ゆるくブラックな会社生活4コマ漫画。

システムエンジニアあるあるネタの塊。

SIer業界をゆるく自虐したいときのシステムエンジニアが読むマンガだ。
絵柄は可愛い。ネタはえぐい。

SEクライシス

作者:越川亘, 須崎一成
オーム社

初版は平成4年に発行された書籍なので、30年ほど昔のSE業界ネタなので、今の時代からすると古臭いのではと思いきや、この業界に生きる「SE」という生き物はあまり進歩していないなあと思わされる内容だ。

かつ、いい意味での古臭さもあり、当時よくあったタッチの4コマ漫画の画風で、懐かしさと味のある仕上がり。

今の若手SEこそ読むべき本なのではないかと思う。

SE

作者:此ノ木よしる
白泉社


高島百香はITベンチャーである株式会社PEACH SYSTEMを経営する女子高生社長。

そんな会社にSEとして主人公の丘史郎が入社するところから始まるのだが、なんとPEACH SYSTEMは○○○(いかがわしいデバイス)の開発に異様な情熱を燃やす会社だった……。

単純なプログラムバグがなかなか見つからず残業したり、仕様の手違いによりデスマ発生の危機に陥ったりなど、システム業界によくあるネタもしっかりと描写されている

ただ先述の通り下ネタを含み、読者層を選ぶマンガでもあるので、試し読みして確認してみた方が良いだろう。

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