SAPの需要予測機能を運用するにあたり、各機能をどのようなフローで扱えばいいのかについて解説する。
SAPの需要予測は「品目需要予測」を使用するか「販売事業計画」を使用するかにより、フローが若干異なってくる。今回は、まず全体的なフローを俯瞰した上で、運用の各段階で必要とされるオペレーションなどを詳しく説明する。
なお、本記事の前提として、以下①モデル解説編、②設定編についてもご参照頂きたい。
SAP需要予測
需要予測の俯瞰図
需要予測を開始するまで
①品目マスタ登録
②品目の運用期間
需要予測を行うには、まず過去データの十分な蓄積が必要だ。
何もないところから根拠ある予測はできない。
まずは品目を登録し、十分な運用実績を作る。
採用する需要予測モデルにより、必要な実績の期間は異なる。
・モデル毎に必要な期間
品目の運用実績(つまり出荷や消費の実績)は、消費値といって、各期毎にその数量が記録され、それが需要予測の根拠となる過去データとして用いられる。
消費値は移動タイプのカスタマイズの「消費転記区分」に基づき記録される。
需要予測の運用開始
品目需要予測を使用する場合
③需要予測プロファイル、品目マスタ需要予測タブ設定
④品目需要予測実行(Tr:MP30)
品目需要予測を用いて需要予測機能を利用する場合、品目マスタの需要予測タブを予め設定しておく。品目数が多い場合は、品目需要予測プロファイル(Tr:MP80)も登録しておくと便利。
需要予測はTr:MP30から実行する。
Tr:MP30の画面では、品目コードとプラント(またはMRPエリア)を指定して、予測実行画面に移る。
「実行」ボタンを押すことで、過去データと指定した予測モデルに基づく需要予測値の一覧が表示される。「修正需要予測値」の欄で手動で修正することも可能。
この画面で「保存」ボタンを押すと、この予測値は即座に所要量として反映され、MRPの考慮対象となる。(ただしMRPタイプの設定も関与する。即反映しないということも可能)
この需要予測結果の所要への反映は、所要量一覧(Tr:MD04)にて確認できる。
MRP要素は、計画外所要であれば「UnplRq」などとなっている。
販売事業計画から需要予測を使用する場合
⑤販売事業計画による需要予測実行(Tr:MC87)
⑥需要管理への転送(Tr:MC74)
販売事業計画(Tr:MC87)
Tr:MC87から品目・プラントを指定し、使用するバージョンを選択する。
計画バージョンは品目・プラント事に複数のバージョンを持つことが可能となる。(実運用上、あまりたくさん持ってても管理がしづらくなるだけだが)
計画テーブルの画面に遷移する。
計画テーブル上では、横軸が期(年月週日など)、縦軸が「販売」「生産」「在庫レベル」等となっており、期毎の計画数量を入力する形となっている。
この画面でメニューの【編集 >販売計画登録 >需要予測】を選択する。
需要予測の実行パラメータを入力し、需要予測を実行する。
この際の実行時パラメータについては別記事(①モデル解説編)にて詳述しているので、そちらを参照頂きたい。
需要予測を実行すると予測値の一覧が表示される。項目「修正予測値」から需要予測値の手動修正も可能。需要予測結果に問題なければ結果反映(チェックボタン)する。
すると計画テーブルの画面に戻ってくる。
計画テーブル上の「販売」のラインに、需要予測値が反映されているはずだ。
PPモジュールを使っているのならば、この販売計画数をもとにさらに「生産」のラインにも生産計画数量を入力していく。
需要管理への転送(Tr:MC74)
立案した販売計画・生産計画を、所要量として反映させるためのトランザクションがTr:MC74。
品目・プラント・計画バージョンをまず指定する。
次に転送方針を指定する。大きく分けて販売計画を所要に反映するのか、生産計画を所要に反映するのかを選択できるようになっている。
所要を反映させる期間も指定し、「転送」ボタンを押せば、所要量一覧(Tr:MD04)にて所要が反映されたことを確認できる。
需要予測に基づく所要管理とMRP
⑦MRP(所要管理)
いったん需要予測からの所要量が所要量一覧内で確認できるようになった場合、あとは通常のMRPのフロー通り、納入されるべき期日・数量に基づいて、生産や調達の手配が自動的に生成される。
不足があれば在庫数量と照らしてMRPが計画手配や購買依頼を自動作成する。
消費実績は蓄積し続けるので、在庫管理・販売管理のプロセスと相互的に連携しながら予測精度を高めていくことを繰り返す。
需要予測に関連するトランザクション一覧
Tr. code | トランザクション名 | 内容 |
MP30 | 需要予測:実行 | 品目単体の需要予測を実行 |
MP31 | 需要予測:変更 | 実行した需要予測の結果を編集 |
MP32 | 需要予測:照会 | 実行した需要予測の結果を照会 |
MP38 | 一括需要予測の実行 | 多数の品目の予測を一括実行 |
MPBT | 総需要予測:バリアント | 一括需要予測を実行する際の設定画面 |
MP80 | 需要予測プロファイル | 品目マスタ需要予測タブのパラメータを登録 |
MC87 | 販売事業計画 登録 | 販売事業計画を登録 |
MC88 | 販売事業計画 変更 | 販売事業計画を変更 |
MC89 | 販売事業計画 照会 | 販売事業計画を照会 |
MC74 | 計画データを需要管理へ転送 | 販売事業計画で立案した数量を所要に転送 |