SAP需要予測機能とは
ある品目が将来的に必要となる数量(所要量)を、これまでの在庫移動実績(出荷や消費)の過去データに基づき、数理的なモデルを用いて予測する機能が、SAP標準機能として存在する。
この記事では、以下の3点についてまとめる。
・マスタ設定およびカスタマイズ設定
・SAP需要予測機能の実行フロー
SAP標準で使用できる需要予測モデル
需要予測は数理的なモデルを用いて予測値を計算する。
たとえば最も直感的に分かりやすいモデルは単純移動平均法で、今までの過去実績全ての平均値をとって、それを即ち次期の予測値として採用する方法だ。
一方、季節変動や傾向変動を予測値に反映させるウインターズ法などのモデルもSAP需要予測機能に備わっており、出荷量の変動に規則性のある品目については、こうしたモデルを使用することでより精度の高い予測が可能となっている。
使用できる需要予測モデルおよび、どのように計算されるかを、以下の記事にて解説している。
ウインターズ法などの需要予測モデルは、「指数平滑法」という知識を前提としている。
指数平滑法についての解説は、以下の記事に記載している。
需要予測の設定(マスタ設定・カスタマイズ設定)
品目需要予測を使用するか、販売事業計画からの需要予測を使用するかで、設定すべき項目が異なってくる。
(どちらを使用するにしても、基本的な需要予測の考え方は変わらない。)
品目需要予測または販売事業計画上で需要予測機能を使用できる。
・品目需要予測(Tr:MP30)
・販売事業計画からの需要予測実行(Tr:MC87)
設定すべき箇所、および、各設定項目の意味について、以下の記事で解説している。
SAP需要予測機能の実行フロー
1.過去データの蓄積
需要予測機能を利用するためには、まず需要予測の根拠となる、品目の出荷・消費実績の蓄積が必要。
過去データが十分に蓄積されたら、その品目の消費傾向が見えてくる。
たとえば、季節によって変動が見られたり、長期的に減少あるいは増加傾向にあったりといったもの。
2.予測モデルの決定とシステム設定
傾向が見えたところで、その品目を高い精度で予測していくための需要予測設定を決定する。
たとえば、どこまでの過去データを根拠として、どの予測モデルを適用し、何期先まで予測するのか、といったことだ。
そういった諸元に基づき、需要予測の設定を組んでいく。
3.需要予測の実行
実際に需要予測を実行し、予測結果の確認を行う。
予測した数値を所要量として反映(MRP対象に含める)させることが出来る。
実際に出荷した値が予測値とずれることもある。こうした場合、何が差異の原因となったかを確認し、次の予測精度の向上に活用する。
こうした需要予測の運用における一連の流れについて、以下の記事で俯瞰図とともに解説している。