中小企業診断士の合格後に何が起こるかを話そう。
今回は試験合格し、実務補習を経て経済産業省の中小企業診断士登録がされるまでの流れを紹介しよう。とくに大事な実務補習については詳しく掘り下げる。
二次試験合格後、実務補習で本物の企業診断を実践
二次試験合格後の流れ
中小企業診断士二次試験に合格したあと、中小企業診断士協会の運営する実務補習を15日間修了することで、経済産業省に登録され、中小企業診断士として名前が官報に公示される。
実務補習とは
実務補習は実際の企業診断経験を積ませるための制度であり、5人の二次試験合格者と1人の指導員で構成されるチームで、実際の企業を訪問し、診断業務を行う。診断業務の期間は5日間で、診断業務の成果物として、当該企業の社長に向けた80ページ程度の経営診断報告書をまとめ、最終日に報告(プレゼンテーション)を行う。
実務補習の日程
5日間のカレンダー日程は以下例の通り。2月、7月、8月、9月ごろに開催されるので、参加可能な月に応募する。
5日間の使い方は指導員の方針等によって多少差はあるものの、以下が一般的な実務補習の流れとなる。
実務補習の具体的内容と雰囲気
二次試験(口述)に合格した後は、ついに本当の実践が始まる。それが「実務補習」への参加だ。
参加するためには、ホームページか郵送で、中小企業診断士協会が運営する実務補習制度に申し込む必要がある。
試験合格発表が1月初旬だが、実務補習の募集はそれよりも早く始まるので、合格発表後は早めに申し込まないと枠が埋まってしまうぞ。
実務補習って具体的に何をやるんですか。
実務補習では、二次試験合格者同士で5人程度のチームを組んで、実際に中小企業の診断業務を行う。
実在する企業の、実在する社長に対してヒアリングを行い、診断報告書をまとめるんだ。
おお、難関試験を合格したとはいえ、いきなり本物の企業を診断することが出来るんですか?
ベテランの中小企業診断士が1名、指導引率役として入る。そして、実際にその診断士の先生が付き合いのある中小企業に訪問することになる。
なるほど……その先生に教えてもらいながらってことなんでしょうか。
いや、教えるのが好きな先生もいるだろうが、基本的には5人に任せ、5人の中でしっかり考えて報告書をまとめ上げる。
診断士としてはひよっ子ではあるが、基本的には全員社会人だし、自分の頭で考え、自分の頭で遂行するというのは社会人としてあるべき態度だ。
自分の専門領域の知識や診断士試験で勉強したことをフルに活かし、診断先にとって有益となるコンサルティングを、自力で、そしてチームで行う。そういう体験をするのが実務補習という場なんだ。
すごく難しそうですが……。コミュ力も必要そうだし……。
まあ、コミュ力というか、社会人の常識から大きく外れていなければ大丈夫だ。
チームはどんな雰囲気なんでしょう?合格者の年齢層としては30~49歳が大半なんですよね。
それより若い人は肩身が狭いんじゃないですか?
たしかにチームメンバーは企業の中堅クラスの社員が多い。若い人からすると、課長や部長クラスの年齢層で、実際にそういう職階だったりするので、気後れすることもあるだろう。
しかし、実際には同じ新米診断士なので、社会人としての礼節さえあれば必要以上に引っ込む必要はない。
そうなんですね。
逆に、大企業の課長や部長クラスの人でも、実務補習の中で若い人に対し礼節を欠くような態度や言動を取っているのを見たことはない。若いとはいえ部下ではないし、同じ新米同士なので、上位者のごとき振舞いは適切ではないと、みんなわかっている。
なるほど。年齢に関係なく、対等にチームを組んで活動するんですね。
会社勤めではなかなか経験できないことです。
その通り。業界・職種・職階・得意分野がすべて違う5人が集まるわけだ。こんな機会はそうそう無いので、絶対に面白い経験になる。例え大企業の課長や部長相手でも、その人にない分野の経験や強みを持っていれば、年齢に関係なくチームメンバーとして活躍することができる。
そういう中でしっかり役割を担って存在感を出せるなら、楽しそうですね。会社で上司相手にそんなことは出来ないですからね……。
しかも、自力で顧客獲得をする必要はなく、指導役の先生と付き合いのある企業にいきなり訪問して実務を経験できるのだから、それだけでもとてもありがたく破格の機会だと言える。診断のクオリティによっては相手の社長さんから厳しいことを言われる場合もあるだろうが、それも含めて貴重な経験だ。
実務補習ってどれくらいの期間で行うんですか?
基本的には5日間をワンサイクルとして実施する。1日目にヒアリング、2~4日目は実地調査、打合せ、資料のまとめ、最終日にまとめた資料を診断先企業相手に経営改善案をプレゼンする、という流れだ。
5日間ですか?合格者は社会人がメイン層だと思いますが、仕事は休まないとですよね?
休む場合もあるが、祝日などを活用し、日を空けて2~3週間程度のスパンで行う。
資料作成や、打合せには少なくとも結構な時間がかかるしな。
それを3サイクル、つまり3つの企業に対して合計15日間実施するわけだ。
毎回、違う指導員、違うチームに配属される。おそらく配属決定はランダムだが、年齢的な偏りが出ないように配慮はあるかもしれない。
なるほど。
実務補習中の実際の活動
実務補習では5人で診断資料をまとめあげていくんですよね?
5人でどうやって分担したり、整合性のある資料を作っていくんですか?
バラバラになりそう。
まず最初の段階で各人の分担分けを決める。リーダー役から始まり、財務会計の診断を担当する人、生産領域の診断を担当する人、ITの診断を担当する人などだな。
実務補習は複数回あるのだが、以前に担当した領域とは別のものを担当することを勧められる。また、3回のうち一度はリーダーを務めた方がいいとも言われる。
なるほど、最初に分担して、あとはチームワークで進めていくと。
そうだ。打合せの会議場などは、借りることが出来る時間に制限がある場合もある。打合せのタイムマネジメントはしっかりしないと、方向性が決まらず資料全体の整合性が取れなくなったり、何も決まらないまま1日が過ぎたりする。
また、各領域の診断内容のレビューや、誤字脱字のチェックや、製本する時間なども考慮しないといけない。もちろん、作業の遅い人のフォローなどにも入る必要がある。
そんな感じで5日間はあっという間に過ぎる。
進捗管理はリーダーの役割なんですよね?
けっこう大変そうです。
年上にも進捗を訊かないといけないので、若いと確かに大変かもしれないない。
しかし、プレゼンが終わった後にチームで飲みに行ったりもするが、これがとても良い。
年齢も仕事も違う者同士だが、平等に新人同士なので、会社の飲み会と違って上下関係がなく、とても新鮮な感覚を味わうことが出来る。一つの仕事が終わったあとの達成感も相まって、非常に楽しく有意義な時間を過ごすことが出来る。
それはすごく楽しそうですね。
会社の飲み会なんて先輩の説教きくだけですから……。
指導員が酒好きだと、夕方は毎回居酒屋の打合せになることもあったがな……。酒弱いと大変だ。まあ、当然ながら無理に飲まされたりはしないから、安心していい。
おお……そんなパターンもあるんですね。
実務補習の修了後
登録者の名前は官報に載るぞ。そうしたら晴れて診断士を名乗ることが出来る。
ペンちゃんが官報に載るなんて、資格登録するか自己破産した時くらいだろう。
そんな載り方しませんから!(泣)
ネットでも直近30日間のものは無料で見れるが、自分の名前が載った官報は買って保存しておくといい。官報販売所で購入できる。
記念になりますね。
ちなみに、三回目の実務補習の時は住民票をちゃんと持っていくことだ。診断士登録に必要だからな。筆者は持って行き忘れて、官報への掲載がちょっぴり遅れた。
うーん、最後の詰めで失敗しましたね。
まあ、そういうこともある。
この記事で中小企業診断士に少しでも興味を持ってくれたら幸いだ。
それでは、今日はここまでにしよう。
ありがとうございました。