知っているだけで上司から一目置かれ同僚と差がつく財務会計の知識を教えていく【職場でドヤれる会計知識】シリーズ。
財務会計的な視点が普段のアウトプット(発言や資料作り)に組み込まれることで、上司やそのまた上の上司、さらには顧客にも「おっ」と思ってもらえる。財務会計はビジネスに必須の知識でありながら、勉強している人は意外と少ないので、ちょっとしたことを知るだけで同僚と大きく差がつくのだ。
会計をキャリアアップのツールとして身に着け、チャンスを広げよう。
今回は損益計算書ですか。財務諸表の一つですけど、よく知りませんね。
損益計算書とはその名の通り、損と益、つまりある期間のうちに企業がどれだけ収益(Revenue)と費用(Expense)を計上したのかを表す。
サラリーマンひとりひとりにとって、損益計算書はとても大事なものなはずだ。
なにせ自分の会社がいくら儲けているのかというのは、自分の生涯年収やキャリアに大いに関係するものだからだ。自分の会社の利益すら知らないとか、社会人としてそれでいいのか?と言いたい。
最近は、突然会社が倒産するような事例も増えているので、数字を読むスキルをしっかり身に着けよう。
たしかに、自社の儲けすらよくわからないって怖いですね……。読み方を教えてください!
では、実際に見てもらった方が早いだろう。たとえばペンちゃんが商店を営んでいるとして、決算をした結果作成された損益計算書がこれだとしよう。
ペンギン商店(株)決算報告
うーん、なんだか複雑で眩暈がします。ぼくには商店経営は無理かも。
全てを一気に見ようとするから無理だと思うんだ。
どんなこともに言えるが、一個一個の言葉の意味をしっかり拾えば、意外と簡単だということがわかるはずだ。
それでは上から見ていこうか。
損益計算書を読む
売上高と売上原価、売上総利益
売上高というのは言うまでもないな。
期間中にその企業が何かを売った総額だ。
売上原価というのはなんでしょうか。
売上原価というのはその期中に売上を達成するためにかかった原価の事を言う。
算出方法を説明しよう。
例えば、ペンギン商店ではある年の初め(期首)に去年仕入れた在庫の持ち越し分が10万円分あったとする。
期首に存在する商品在庫を「期首商品棚卸高」という。
期首商品棚卸高 10万円
次に、ある年の初めから終わりの間(期中)に商品を90万円分仕入れたとしよう。
これを「当期商品仕入高」という。
期首商品棚卸高 10万円 + 当期商品仕入高 90万円
最後に、期末に残った商品の金額が20万円分あったとする。
これを「期末商品棚卸高」という。
前期からの繰越10万円分と、今期仕入の90万円分、合計100万円分の在庫が当期のペンギン商店には存在した。しかし、期末に残ったのは20万円分だけ。つまり、80万円分が売れたことになる。
というわけで、図の通り赤く塗った部分が「売上原価 80万円」として計算されるわけだ。
なるほど。一年の最初に既に存在したものと、一年を通して仕入れたものが合計100万円分あるわけですね。
それで年の最後に在庫を確かめたら20万円分残っていたと。つまり、仕入値で80万円分の商品が売れて出ていったわけです。
だからそれが「売上原価」となるわけですか。
売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高
でも商品の棚卸高ってどうやって金額で表現したらいいんですか?
仕入の都度、単価が変動するような商品もありますよね。
ぐちゃぐちゃになっちゃいそうな……。
仕入が何度も行われて単価が都度変動するようなものに関しては、一定の仮定をおいて計算することとなっている。仕入れの平均単価で計算したり、先入れ先出し法と言って、先に仕入れたものから先に出ていったと仮定して期末商品の有り高を計算するんだ。
なるほど……。帳簿はちゃんとつけとかないと、わからなくなっちゃいますね。
今は商店を例に説明しているが、製造業の場合は少し手続きが増える。
製造業の場合は、ただ仕入れて売るわけではなく、製造という行為を行っている。
期中製造費用(材料費、労務費、経費)と期首仕掛品棚卸高の合計から、期末仕掛品棚卸高を差し引くことで、当期製造原価を求める。更に、期首製品棚卸高と当期製造原価を足した合計から、期末製品棚卸高を引いたものが、売上原価となる。
うーんちょっと複雑……。
まあ、期首+期中から期末を差し引くって意味では、同じような手続きですよね。
製造原価の算出は前に【職場でドヤれる会計知識】製造原価でやりましたよね。製造原価の三要素は材料費、労務費、経費です。
よく覚えていたな、その通りだ。
製造業と商業で違いはあるものの、考え方は似たようなものだ。
このようにして売上と売上原価が算出されると、その差額が「売上総利益」となる。
粗利という呼ばれ方もする。
おおー、なるほど。
そうしたらペンギン商店の損益計算書でいうと、今年は130万の売り上げに対して80万の売上原価でしたから、50万円儲かったんですね。なので、50万円ぼくの懐に入ってくると。
残念ながら、50万円がペンちゃんの懐に入るわけではない。
まだまだ損益計算書には続きがあるぞ。
販売費及び一般管理費(販管費)、営業利益
会社を営んでいるとたくさんの費用がかかる。販売費および一般管理費というもので、例えば以下のようなものだ。
・従業員給料
・旅費、交通費
・接待交際費
・公告宣伝費
・租税公課
・福利厚生費
・減価償却費
おお……費用がいっぱいかかります……。
商店を営むならばワンオペでない限り従業員を雇わねばならないし、従業員への給料や旅費、場合によっては賞与なども発生する。地元紙に公告を乗せるなら広告宣伝費がかかるし、店頭設備などの資産は減価償却費を計上したりする。
あれ?製造原価の記事で教えてもらったことによると、減価償却費って経費に入るって話でしたよね。
つまり、製造原価の中に入っているわけですから、「販管費」ではなく「売上原価」の中に入ってくるのでは?
非常にいい質問だが、製造設備である場合は製造原価の中に入る。しかし、製造設備でない場合は販管費のうちに入ってくるという違いがある。
うむむ……なるほど。たしかに製造設備じゃないなら、同じ減価償却でも製造原価には入らないですね。奥が深いなあ。
そんなわけで、売上総利益から販売費および一般管理費を差し引いたものが営業利益となる。
すなわち営業利益というのは、その会社の本来の営業活動の中で得た利益ということになる。
売上総利益50万円で、販管費が20万ですね。うう……営業利益が30万……。
だいぶ減ってしまいましたが、これで残った30万円がぼくのものになりますよ!
残念、損益計算書はまだまだ続くのだ。
えー。
営業外収益・営業外費用と経常利益
会社というものは、本来の営業活動以外からも収益を得たり、費用を払ったりしている。
例えば分かりやすいのが支払利息だ。会社は銀行から資金を借りて、事業拡大の資金に充てたりなどをするが、借金をした場合は利息を払わねばならない。
借入に伴う利息は、営業外費用として処理するのですね。
逆に、会社が他社に貸しているお金があれば、受取利息も発生する。これは営業外収益となる。
他にも、有価証券の売買や評価損益なども「営業外」の収益や費用として処理される。
なるほど、それらは営業外収益・営業外費用として損益計算書に記載するんですね。
ところで、「割引」というものを知っているだろうか。これも営業外収益、営業外費用にあたる。
え、割引ですか。
スーパーとかで夕方過ぎるとお惣菜が「3割引き!」みたいな?
あれって普通に会社の営業活動だと思うんですけど。
それは単なる「値引」だ。
経理処理としての「割引」というのは意味が異なるので注意しよう。
これは別途記事にするつもりだが、さわりだけ教えよう。
値引と割引……。普通に生活していると、同じ意味で使ってますね。
会計上の「割引」という行為は、商品の値下げをするものとは全く別のことを意味する。
例えば、会社が取引先に商品を売ったとする。売った代金は、月末に銀行振込されるとする。
つまり、売った時点でははまだ現金を受け取っていないが、お金を受け取る権利は発生している。これを「債権」という。
会社間の取引ですから、いちいち現金払いではなく、支払いは銀行振込みで処理しますね。
ここで、取引先が債権の期日到来より早く支払いを行ったとする。
債権というのは相手にとっては借金なので、利息が発生するわけだ。支払期日が先であるほど、その分多くの利息が発生する。商品を売った時の債権(売掛金)には、もともとこの利息が含まれていると考える。
その前提のもと、期日到来前に債権に対する支払いがある場合、この利息分だけ免除をするという処理が行われる。これを「売上割引」という。
あ、なるほど。だから割引というのは、営業外費用になるわけですね。
貸し借りした金額の利息の受取や支払いと、性質が同じになるからです。
そういうことだ。
ふーん。割引って、値下げシールの事だと思ってたけど、会計上は別の意味があるんですねー。
ちなみに仕入割引という言葉もあり、これも営業外収益だ。先ほどの話と立場を逆転させ、自分が支払い側に立った時に、期日より早く支払うことで利息分が免除される。
で、それら営業外収益・費用を営業利益から差し引くと、経常利益になるということですね。
経常利益というのは、本業を含めた会社業務の中で経常的に得た利益を意味する。
事業全体から経常的に得た利益なので、これが一番会社の収益状況を表した数字ということも出来る。
本業に加えて、会社経営する上で普通に発生する利息の受け取りや支払い、有価証券の売買みたいな金融っぽい処理も含めた利益ってことですよね。たしかにそれなら「経常的」と言えます。
というわけで、最初の損益計算書に戻ると、ペンギン商店では営業外費用が5万円出て行っているようだな。
支払利息が多いなあ……。残り25万円……。
特別利益、特別損失、純利益
特別利益、特別損失というのは、臨時的なモノやイレギュラーな事象によって発生する収益・費用が該当する。たとえば固定資産の売却損益、災害による損失などが該当する。
特別損失が15万円計上されていますが……。
どうやらペンギン商店では有価証券売却損が発生したようだ。
株で損した……?なにやってんのペンギン商店。
そうしたら残った10万円が、税引前当期純利益?ですか。
ん?税引前?
そうだ、そこからさらに税金が惹かれる。会社を営んでいるのであれば、法人税というものが純利益に対して課税される。
今回は40%で計算するぞ。
えっ!?そんなに持ってかれるの!?
消費税と同じくらいとでも思ってたか?
本来は「法人税・住民税及び事業税」「法人税等調整額」を記載するが、概要理解に努めるためにいったん省く。
さて、税引後当期純利益が出た。6万円も儲けたな。おめでとう。
ずいぶん減ってしまいました……。
まあ、営業外費用と特損がでかすぎたな。
法人税も結構取られてると思うのですが。
法人税はまあ、純利益に対してかかるものだから、仮に赤字だったら支払わなくても良い。
費用を多く計上すれば、節税効果が発生するわけだ。
うーむ、商店経営も楽じゃないですね。
純利益を繰越利益剰余金へ
さて、ここで純利益が出たわけだが、利益が出たということは、その分だけ会社が成長した、つまり会社の価値が伸びたということになる。
利益が出たら会社は成長しますよね!
毎期の純利益は、「繰越利益剰余金」として貸借対照表の純資産の部に積みあがっていく。これにより、会社が成長していくことが表されるわけだな。
なるほど、貸借対照表の方につながるわけですか。
損益計算書を読んでキャリアアップ
そんなわけで、損益計算書が読めれば会社がどれだけ儲けていて、どれだけ費用として出て行っているのかを知ることが出来る。自社の損益計算書などを覗いてみてはいかがだろうか?せっかく組織に所属し仕事をしているのだから、自分の組織の収益状況は知っておいて損はない。
損益計算書を読めるようになれば、そういった会社全体の事もわかるようになりますね。
さらには、貸借対照表と合わせて分析することで、様々な経営指標を読み解くこともできる。そうなると、会社の健康診断をすることが出来るようにもなるわけだ。経営についてしっかり考えることは、自身のキャリアアップに非常に重要となる。
損益計算書単体で算出できる経営指標や、貸借対照表と合わせて算出する経営指標があるので、そういったものも今後解説していこう。
それでは今回はここまでにしよう。
ありがとうございました。